写真で振り返る、ジェーン・バーキンと愛する3人の娘たち。
Culture 2023.07.18
7月16日に76歳で亡くなったジェーン・バーキンはおおよそ60年間、ミューズであり、アイコンであり、尊敬されるアーティストとして活躍した。彼女のキャリアは3人の娘たち、ケイト、シャルロット、ルー抜きには語れない。
名曲「ラ・ジャナヴァーズ」のシンガーソングライター、セルジュ・ゲンズブールは1991年3月2日に亡くなった。photography: Getty Images
「私は娘依存症なの」と2022年9月、仏「フィガロ」紙に語っていたジェーン・バーキンは2023年7月16日、パリの自宅で76歳の生涯を閉じた。次女シャルロット・ゲンズブールと三女ルー・ドワイヨンを残し、10年前に亡くなった長女、ケイト・バリーのもとへ旅立ったのだ。3回の結婚でそれぞれ産んだ3人の娘たちはいずれも芸術の道を選んだ。ジェーンは多忙な日々を送りながらも自分で娘たちを慈しみ育てた。フランス人に絶大な人気を誇るイギリス出身のミューズはなによりもまず母であり、母であることを決して放棄しなかった。
長女のケイト・バリーはジョン・バリーとの間に1967年に生まれた。ジョン・バリーと言えばジェームズ・ボンドのテーマ曲などの映画音楽で知られる作曲家だ。望まれた子どもだったがジェーン・バーキンは当時まだ17歳。若すぎるお母さんだった。ジョン・バリーとの結婚生活は3年間しか続かず、ケイトを産んでから1年後の1968年に離婚する。同年、ジェーン・バーキンはピエール・グランブラ監督の映画『スローガン』の撮影現場でロシア出身のソングライターと共演し、知りあう。この男、セルジュ・ゲンズブールはケイトを自分の子どものように可愛がった。
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サントロペの夏
ひとめ惚れかどうかはさておき、ジェーンとセルジュは恋人同士となり、デュエット曲でも息の合ったところを見せた。ふたりの関係は情熱とスキャンダルと数々のデュエットに彩られている。シャルロット・ゲンズブールが1971年に生まれ、やがて母親同様に女優活動、そして父親同様の歌手活動を始めることになる。少女の頃からシャルロットは有名監督の作品に出演していた。クロード・ミレール、アニエス・ヴァルダ、ベルトラン・ブリエ、パトリス・シェロー等。歌手としても父とのデュエット曲「レモン・インセスト」で1985年に鮮烈なデビューを飾る。当時、彼女はまだ14歳だった。
ケイト・バリーとシャルロット・ゲンズブールはパリのヴェルヌイユ通りにあるアパルトマンと、サントロペ近くの別荘の間で育った。セルジュとジェーンは別荘を2つもっていた。サントロペから南下したところにあるラマチュエルの丘に建つイタリアのお城風のシャトー・ヴォルテラと、その近隣のガッサンにあるプロヴァンスの伝統的建築様式のマス・ド・シャストゥラだ。ステップファミリーの楽しそうな写真が数多く残されている。ジェーンは同世代でもっとも評価の高い作曲家のセルジュと、1980年に別れるまで12年間の愛を育んだ。
別れたのはジェーンが望んだからだ。ゲンズブールのアルコール依存症に加えて映画監督ジャック・ドワイヨンと出会ったことがきっかけとなった。こうしてジェーンは、当時13歳だったケイトと9歳のシャルロットを連れてジャック・ドワイヨンのもとに移った。ドワイヨン監督はシャルロットに映画主演をオファーするようになる。2年後、ドワイヨン監督との間にルー・ドワイヨンが誕生する。現在40歳のルーは、父親の作品にもいくつか出演しているが、むしろ母親の足跡をたどり、これまでに3枚のアルバムをリリース、いずれも専門家から高い評価を得ている。
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特別な才能を持つ3人
三姉妹はとても仲が良い。活動するジャンルはそれぞれ異なる。シャルロットは女優として活動しながら、2018年にアルバム『レスト』で真の音楽的才能の持ち主であることを示した。ケイトは写真家となった。とりわけファッションとポートレートを専門とし、並行して若者が依存症を克服するための治療施設も設立した。ジェーン・バーキンは2013年、「特別な才能を持つと今では認められている3人の娘がいる」と「ガラ」誌のインタビューで誇らしげに語っている。
しかしながら同じ年、ショッキングな事件が起きる。うつ病を患っていたケイト・バリーが2013年12月11日、パリ16区にある自宅アパートから飛び降り自殺してしまったのだ。享年46歳だった。以来、残された母娘は彼女のことを想いつづけている。シャルロットは事件から4年後にリリースしたアルバム『レスト』で、姉の思い出を歌った。そしてジェーンも2020年、アルバム『Oh Pardon tu dormais』で娘を偲んだ。
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【写真】ジェーンと娘たち
ジェーン・バーキンは娘たちと暮らし、サントロペで毎夏を過ごした。
photography: Getty Images
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ケイトとシャルロットとジェーン。
photography: Getty Images
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ケイト・バリーは作曲家ジョン・バリーとの結婚で生まれたジェーン・バーキンの長女。
photography: Getty Images
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ケイトは生後1年の1968年に両親が別居したため、物心ついた頃からセルジュ・ゲンズブールのもとで育てられた。
photography: Getty Images
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セルジュは自分の娘、シャルロットが生まれた後もケイトを娘のように可愛がった。
photography: Getty Images
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セルジュとジェーンは共演映画『スローガン』の撮影現場で出会った。
photography: Getty Images
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1971年、シャルロット・ゲンズブールが生まれる。
photography: Getty Images
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わずか4歳しか違わないケイトとシャルロットは一緒に育った。
photography: Getty Images
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ふたりの少女はパリのヴェルヌイユ通りにあるアパルトマンとサントロペの別荘を行き来する生活を送った。
photography: Getty Images
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セルジュとジェーンはラマチュエルの高台にあるシャトー・ヴォルテッラを購入した。楽しいプール遊び。
photography: Getty Images
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名曲「ラ・ジャナヴァーズ」のシンガーソングライター、セルジュ・ゲンズブールは1991年3月2日に亡くなった。
photography: Getty Images
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12年間一緒に暮らし、私生活も芸術活動も充実していたが、1980年に別れることになった。別れを切り出したのはジェーンだった。
photography: Getty Images
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1980年、ジェーン・バーキンは三女の父親となる男性と出会う。ルー・ドワイヨンが生まれるのはこの写真の2年後である。
photography: Getty Images
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ルー・ドワイヨンは若い頃、父ジャック・ドワイヨンの映画に出演していた。その後、音楽の道を選ぶ。
photography: Getty Images
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一方、ジェーンとセルジュ・ゲンズブールは別れたのちも娘のシャルロットを一緒に育てた。長女のケイトもセルジュを心の父と慕った。
photography: Getty Images
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1980年、ジェーンとシャルロット。
photography: Getty Images
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ルーとシャルロットが母ジェーンを囲んで。
photography: Getty Images
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2021年、ルー・ドワイヨンは第36回ヴィクトワール・ド・ラミュージックの授賞式で名誉賞を母に渡した。
photography: Getty Images
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ルーとシャルロットは母ジェーン同様、2013年12月にパリ16区のアパルトマンから身投げしたケイトの思い出を大切に生きている。
photography: Getty Images
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異父妹たちとは異なり、ケイトは両親とは違う道を歩んだ。映画や音楽ではなく写真を選び、亡くなる前はファッションやポートレート専門のフォトグラファーとして活躍した。
photography: Getty Images
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text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)