大阪・関西万博に行ってきました。滞在時間4時間で楽しむ見どころをレポート。
Culture 2025.04.23
先日開幕し、10月13日まで行われる「2025年大阪・関西万博」。すでにさまざまな報道がされていますが、実際に行ってみて、訪問前と後では万博に対する思いが変わりました。日帰り、滞在4時間ほどでしたが、ショートステイの人が見るべきポイント含めてレポートします。
まず見るべきは、会場デザインプロデュサーである、建築家の藤本壮介氏による木造の大屋根リング。夢洲の駅から会場に入るとまずはその一部が見えてきて、その大きさに圧倒されます。このリングは1周2キロ、各国のパビリオン57館がリングの内側に設置されています。
建築家の藤本氏にも話を聞きました。
「いまの時代、万博をやる意味あるの?という話もすごく出ていて、僕自身もそこをしっかり考えないと、この時代に万博の会場をデザインするというのは難しいなと感じていました。ちょうどオファーをいただいた時、分断という言葉が叫ばれ、コロナが広がっていった。そんな時だからこそ、リアルなものがとても大事になる。そして多様性の時代だが、バラバラになっていくのは残念だな、とも。万博というのは不思議なことに、この小さな(まあ結構広いんですけれども)地球に比べるとかなり小さなエリアに158カ国、世界の8割ぐらいの国が集まってきて、パビリオンという形で、その国の文化、伝統、食、ファッションを発信している。戦争や世界の危機の時代にあって、それでも多様な文化、伝統、人々がひとつの場所に集まり、つながりを持って、一緒に未来を考えるということの大事さ、素晴らしさをきちんと発信できる会場を作りたかった」と。
また、会場を訪れることができなかった人も、地球の裏側にいる子どもたちも、航空写真などでこの円になった会場の写真をみることで、「あそこに世界が集まっている、そこから未来を一緒に作ろうとしているんだ」というメッセージ・希望を感じてほしいとも。
世界最大の木造建築と話題の大屋根リングだが、木造にこだわった理由としては、「世界的に注目されている木造建築だが、日本は残念ながらまだ遅れている。持続可能な視点からも木材は二酸化炭素を吸収し、建築材料として木材を切った後には植林して森林を再生し、循環が生まれる。さらに日本は、世界一と言ってもいい1000年以上の木造建築の伝統がある。であれば、伝統と最先端の技術、森林資源を組み合わせ、いままでにない木造建築を作ることに意義がある」と。
この大屋根リング、下から見ると、まさに清水寺の舞台の下の構造のような「貫の工法」という技法が使われている。ただ、本来くさびは木製だが、建築基準法を満たさないため、試行錯誤してくさびの部分に金属を使っているそう。
また大屋根リングの上は芝生になっていて、ここでジョギングをしたら気持ちよさそう!なんて思ったがおそらく混雑してそんなことはできないだろうが、空を手にとるような感覚になり、世界中が同じ空の下に集まっている感覚になります。没入感というのもこの万博のポイントのひとつ。
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とにかく会場が広いが、まず注目すべきは、会場の中心にある8つの「シグネチャーパビリオン」。
今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。人だけではなく多様ないのちのために、私たちはどのような未来を描くのか? そのことを慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章、メディアアーティストの落合陽一、アニメーション監督の河森正治ら8人のプロデューサーが異なる感性で提案をしています。
まず見に行ったのは、河瀬直美監督による「Dialogue Theatre-いのちのあかし-」。私が通っていた中学校のような建物がある!懐かしい!と惹かれて思わず入った建物がこのパビリオン。
奈良県と京都にかつてあった廃校を解体し活用したという建物だ。「長く続いてきたものを受け継ぐことに価値を感じられる私たちでありたい」という河瀬直美。このパビリオンでは、初対面のふたりが対峙し対話をし、それを来場者が目撃する。毎日異なるテーマを世界に問いかけ、話者の相手は世界のどこかにいる人。対話を通じて「分断」を超えていく。私は、この建物、そして前にある大きなイチョウの木を見て、自身の中学校で過ごした懐かしい記憶、そして元校舎にそよぐ風を感じながらいま自分がこの万博にいるという意味、そんなことをふと考えたのでした。
この会場のユニフォームである、ミナ ペルホネンの黄色が空間に映えるな〜なんて思いながらも急いで次会場へ。
次に向かったのは落合陽一による「null2(ヌルヌル)」。こちらはすでに多くのメディアも取り上げとても注目されているパビリオンだ。外観は、鏡のような煌めく金属で覆われ、音の振動により外装に映し出される景色が変化する。そのぬるっとしたインパクトについ引き込まれる。中は8メートル四方の鏡に囲まれた空間。
AIで作られた映像や音が来場者の会話や動きに合わせて動き、自身のアバターとの対話もできるという。「ヌル」とはコンピューター用語でゼロの意味。人間とAIの境界線は何か?
人間の思考がゼロになったらAIなのか? 鏡に囲まれた空間でなんとも不思議な感覚になった。
鏡の中から出たあと、なんだかポケモンの世界みたいだな、なんて思う外観につられて入ったのが福岡伸一による「いのち動的平衡館」。「破壊と生成のはざまにいのちというものがあります。私たちのいのちは、漂う流れの中にいる一時的な存在です。生命の本質はこの"動的平衡"にあるのです」と福岡さん。建物の内部では、32万球のLEDの光の粒子が生命のストーリーを描くインスタレーションが。不思議な光を見ていると、私自身、粒子なのか。そもそも身体は存在しているのか?人って?みたいなこれまた今まで使ったことのない脳の一部が動いている感覚になる。
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そして、最後は我らが愛するフランス! フランス館へ。テーマは「愛の讃歌」。
フィガロが大切にする手仕事、職人への愛がここに集結しています!
「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「セリーヌ」、各ブランドが誇る手仕事のほか、ルイ・ヴィトンでは、彫刻家ロダンの「カテドラル」のまわりに84個のトランクが展示されるという重松象平(OMA)による美しい展示からはじまり、トランクのスフィアや壁面に真鍋大度の映像作品が投影されるという伝統と変革がまさに融合したインスタレーションも。
ディオールではパリのオートクチュールの卓越性を存分に感じることができる。パリオリンピックのタイミングで復刻されたトリコロールカラーのアンフォラボトルとともに「バー」スーツが展示されたコーナーや写真家の高木由利子による作品や真っ白なトワルの幻想的な世界に没入できる。
セリーヌは5月11日までの期間限定で、石川県輪島市で活躍するアーティスト集団 彦十蒔絵とのコラボレーションによる漆塗りの「トリオンフ」などの展示、現代美術家の中村壮志が金沢とイタリア・キャンティ地方ラダで撮影した、クラフトマンシップを称えるムービーも!
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会場のいたるところにいるキャラクター「ミャクミャク」。
細胞と水がひとつになったことで生まれた不思議な生き物だそう。最初は「怖い」と思ったミャクミャクもだんだんと愛おしく思えてきました。
大屋根リングという「円」の中に入り、自分が世界の一部であることを体感し、さらに各パビリオンでも、自分という存在を改めて意識し、世界の問題と対峙するきっかけがあちこちに散りばめられている万博。子どもへのおみやげの「サクマドロップス」を手にしながら、未来への想いをあらためて感じた万博滞在でした。

2024年よりフィガロJPの編集長。プライベートでは3歳と5歳の母。子育てに追われすぎてなかなかできていない鼓のお稽古を再開したい。最近の至福のときは新しいクラフトビールの試し飲み。民芸好き。
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