ウイルスと闘う世界のいま。#06 ロックダウンによる、長い在宅時の過ごし方。

Travel 2020.03.29

文・坂本みゆき(在イギリスライター)

イギリスでのロックダウンが始まって、最初の1週間が過ぎようとしています。

夫と高校生の息子の3人家族の私。普段は取材がある時を除いて家で仕事をしているのですが、まずそこにロックダウンに先立って3月中旬から無期限で在宅勤務となった夫が、その後はイースターホリデーまであと1週間半というところで学校が閉鎖となった息子が加わりました。

ひとりの時間がなくなって3人がずっと家にいる状況を実は私はちょっと心配していました。でも我が家は子どもが大きいので、日中はそれぞれが別の場所で作業することでいまのところは事なきを得ています。

息子は通学はしていないものの、まだ春学期の最中。毎朝、数人の教師からその日の課題を伝えるメールが届きます。先日は数学のテストも送られてきて、決められた時間内に回答用紙を埋め、そのスキャンを先生にメールに添付して「提出」していました。

3人とも在宅となると、当然ですが食事の用意も増えます。ロックダウンの直前にヨーロッパの他国同様に日用品や食材が店頭から消え始めた時、私がとても心配したのはそのことでした(現在は商品が再び並び始め、少し落ち着いてきています)。

お店にいっても欲しいものがない、特に新鮮な野菜や果物がこの先いつ入荷するかわからないとなったらどうしよう。そんな思いもあって、手に入る野菜の加工を始めました。

たぶんイギリス人の最も嫌いな野菜のひとつと思われる(笑)キャベツ。やっぱり売れ残っていたので、千切りにしてキャベツの重さの2%の塩を加えてザワークラウトに。

あまり馴染みがないせいか棚にぽつんと転がっていたフェンネルは、朝ごはんに食べたオレンジの皮の部分とスパイスと一緒に甘酢に漬けてピクルスにしました。

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フェンネルとオレンジのピクルス。サラダに加えてもいいし、白身魚のムニエルに添えてもいいかも。

そのほかにも、家にいる時間が増えたので「マイプロジェクト」をスタートしました。ひとつ目はこれまで気になりながらも未経験だった食材作りや料理にもトライすること。

まずはサワードウの元種。水と小麦粉だけで本当にパン種ができるのかなとドキドキしながら仕込んでみました。小学生のころの理科の実験のようで楽しかったです。ただ現在、小麦粉が店頭では品薄で、それが目下の悩みの種ですが。。。

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小さめに焼いてサンドウィッチとして昼食に。

皮から作るサモサにも挑戦してみました。こちらも小麦粉が必要ですが、使いすぎないように注意して作っています。息子のおやつにもぴったりのヒット作となりました。

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サモサの中身はスパイスで味付けしたひよこ豆と玉ネギ&グリーンピース。ひよこ豆の代わりに、さいの目切りのジャガイモにしても美味しい。

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もうひとつは編み物。編むのが楽しくなることを見越して、色も手触りも最高のスコットランドの「Jamieson's(ジャミーソンズ)」の毛糸を選びました。毎日少しずつ編んでいます。

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たくさんの色があってどれにするか本当に悩みましたが、気持ちが安らぎそうな温かな色を選びました。ネットで注文したら翌日に届きました。郵便や宅配便は動いています。配達員の人たちには感謝しかありません。

料理でも手芸でも手を動かしていると時間を忘れて夢中になるせいか、その間は不安な気持ちが和らぎます。手仕事には精神的に随分と助けられている気がしています。

また、巷では在宅で時間を持て余している人たちが楽しめるものがいろいろと登場しています。

学校が閉校中の子どもたちのためにと、スポーツインストラクターのジョー・ウィックスがYouTubeチャンネル「The Body Coach TV(ザ・ボディ・コーチTV)」に毎日アップしている「P.E with Joe」(P.Eとはphysical education、つまりは体育のこと)。楽しみながらエクササイズができ、大人の運動不足解消にも良いと話題になっています。

また俳優のパトリック・スチュワートは毎日ツイッターに1〜2分のシェイクスピアの朗読を投稿しています。名門ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの出身で、格調高いクイーンズイングリッシュの話し手としても知られる彼のこの試みをきっかけに、そのおもしろさを再発見している人も少なくないはず。

 

テレビ局のチャンネル4は、かつてターナー賞を受賞したアーティスト、グレイソン・ペリーのアート教室「グレイソンズ・アートクラブ」という番組を準備中だとか。こちらも家族が全員で楽しめるものになるのだそう。

ロックダウンは一応、3週間とされていますが、多くの人はもっと長く続くのではないかと考えています。まだ始まったばかりですが、私は自分なりの楽しみを織り込んでなんとか乗り切りたいと思っています。

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追記。

またしても心温まる出来事が起こりました。数日前から「25日の夜8時に、NHS(国の医療機関。多くの病院はここに属しています)で働く人たちに感謝の拍手を送ろう」というメッセージがSNSに流れていました。

そして当日。以下、ロンドン市長のサディク・カーン氏のツイートです。

 

#ClapForNHS、#ClapForCaresというハッシュタグを見ると、ロンドンだけでなくイギリス中のあちこちで似たような光景が繰り広げられていたようです。家の前の通りに出て拍手する大勢の人たちの姿もネットにアップされていました。トラファルガー広場横のナショナル・ギャラリーは、この夜はNHSのカラーであるスカイブルーにライトアップされていたとか。

こんな時、私はますます「イギリス大好き」と思うのでした。

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texte : MIYUKI SAKAMOTO, title photo : alamy/amanaimages

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