孤独死が怖い。ひとりで生きるお守り代わりの6冊を小林久乃がセレクト。【いま知りたいことを、本の中に見つける vol.7】
Culture 2025.08.26
知りたい、深めたい、共感したい──私たちのそんな欲求にこたえる本を26テーマ別に紹介。各テーマの選者を手がけた賢者の言葉から、世界が変わって見えてくる贅沢な読書体験へ!
vol.7は「孤独死が怖い。ひとりで生きるとは」をテーマに、エッセイスト、編集者・小林久乃が選んだ本6冊を紹介。話題のドラマ「ひとりでしにたい」など、ひとりで生きることに焦点が当たり始めたいま、つい手に取りたくなるラインナップだ。
選者:小林久乃(エッセイスト・編集者)
孤独死が怖い。ひとりで生きるとは。
選書テーマと同じく自身も独身、子なし、賃貸住まいの私も、間欠泉のように噴き上げてくる不安と闘いながら生きている。今回は昭和、平成、令和とそれぞれの元号で自分らしく、孤独と老いを解釈している諸先輩方の著書を選んだ。紙に並んだエスプリの伝わる言葉の数々に、都度救われてきた。ひとりで生きること、死んでいくことは至って普通のこと。もちろん誰かと生きていくことも素晴らしい。誰の人生も否定しない6冊を繰り返して読むたびに、未来は裏切らないと安堵して深呼吸。読者の皆様にとって、お守りになることを願わんばかり。
『しない。』
群ようこ著 集英社文庫 ¥550
人は毎日約35000回の選択をするらしい。なかでも「しない」選択は不安が付きまとうと悩んでいたら、名答がここに記されていた。ハイヒール、必要のない付き合い、結婚、ポイントカード、捨てすぎること、自分だけは大丈夫と思うこと......。半径5m以内にある物や生き方をどう取捨選択して生活するのか?がユーモアたっぷりに書かれている。断捨離本ではなく、心の爽快を領得できる一冊。読後は住まいやスマホを見渡して、何かを捨てたい衝動に駆られるだろう。
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『なまけ者のさとり方』
タデウス・ゴラス著 山川紘矢、山川亜希子訳 地湧社刊 ¥880
著者が生前に残した数多くない作品中、世界的ヒットの本書は自費出版からスタートしている。提案されていることは、大きく分けてふたつ。人は精神的な自由と、悟りを日常生活の中でどう受容するのかについてだ。「エゴをそのまま愛し、それから自分でよしとする行動を自由にすればいい」といった文章に、鬱積した些細なストレスが消化されていく。20代は内容が頭に入ってこなくて眉をしかめ、最近また読み直したら思わず泣きそうになった。
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『102歳、一人暮らし。
哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』
石井哲代、中国新聞社著 文藝春秋刊 ¥1,540
100歳を超えながら、田舎で単身生活を送る老女の語りおろしエッセイと日記。元教職というキャリアのおかげなのか、年齢にそぐわない矍鑠とした振る舞いの哲代さん。前向きな生き様だけではなく子どもを授かれず肩身の狭い思いや、自責の念に駆られたことも赤裸々に語っている。満105歳を迎えた今年は、ドキュメンタリー映画も全国で公開されるほどの人気ぶり。老後を不安視する人がとても多い昨今、彼女は日本人にとって光り輝く道標になった。
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『向田邦子ベスト・エッセイ』
向田和子編 ちくま文庫 ¥990
作家・脚本家の向田邦子を知るのなら、この一冊から始めたい。昭和20年戦後、頑固な父親に家族が振り回されていた幼少期や、学生時代、脚本家となってからの日常生活。子どもの頃の記憶が鮮明に残っていることも驚くけれど、文章にきっちりとオチまでついているのは、伊達じゃない。いまから約50年前、未婚女性がタブー視されていた時代を楽しそうに、軽やかに生きる著者を想像しながら読むだけで、ニヤリと笑みがあふれてしまう。
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『一切なりゆき
樹木希林のことば』
樹木希林著 文春新書 ¥880
2018年に永眠した女優・樹木希林の名言集。生活や仕事のこと、長らく別居をしていた結婚生活について、各所で言及した言葉が拾われている。爽快痛快な言葉の中にも重みがあり、読み終えると自他共栄の言動が脳に響くのか、単純に読む前よりも奮起できる効果あり。売上120万部を記録して、いまも手に取られているのは、シワや白髪を一切隠さず、ありのままの姿で板の上に立つ彼女の飾らない生き方が、日本中からとことん愛されていた証。
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『アウト老のすすめ』
みうらじゅん著 文藝春秋刊 ¥1,540
62歳、前期高齢者になったみうらじゅんによる、日常の出来事が軽妙に綴られている。難聴、もの忘れ、スマホ苦戦といった誰にでも訪れる衰えを、文章で笑いに昇華。年を重ねてくると増えがちな「ねたみ、そねみ、うらみ」を三姉妹と称しているのは、声を出して笑ってしまった。彼らしい、昭和を彷彿させる下ネタも忘れてはいない。老後よりも老化が、私たちには喫緊の問題。ここにはポジティブになれる晩年のヒントが隠れている。
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静岡県出身。出版社勤務を経て独立。ラジオ出演のほか、『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)、『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)などを上梓。
https://x.com/hisano_k
*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋
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