見て楽しい、食べておいしいクッキー缶。小さな箱にぎっしり詰まったクッキー缶は、おすすめの手土産です。もちろん、自分で味わうたのしみも。文筆家・甲斐みのりさんが教えてくれたクッキー缶をご紹介します。
♦店名:ポアール・デ・ロワ GINZA
♦製品名:CAN-délicieux(カン・デリシュ)¥4,320
1969年に大阪の帝塚山で誕生した「ポアール」。創業50年以上の老舗洋菓子店の別ブランドとして2018年に誕生したのが、ラグジュアリーフルーツソルベ専門店「ポアール・デ・ロワ GINZA」。厳選したフルーツをまるごと贅沢に使ったソルベは、まるで芸術作品のよう。甘く芳しい果実の風味の余韻がいつまでも舌に残るアイスクリームだ。
そんなポアール・デ・ロワ GINZAの、果実をテーマにした愛らしいクッキー缶が「カン・デリシュ」。商品名は、クッキー缶の"CAN"と、フランス語で美味や甘美を意味する"délicieux"を合わせた造語。日本国内の農家から選び抜かれた特別な果実を扱う洋菓子店らしく、"ひとくちでうっとりするような焼き菓子を"という想いから誕生した。
カン・デリシュのテーマは、「クッキーなのにフルーティ」。1つのクッキーに、みずみずしい果実の香りや味わいをぎゅっと凝縮した、2種類のドライフルーツを使用。1缶に6種類のクッキーが詰め込まれているので、全部で12種類のフルーツを楽しめる。
そうして、カン・デリシュを通してあらためて認識したのが、果実にも花言葉があるということ。
<種類>
・オレンジ&日向夏「純粋・憧れ」
柑橘のほろ苦さをキャラメルが優しく包む。純粋な気持ちは憧れへ。
・巨峰&チェリー「陶酔・幼い心」
上品な甘さに酔いしれて。 幼い心はほんの少し大人を夢見る。
・キウイ&マスカット「豊富・信頼」
爽やかさの中にあるアーモンドの香ばしさ。今を言じて、明日を豊かに。
・イチジク&プルーン「幸福・約束」
口に広がるペドロヒメネスの香りを独り占め。幸せな約束を思い出す。
・いちご&フランボワーズ「喜び・愛情」
異なる甘酸っぱさを同時に感じ笑顔が溢れる。真っ赤な愛情は喜びの種。
・クランベリー&ブルーベリー「慰め・思いやり」
酸味と甘みがほどけだす。思いやりは小さな心を癒してく。
クッキーごとの花言葉を書いたリーフレットを読みながら、願いごとを唱えるように大切に口に運び、しっかりと噛みしめる。詩的な言葉と、果実そのままの華やかな風味にうっとり。中でも、タルト状のクッキー生地とドライフルーツの組み合わせは新食感。ホットでもアイスでも紅茶と好相性だ。
それから、缶のデザインにも注目を。水彩画風のイラストがちりばめられているのだけれど、レモンだけはソルベに仕上がった状態で描かれているのも、フルーツソルベ専門店らしさ。
また、親ブランドの大阪「ポアール」が、フランス語で西洋梨を意味することから、ポアール・デ・ロワ GINZAの紙袋には、1つだけ西洋梨の絵が隠れている。袋の内側に印された「Loveス」という文字は、「アイス」と「愛す」をかけており、ウィットに富んだデザインも魅力。
大阪府大阪市阿倍野区帝塚山1-6-16
06-6623-1101
営)売店 9:00~20:00、喫茶 9:00~20:00(L.O.19:30)
無休(元旦のみ休み)
取り寄せ 可
https://e-shop.poire.co.jp/
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♦店名:くら吉
♦製品名:KURAKICHI あきたフルーツクッキー缶 ¥5,400
武家屋敷に黒塀や枝垂れ桜と風情あるまちなみが広がり、「みちのくの小京都」と呼ばれる秋田の角館。そこで「こだわりの地域素材を活かした創作菓子」をテーマに、職人の手作り菓子にこだわる「くら吉」。角館の本店から飛び出して、東京や関西の百貨店にも出店し、豊かな秋田の食の魅力を伝えている。
赤ちゃんの握り拳ほどの大きさで知られる西明寺栗のなかでも、栽培方法にこだわる赤倉栗園の善兵衛栗。香りが高く上品な酸味と甘みが特徴的な食用のほおずき。日本一の生産量を誇る秋田産のラズベリーの中でもくら吉のために生産されるあきたフランボワーズミニョンヌ。
地元の食材を使ったモダンな和洋のスイーツは、食べておいしく見て美しい。秋田に根づく寒天文化や、秋田の伝統菓子「もろこし」をアレンジしたり。地元の風土・歴史・文化を大事にしながら、新たな可能性をお菓子で表現している。
地元・角館の食材と、強い地元愛が詰まったクッキー缶。私は、犬好きの友人にプレゼントできるお菓子はないかと探す中で出合った。
秋田犬や栗のデザインがほどこされたフタを開けると、まず目に飛び込むのが、やっぱり秋田犬の形のクッキー。周りを囲むクッキーも、もちろん秋田の名産三昧。ほおずき、フランボワーズ、シャインマスカット。これらが秋田で採れることを、恥ずかしながら初めて知った。
「ショコラクッキー」にはセミドライにした奄美大島産の「たんかん」が練り込まれていたり、同じく奄美大島産の黒糖を使っていたり。秋田以外の食材も厳選している。
1缶通して、フルーツの酸味とスイーツとしての甘みのバランスが絶妙。ちなみに、「もろこしのスノーボール」の"もろこし"は、小豆の粉を使った口溶けのよい干菓子で、300年以上の歴史ある秋田銘菓だ。ほろほろと口の中でほどける食感が心地いい。
クッキーをつまみながら、気持ちはすっかり角館へ。春は町の中心部を流れる桧木内川沿いに、全長2キロの桜のトンネルができるそう。くら吉のお菓子を頬張りながら花見をする。いつか叶えたい夢ができた。
<種類>
・秋田犬クッキー
・フランボワーズクッキー
・フランボワーズジャムクッキー
・ほおずきジャムクッキー
・ショコラクッキー
・星形クッキー(ほおずき)
・星形クッキー(フランボワーズ)
・もろこしのスノーボール
・黒糖クッキー
・たんかんクッキー
・シャインマスカットのガレット
・ほおずきのマーブルクッキー
photography: Yuko Sayama

文筆家。旅、散歩、お菓子やパンや手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどについて執筆。地方自治体の観光案内冊子も手がける。著書は『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』『にっぽん全国おみやげおやつ』『愛しの純喫茶』など50冊以上。
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