【パリのインテリア】ママンになったパリジェンヌ、子ども部屋はどう手がける?
Interiors 2025.07.19
自分の感性をもとに、知恵と工夫を凝らして日常を楽しく過ごす、フランス流の暮らしの美学「アールドゥヴィーヴル」(Art de Vivre)は、パリジェンヌの住まいのあちこちに息づいている。ママンになった彼女たちのインテリアへのこだわりは、子ども部屋にも遺憾なく発揮される。想像性を育むように、より自由で遊び心ある内装が施された子ども部屋は、クリエイティブなムードを漂わせるが、そうして親から子へと感性が受け継がれていく。
色を巧みに取り込んだ、物語性のある空間づくり。
ソレーヌ・エロワ(装飾アーティスト)
天井や窓枠は白く塗って明るい印象にする、そのバランス感覚も絶妙。レトロなオーディオの趣味はかえって現代っ子ぽい。photography: Gaëlle Le Boulicaut (Madame Figaro)
「色彩」をテーマに、インテリアをコーディネートするソレーヌ。住居の共有スペースには主にグリーンやイエローを多く取り入れ、色や質感を考慮しながら、デザイン家具を絶妙なバランスで配置するが、娘のフロールの部屋はピンクでまとめることにした。フロール自らセレクトした、グッチの鶴が描かれた壁紙を一面に貼り、残りの壁と戸棚の扉は同じ色合いの濃いピンクにペイント。照明やチェアも同系色のものを選んで、絵本の中のような世界観を作り上げている。
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白い空間にパステルカラーの家具を配した、パリのデコスタイル。
ゾエ・ドゥ・ラス・カーズ(インテリアデコレーター)
ニュアンスカラーの家具が置かれる中、イエローの踏み台がアクセントに。壁の黒板にチョークで描かれた絵も、部屋の装飾に。photography: Shiro Muramatsu
ノルマンディの豊かな自然にインスピレーションを得たインテリアを持ち味とするゾエ。リラックスできる開放的な部屋作りは、パリの自宅にある子どもたちの部屋にも活かされている。白を基調にした明るい光が差し込む空間に、幼い娘と息子のために机と椅子をやさしい色調に塗り分けて並ばせた。パーティションの奥には、バッグをかけるフックや子ども用の丸いバスタブ、手洗い場を設置するが、アートフォトを飾りつけて、感性を刺激する工夫も。
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動物モチーフで埋め尽くして、部屋をにぎやかに!
レイナ・タキグチ(「クチュールメゾン」のプレス勤務)
天井から複数の地球儀がぶら下がり、小さなペナントが貼り巡らされてサーカス小屋のよう。ベッドは、子どもの隣に座ってなだめたりする時にちょうど良い、大人サイズを使用。photography: Mariko Omura
古い物が大好きで、ブロカントや蚤の市で掘り出し物を探すのが趣味のレイナ。幼いふたりの子どもたちの部屋については、妊娠中から構想を練り始め、脈絡なしにあれこれ買い求めたという。「60年代の品とかアンティークとか、真っ白なマルジェラのマトリョーシカとか......子どもには楽しくもないわね。すぐに理想は現実に取って代わられ、カラフルで頑丈な品が増えているわ」。そうした試行錯誤の末に、動物のモチーフが幅を利かせるように。壁には動物の絵を飾り、棚にもぬいぐるみやオブジェなどであふれている。
母になる日を待ちながら集めた、動物のオブジェや小物類。photography: Mariko Omura
子ども部屋の壁に飾る、動物の額はシリーズで揃えている。 photography: Mariko Omura
レイナの友人で、1区にブティックを持つAlexia Hollingerが作ってくれた、子どもの名前入りのキルトを宝物にしている。
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壁にアートをたくさん飾り、小さな子どもミュージアムに。
ジャンヌ・ドゥロー(ビューティージャーナリスト)
装飾を施すなら、壁の色味はシンプルがベスト。淡いブルーの自分の部屋を、オルソ自身とても気に入っているという。photography: Mariko Omura
