アール・ドゥ・ヴィーヴルを探して。#1 あなただけのアール・ドゥ・ヴィーヴルの見つけ方。

Culture 2024.06.06

フィガロジャポンは、フランスの「アール・ドゥ・ヴィーヴル(Art de Vivre)」という考え方を大切にしています。自分の感性をもとに知恵と工夫を凝らして何気ない日常を楽しくするーー「暮らしの美学」とも訳されるこの考え方は、国を超えて、すべての人の中にあり、その人の生き方を豊かにするものです。

そんなアール・ドゥ・ヴィーヴルについて考える新連載「アール・ドゥ・ヴィーヴルを探す旅。」(全4回)。プロフェッショナルコーチの畑中景子さんと一緒に、人生を豊かにしてくれる、あなただけのアール・ドゥ・ヴィーヴルを探してみませんか?


「美学がある人」とはどんな人?

文/畑中景子

「アール・ドゥ・ヴィーヴル」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか? 家具や食器など細部までこだわり抜くこと? ナチュラルな家での丁寧な暮らし? 洗練されたファッションを身に纏う生活? 自分自身の美学を考える人もいれば、身の回りの素敵な誰かや著名人を思い浮かべる方もいるかもしれません。

目に見えるインテリアやファッション、立ち居振る舞いの奥底には、その人が好きなものや大切にしていることがあります。たとえば、シンプルが好き、生きものが好き、自由でいたい、など。「あの人には美学があるなぁ」と思い浮かぶその人は、きっと、そういうものが好きだということを本人が感覚的に知っていて、かつそれを日々の生活にも人生にも取り入れている人ではないでしょうか。

言葉では表されていないとしても、自分の感性は何が好きかを知っている。そして、その感覚を信じて生きている。それが、その人のアール・ドゥ・ヴィーヴルなのだと思います。

だから、アール・ドゥ・ヴィーヴルは人それぞれ。定型もないし、正解もないし、間違いもない。誰かに決めてもらうものでもありません。自分で見つけていくもの。自分で創っていくもの。

また、誰かに認められるためのものでもありません。それを大事にしていると自分自身がうれしくなって満たされるためのものです。

いま、生活に美学が表れているように見える人も、きっと最初からそうだったわけではありません。少しずつ、試行錯誤しながら、自分に素直になって選び続けて、いまがあるはずです。そして、きっと、完成することもないのだと思います。自分も変わるし、世の中も変わる。喜びを感じるものが変わっていくことは自然なことです。

人生は、自分のアール・ドゥ・ヴィーヴルを発見し創り続ける旅、と言えるのかもしれません。

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すべての人の中に、アール・ドゥ・ヴィーヴルはある。

私は日頃、プロフェショナルコーチとして、コーチングセッションを提供することをとおして、クライアントの方々が日々の生活や仕事で充実を感じながら、ご自身が望む形でよりよく生きることをサポートしています。

それは、クライアントが「自分の大切にしたいと思うものを大切にして生きていく」こと、つまりその人自身のアール・ドゥ・ヴィーヴルを見つけ、体現していくことのお手伝いそのものです。

現在関わらせていただいているのは、年齢は30〜60代、職業や役職は会社員の方から経営者・起業家、フリーランスなどさまざま。コーチングを始める動機も人それぞれですが、自分が好きなものや大切にしたいものを最初からすべて明確に知っている人はほとんどいらっしゃいません。

それは「ない」のではなく、ただ気付いていないだけ、見つけていないだけ、まだ輪郭がくっきりとしていないだけ。または信じることができていないだけ。どんな人の中にも「何か」はあります。それを一緒に見つけてともに生きていくことを応援するのが私の仕事のひとつです。

自分のことくらい自分でわかっているはず、自分で見つけられないものは他人にも見つけられるわけはない、と思われますか? でも実は、人は、自分のことがいちばんわかっていなかったりします。

考えてみれば当然でもあります。現代の私たちは、自分自身のことをじっくり聴くことを、なかなかしてあげられていません。ただでさえ毎日が忙しいのに加えて、どこに行ってもいつもたくさんの情報があふれていて、私たちの目や耳や脳は、あっという間にそれらで埋め尽くされてしまいます。

自分のことを信じてあげることも、なかなか難しい環境になっています。なんとか自分の感性と繋がれたとしても、そこにもまた「それでいいの?」と怖れを煽る情報や、評価や判断が、ありとあらゆる方向から降ってきます。そのたびに、ぐらぐらと揺れたり、不安になるのは、誰にでも起きることです。

「自分がどう感じるか」よりも「何が正しいか」という軸で選択するようになり、それを繰り返しているうちに自分の感性や価値観に自信がなくなったり、さらには自分の感性を放棄してしまって「好き・嫌い」という感覚を忘れてしまう、なんていうことも起こります。

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自分のアール・ドゥ・ヴィーヴルを見つけるための、第一歩。

この連載では、そんなふうになっている方も、自分との繋がりを取り戻していけるようにお手伝いできればと思っています。あなたのアール・ドゥ・ヴィーヴルはあなたの中にある。それを一緒に見つけて、育てていきませんか? みなさんと一緒に、私も自分のアール・ドゥ・ヴィーヴルを見つけていきたいなと思います。

コーチングでは、コーチとクライアントが双方向にやりとりしながら一緒にセッションを創っていくところに醍醐味があります。そのとおりとはいきませんが、この連載でも、アール・ドゥ・ヴィーヴルを見つけるために"お誘い"をするので、ぜひ一緒に取り組んでみていただければと思います。

また、毎回コーチング・セッションの終わりには次回までの"宿題"を提案します。この連載でも、毎回宿題を用意するので、ぜひやってみてください。気付きや発見を現実の生活の中で行動に移していくことで、人生が動き始めます。


では早速。今回の宿題は、「自分を緩める」。


私たちは日々「考える」ことに一生懸命ですが、アール・ドゥ・ヴィーヴルに"Art"とあるように、ここでは「感じる」ことが教えてくれるものに耳を澄ませます。「好き」は、ロジカルに説明ができるものではなく、感覚的なもの。「好き」を感じて気付いていくため、次回までに、少し自分を緩めてみてください。

気になっていたカフェにひとりで行ってのんびりする、いつもよりも長めにバスタブに浸かる、散歩をする、空を眺めてみる、誰かとゆっくりと過ごす。なんでも大丈夫です。ふっと身体の力が抜けた、頭が少し軽くなった、そんな風に感じられる時間を取ってみてください。

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もし、「忙しいのに、怠けている暇はない!」という声がどこかから聞こえてきたら、「いまはアール・ドゥ・ヴィーヴルを見つける旅の途中だから」と、その声に返事をしておきましょう。

ではまた1週間後に!

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畑中景子/ Keiko Hatanaka
プロフェッショナルコーチ、CTIジャパン ファカルティ。プロフェッショナルコーチとして、経営者や起業家を中心にリーダーシップの意識の目覚めと可能性の開花を支援しているほか、世界最大の体験型コーチトレーニング及びリーダーシップ開発機関CTI(The Co-Active Training Institute)にて、ファカルティとしてトレーナーを務める。CTI認定CPCC。国際コーチング連盟認定PCC。INSEAD MBA。ポッドキャスト「独立後のリアル」パーソナリティ。神保町PASSAGE「ここみち書店」店主。
@keikotrottolina

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text: Keiko Hatanaka portrait: Maki Matsuda photography: shutterstock

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