【フィガロジャポン35周年企画】 シャネルのメティエダールの世界へ!『la Galerie du 19M Tokyo』特別イベントをレポート。
Culture 2025.10.31
2025年3月、創刊35周年を迎えたフィガロジャポンでは、「アールドゥヴィーヴルへの招待」をテーマに読者の皆様にさまざまな体験の場を提供しています。10月3日にはシャネルのメティエダールの世界を体感する展覧会『la Galerie du 19M Tokyo』にて、読者招待イベントを開催。その特別な一夜をレポート!

シャネルによって2021年、パリに設立されたle19Mは、刺繍や羽根、装飾具、金細工、プリーツ、靴、帽子などを手がける11のメゾンダールと約700人の職人や専門家が集結するユニークな複合施設。今回のエキシビション『la Galerie du 19M Tokyo』は、そのle19Mの手仕事を展示するにとどまらず、日本の職人や作家たちとの創造的なコラボレーションを実現。フランスと日本のクラフトマンシップが対話するさまを、作品や空間から感じ取ることができる。
この日のイベントに参加したのはフィガロが招待した100名の読者たち。展示会場に一歩足を踏み入れると、天井から吊るされた素材や布地、テーブルに広げられた道具やサンプルに囲まれ、メゾンダールのアトリエに迷い込んだよう。窓の向こうに広がる東京の夜景と溶け合って、非日常感へと誘われる。
続いての展示エリアでは、日本の伝統文化や技術をいまに伝える職人たちと、11のメゾンダールがコラボレーション。土風炉・焼物師の永樂善五郎とアトリエ モンテックスが協奏した茶陶への刺繍、京唐紙の老舗、かみ添とコサージュや花細工を手がけるルマリエによる衝立、ルサージュのツイードが畳縁に施された高室畳工業所の数寄屋畳......イマジネーションを超えた日仏の職人技の調和に、参加者たちも引き込まれていく。


次のエリアに足を進めると、植物や動物など自然をモチーフとした作品に出迎えられる。現代アーティストとメゾンダールの手仕事が呼応する空間だ。壁にはパロマのテキスタイルを用いた五十嵐大介による四季の風景が掲げられ、ハルミ・クロソフスカ・ド・ローラ×ゴッサンスのブロンズの鹿が佇み、神話の世界のような静謐さが漂う。
森のような空間を抜けた先で、編集部からのグリーティングタイム。読者の皆さまにシャンパンとフィンガーフードを楽しんでいただきながら、フィガロジャポン デジタル編集長の五十嵐あきがご挨拶。創刊から35年間、変わらず発信し続けてきたフィガロ的アールドゥヴィーヴルのあり方や、サヴォワールフェールを守り、継承し、進化させているシャネルへの敬意、そして互いの哲学の共鳴について、あらためてメッセージを贈った。


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その後、参加者は刺繍とツイードのメゾンであるルサージュの100周年を記念した、もうひとつの展覧会『Lesage 刺繍とテキスタイル、100年の物語』へ。パリのオートクチュールの歴史を彩る大物デザイナーたちの刺繍を請け負っていたミショネ刺繍工房を引き継ぎ、1924年にアルベールとマリー=ルイーズ・ルサージュ夫妻が設立したルサージュ。1983年からはシャネルとの大規模なコラボレーションを開始し、2002年にメゾンのメティエダールに加わった。今回は、サンプル総数75000点に及ぶ世界最大の刺繍芸術コレクションを保有するルサージュによる初の国際的な展覧会だ。

会場ではルサージュが歩んできた歴史を振り返りながら、職人たちのアトリエを再現したコーナーや、デザイナーたちとの印象的な仕事やコレクションピース、ヴェルサイユ宮殿やパリ・オペラ座とのコラボレーションワークも紹介。高度な技術が凝縮された作品を間近で眺めていると、時を忘れてしまうほどだ。


フィナーレは、アーティストのアリスティッドによる幻想的なインスタレーション。シアーなテキスタイルに刺繍でムクドリの群れを表現した作品は、プロジェクターからの投影と、そこを通り抜ける来場者の動きや影によって、空間に一期一会の光景を描き出す。そして作品の先には、ルサージュの職人たちによる刺繍の実演を見学できるコーナーも。



シャネルとそのメゾンダールがフランスで継承してきた技術を鑑賞するだけでなく、背景にある文化や思想を通じて日本との繋がりを体感し、私たちの視野を広げてくれた『la Galerie du 19M Tokyo』。参加者からも「没入感のある展示や世界観に圧倒された」「フランスと和の魅力が詰まった空間で、見ごたえたっぷりだった」「シャネルのものづくりに対する情熱をあらためて感じた」と、さまざまな感想が寄せられた。この一夜はきっと、それぞれのアールドゥヴィーヴルを耕し、育てていく糧となったことだろう。
photography:Mari Hamada
 