子どもができたことで、より広いスペースを求めて3区から10区へと引越ししたジャンヌ。住居の共有スペースは、グラフィック&カラフルな壁紙を用いて個性的な空間を作り上げているが、長男オルソの部屋は普遍的な心地よさを追求することに。だだっ広いスペースを、寝室、プレイルーム、ゲストルームの3つに区切ったが、寝室スペースは壁を淡いブルーに塗って、装飾しやすいようにした。ゲストルームは間もなく生まれてくる次男のために内装をやり直すつもりだが、壁を淡いグリーンに塗ろうと考えているとか。
寝室部分の壁には、家族の写真やオルソ自身が描いた抽象画(右下)を飾る。photography: Mariko Omura
汽車遊びをする時は、こちらのプレイルームに移動する。壁には夫のパトリツィオがコレクションするアート作品がオルソのために飾られている。中には奈良美智の作品も。photography: Mariko Omura
プレイルームの一角に置かれた床置きのソファには、寒色系のリバティのプリントクッションを置いて。photography: Mariko Omura
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娘の好みを反映して、白い壁の一面だけをカラーリング。
マリー=アンヌ・ブルースキ(ジャーナリスト、シティガイド「re-voir Paris」創設者)
深いブルーを基調にした次女の部屋は、ピンクの雑貨が差し色になっている。photography: Mariko Omura
ふたり目の子どもの誕生に合わせて、3区から5区のこちらのアパルトマンに引っ越してきたマリー・アンヌ一家。「5区というのは子どもを育てる環境として、3区よりいいのね。良い学校があり、リュクサンブール公園も植物園にも近いし、市場もある。静かだし、子どものいる家族がたくさん住んでいるので、なんとなく村のような雰囲気があって......」。そうして新居では娘たちに個室を持たせたが、それぞれが好みの色を壁の一面に取り入れている。インテリアは娘たちにまかせているが、魅力あふれた空間を作るセンスはママンゆずりだ。
収納とベッドがひとつになった家具は特注品。狭いスペースを有効活用できる優れものだ。photography: Mariko Omura
長女の部屋はイエローがキーカラー。提灯型の照明が、空間のアクセントに。photography: Mariko Omura
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デザインホテルのように壁をペイントして、プレイフルな空間に。
ジュリー・ルヴューズ(「Dallas」PRオーナー)
長女の部屋。元々、ピンクが好みだったけれど、大きくなったことでブルーグレーに模様替え。枕カバーにはマスタード色を取り入れてシックに。photography: Mariko Omura
ホテルやインテリアなど、さまざまなデザイン関連のPRを手がけるジュリー。室内建築家のクロエ・ネーグルの手を借りながら自宅を改装したが、デザインホテルさながらのスタイリッシュな内装は、子ども部屋でも健在だ。長女の部屋はブルーグレー、次女の部屋はブルーのウォールペインティングを施したが、ちょっぴりグラフィカルな要素を取り入れることで、動的なリズムが加わっている。
次女の部屋の壁にサークルをペイントしたのは、クロエのアイデア。しかし丸を上手く描くのは、想像以上に難しい作業だったとか。photography: Mariko Omura
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ロマンティックモチーフで埋め尽くして、とことんガーリーに。
オンディーヌ・サグリオ(「CSAO」のアーティスティックディレクター)
娘の部屋には、友人が泊まれるように2段ベッドを設置。上下段それぞれに、リバティプリントの生地で作られたサオのクッションを並べて。photography: Mariko Omura
ブティックCSAO(サオ)の人気アイテムであるクッションは、布のモチーフとメッセージ刺繍の組み合わせをオンディーヌが考えているだけに、愛着もひとしお。「自分がしていることが好きなのだから、家にあるのは当たり前でしょう」と、自宅のあらゆるスペースに、サオのクッションをたくさん飾る。そして愛娘リザの部屋には、ロマンティックなリバティプリントを使ったサオのクッションが大集合! パウダーピンクにまとめられた部屋は、女の子の夢がつまった空間そのものだ。
勉強机の上のチェリーのランプは、照明アーティストのゾエ・リュモーによるもの。植物や鳥がモチーフの額といい、愛らしいもので壁を埋めつくしている。photography: Mariko Omura
リザのベッドの上には、ボンポワンとのコラボレーションによる特注クッションも。photography: Mariko Omura
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グラフィカルな2色使いを、壁に取り入れる。
エルザ・プー(「Mapoésie」創立者&クリエイター)
長女の部屋は、淡いブルーグレーをベースに、ピンクがアクセント。既存の色を使わず、エルザ自身がミックスして理想の色を作っている。photography: Mariko Omura
水彩画のような色彩を持ち味とした自身のブランドMapoésie(マポエジー)が好評のエルザ。家族と暮らす11区のアパルトマンでは、壁の色やカーテンの模様替えに余念がない。長女の部屋はブルーグレーとピンクのグラフィカルな2色使い。収納と装飾のための木の家具は、狭い空間を有効活用できるようにエルザ自身がデザインしたものだ。一方で長男の部屋は、カーキとクリームの落ち着いた色調に、マポエジーのテキスタイルが温かみを添えるが、リラックスした穏やかなムードが心地いい。
壁には鳥の巣箱のような小物入れを設置。グラフィカルなカーペットは、マポエジーと老舗Pantinのコラボで制作したもの。photography: Mariko Omura
長男の部屋。壁にカーキでペイントした三角形が、空間にリズムを生み出している。photography: Mariko Omura
長男の部屋には、マポエジーの中でも大胆なグラフィックモチーフのアイテムを置くようにしている。photography: Mariko Omura
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やさしいパステルカラーに囲まれた、ふたつの子ども部屋。
ティフェーヌ・マンガン(「Les Causeuses」クリエイター)
長女の部屋は、本人の希望により、ほかの空間に比べると色も飾りも控えめ。photography: Mariko Omura
家族4人で160㎡のオスマニアン建築のアパルトマンに暮らすティフェーヌ。ヴィンテージとモダンをミックスさせた、パステル調の明るい内装を得意とするが、ふたりの子どもたちの部屋のインテリアも彼女が手掛けた。ティーンエイジャーの長女は、壁をペイントすることも壁紙を貼ることも望まなかったが、淡い色の花の絵がお気に入りだったことから、同系色にまとめることを提案した。「カーペットがパステルのサークルのモチーフなので、天井からのペンダントライトに丸いパステルのボール状のランプを選んだの。彼女は本当に何も欲しがらない。あまり物がない空間に、徐々に自分なりに写真を飾ったりしているわ」
また、当時12歳だった長男の部屋は英国調にまとめることにした。恐れ知らずで大胆な英国流のスタイルを、ティフェーヌが気に入っているからだ。あえて花柄のカーペットや愛らしい額を取り入れたが、彼は文句を言わず受け入れてくれたという。賃貸の物件だけに、予算をあまりかけないようにストライプの壁紙は壁の一面だけにとどめ、家具をグリーンでまとめて調和させている。
左:カーペットのサークルと呼応するようなペンダントライト。 右:長女お気に入りの植物の絵から着想を得て、部屋を淡いトーンにまとめることに。photography: Mariko Omura
グリーン系でまとめた長男の部屋。ストライプの壁紙に、英国的雰囲気が漂う。photography: Mariko Omura
小さい頃から持っていた動物のオブジェや絵を、ずっと大切に飾っている。photography: Mariko Omura
*この記事は、madame FIGARO.jpの2017年1月~2023年2月の記事を再編集し、制作したものです。
editing: ERI ARIMOTO