ジェーンが切望した日本語訳、ついに刊行。『ジェーン・バーキン日記』はじめ、編集部おすすめ書籍5選。
Culture 2025.11.25
永遠のミューズでファッションアイコンの、ジェーン・バーキン。彼女が約60年にわたり綴った日記を再構成し、『ジェーン・バーキン日記 Munkey D iaries/Post-scriptum』待望の日本語訳が12月に刊行。この作品をはじめ、編集部おすすめの5冊をご紹介。
01.『ジェーン・バーキン日記 Munkey D iaries/Post-scriptum』
(特装函封入特典:クオバディス×ジェーン・バーキン「オリジナルノートブック」、
封筒入り「オリジナルポストカード」10枚)
世界的スターが赤裸々に書き綴った、900ページに及ぶ日記がついに刊行。
文:村上香住子 作家・ジャーナリスト
ひととして、女優として、女として、母として、歌手として、あらゆる面で独自性に富んだ人生を、挫折や病と闘いながら、それでも諦めず優雅に生き抜いたジェーン・バーキンは、いまもなお世界の多くの女性たちの心の支えになっている。
孤独な少女時代を過ごしていた頃、友だちのいない彼女の話し相手は、ぬいぐるみのマンキーだった。こうしてそのマンキーへの打ち明け話を書き始めた日記が、まさか11歳から66歳まで続くとは、本人も思っていなかったかもしれない。
父は軍人で、母は有名な舞台女優というロンドンの上流家庭に育ったジェーンは、寄宿舎の中では、特異な存在として一時はいじめを受け、最初の結婚では、世界的な映画音楽作曲家の夫ジョン・バリーに、まだ1歳に満たない赤子を抱いて、家を追い出されたり、そうした耐え難い出来事を赤裸々に書いた膨大な日記『ジェーン・バーキン日記』が翻訳され、河出書房新社から限定生産で出版されるという。
若い頃から脚光を浴びてきた世界的に知名度の高いスターが、日々の出来事や、私生活での愛の揺らぎや葛藤などを、これほどあからさまに書き綴った日記が、いままで存在しただろうか。映画の共演で知り合った、天才的だが破天荒なパリのミュージシャン、セルジュ・ゲンズブールと恋をするが、ふたりの間にシャルロットが生まれてもアルコールを止めないセルジュに手を焼き、新進気鋭のインテリ監督ジャック・ドワイヨンを熱愛するように。「どうしてセルジュとジャックと三人で暮らしてはいけないの?」と彼女は日記で呟く。
途方もなく貴重な資料とも言えるこの日記は、2013年12月11日、長女ケイトの死という思いがけない人生の試練のその日を境に56年間のページを閉じる。
日本を愛したジェーンは、この日本語訳の出版を誰よりも切望していたが、存命中にその願いは叶わなかった。行間のジェーンの息遣いを感じながら大切に読んでほしい。
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作家・ジャーナリスト
フランス文学の翻訳を手がけた後、1985年に渡仏。94年からフィガロジャポン パリ支局長を務め、2005年に帰国。ジェーン・バーキンと家族との親交は40 年以上にわたり、著書に『ジェーン・バーキンと娘たち』(白水社刊)がある。
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02.『デモクラシーのいろは』

森 絵都著 KADOKAWA刊 ¥2,310
民主主義とは何か? 自分の物語を生きること。
戦後間もない日本。GHQが日本にデモクラシーを根づかせる実験として4人の女性を選抜。日系2世のリュウ・サクラギを教師に「デモクラシーのレッスン」を始める。民主主義とは何か。子爵夫人の家で共同生活を送りながら、生まれ育ちも個性も違う彼女たちが過去を乗り越え、自分の物語を生きようとする姿の中にこそその答えがあった。堅苦しい法律や制度の話ではなく、青春小説に仕立てた著者の見事な語り口に惹き込まれる。
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03.『オートコレクト』

エトガル・ケレット著 広岡杏子訳 河出書房新社刊 ¥2,970
読んだらきっとクセになる、愛とユーモアにあふれた短編集。
ほんの数ページなのに、読む前と後では世界が少しだけ違って見える。イスラエル生まれの作家、エトガル・ケレットの短編小説にはそんなマジカルな魅力がある。パラレルワールドから別れた恋人がやってきたり、毎週水曜日に宇宙人がやってきたり、シュールな設定でさらりと真実を浮かび上がらせる。33の短編は、非人間的な時代に人間的であることについてのユーモラスで愛に満ちた回答であり、温かな読後感を約束してくれる。
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04.『踊り場に立ち尽くす君と日比谷で陽に焼かれる君』

金原ひとみ著 朝日新聞出版刊 ¥1,980
読むカンフル剤のような言葉で、作家生活20年の軌跡を辿る。
デビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。性加害の告発を巡る問題を圧倒的筆力で描いた『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』まで金原ひとみは常に最前線で闘ってきた作家だ。その強度のある言葉で同時代を生きる私たちの生きづらさや絶望に寄り添い、風穴を開けてきた。話題を呼んだ「『母』というペルソナ」をはじめ、フィガロジャポンへの書き下ろしも含む20年にわたるエッセイを完全収録。
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05.『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』

ウィル・エルスワース=ジョーンズ著 毛利嘉孝訳・監修 青幻舎刊 ¥2,970
ロンドンの新作もすでに撤去、バンクシーの消えた50点を追う。
社会や戦争に対し、痛烈な風刺を込めた作品で抵抗してきた正体不明のアーティスト、バンクシー。世界中の街角の壁に描かれてきたそのほとんどは、驚くべきことにすでに失われてしまったという。ある作品は徹底的に清掃され、ある作品は商売目的で撤去され、ある作品は上書きされてもう観ることが叶わない。重要作品50点の消えた謎を徹底取材。豊富な写真と証言で迫ったルポルタージュ。
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*「フィガロジャポン」2026年1月号より抜粋
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text: Harumi Taki






