「90日間で最高の自分になる」TikTokのトレンドに踊らされないために。

Lifestyle 2024.10.31

「3ヶ月で最高の自分になる」......これは最近のTikTokを賑わせているトレンドだ。一見、ポジティブで健全な決意表明のように聞こえるが、実際には隠れた側面があるようだ。

20241030-90days-happiness.jpg
TikTokで「Winter Arc(ウィンターアーク)」を検索すると、3ヶ月で最高の自分になることを目指す女性たちで溢れかえっている。photography: mixetto / Getty Images

10月に入り、葉が色づき、秋の雨が降り始めると、多くの人が転換点を迎える。暖炉(本物の暖炉でもNetflixの「暖炉」でも)、ホットチョコレート、ビンジウォッチング(連続テレビドラマなど複数のエピソードをまとめて視聴すること)、ジョギング......といったことを楽しむのに最適な時期だ。だが一部のTikTokユーザーによると、これらは忌避すべきだという。彼らは、ふわふわのスリッパをスニーカーに履き替え、甘い飲み物をデトックスドリンクに替えるべきだと主張している。これは、アメリカのフィットネス界発祥の「Winter Arc(ウィンターアーク)」と呼ばれる考え方に起因するのだが、このトレンドは、10月から肉体的にも精神的にもタフな試みを課し、3か月後の2025年1月までに最高の自分になろうと呼びかけるものだ。前もって決意を固めることで、冬の憂鬱と戦うことにもなるという。TikTokではこのムーブメントが最高潮に達しており、「ウィンターアーク」を90日間で成功させる方法について35万件以上の投稿が寄せられている。

---fadeinpager---

精神的かつスピリチュアルで肉体的な挑戦を課す

このトレンドの発端となったのは、フロリダ在住の自己啓発コーチであるカーリー・バージェス(27歳)だ。930日に投稿された動画で、彼女は「私の『ウィンターアーク』のイメージは、オーバーサイズの黒いパーカーを着て、ヘッドフォンをつけて、朝の5時に雨の中ランニングに出かける準備をしている人です」と語りかけているが、これが450万回以上も視聴されている。

@carlyupgraded WINTER (ARC) IS COMING you tapping in?? #winterarc #mindset #reinventyourself #realityshifting original sound - CARLY

そして彼女は、夜明けに起きる、スポーツトレーニングの強度を上げる、食生活を見直す、本を4冊読む、携帯電話の使用時間を減らす......といった、今後数ヶ月間で成し遂げたい抱負をリストアップ。その上で、「精神面、スピリチュアルな面、そして肉体面で改善したいことを考えてください。今年、取り入れたい習慣や、先延ばしにしていたけれど今年達成したい目標について考えてください」と、フォロワーに追随するよう訴えかけている。

---fadeinpager---

他人の過剰な目標設定に、惑わされない

そういった呼びかけに対し、自分の肉体および精神面のレベルアップを図ることは健全な反応であり、「10月理論」など、ほかのTikTokトレンドも人気だが、"最善は善の敵"と言う言葉があるように、最高を目指すと時として何も生み出さないこともあるので、過剰な目標設定は控えるよう呼びかける人も多い。このテーマに関する動画を探すと、「ウィンターアーク」のより過激なバージョンを見つけることができるだろう。「@phoebeisinger1」のアカウントを持つアメリカ人インフルエンサーの場合は、パートナーと別れる、13リットルの水を飲む、週6回のスポーツセッションを行う、さらに目標から気が散らないように人付き合いを断つ......といった、容赦のない決意表明をしている。

@phoebeisginger1 i will be partaking #winter #winterarc #meme #thisisserious #2024 #winterarc2024 original sound - Phoebe

行き過ぎたルールをそのまま鵜呑みにするのは得策ではない。「ポップ・シュガー」誌のコラムで、栄養士のジョエル・トトロ氏は「お気に入りのインフルエンサーに効果があることが、あなたにも効果があるとは限りません。特に栄養や体内に取り入れるものに関しては」と述べ、SNSから影響を受けるあまり、自分を見失ってしまう罠に陥らないよう警鐘を鳴らしている。

---fadeinpager---

男性向けの「ウィンターアーク」は別物!

もうひとつ注意したいのは、悪意のある人たちがこのトレンドを悪用していることだ。ジャーナリストのマノン・マリアーニ氏がフランス・インテルの番組「ズーム・ズーム・ゼン」で伝えているように、社会問題にもなっている一部の反フェミニストの男性主義者たちの間では、全く異なる考えが打ち出されている。「彼らにとって、『ウィンターアーク』は単なる健康トレンドではなく、男らしさを探求するための信念なのです」と彼女は説明する。彼らの「ウィンターアーク」は、頭を剃るという行動から始まる。一般的に、禿げていることは弱さを表し、女性にとっては嘲笑の対象ともなるので、あえて頭を剃るという行為は、一部の男たちにとっては男らしさの証なのだ。

「ウィンターアーク」を実践する男性主義者たちがSNS上で語ったルールには、パーカーを被ったままミステリアスに過ごす、ガールフレンドには静かにしていてもらう、ジム以外にひとりで外出することを避ける......といったことが挙げられているが、女性版とは全くかけ離れている。「そのような男たちはあちこちに隠れているので、常に警戒してください」と彼女は注意を呼び掛けている。

【合わせて読みたい】
10月が「人生に変化を起こす」のに最適の時期であるわけ。
「ミスコンは性差別的な価値観を広める」フランスの男女平等大臣が提言。
500万人以上のフォロワーを持つ危険な"男性主義者"、アンドリュー・テイトとは何者?
フランス男性の37%がフェミニズムに「脅威を感じる」と回答。割合上昇の理由は若い世代?

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr) translation: Eri Arimoto

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

いいモノ語り
言葉の宝石箱
パリシティガイド
Business with Attitude
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories