パリ8区、仏ガストロノミー界の未来を担うイルヴィンの驚きと感動の料理を!

Paris 2025.06.12

イルヴィン・デュランがパリ8区に自分の名を冠したレストランを開いたのは、2025年4月14日。オープンして1ヶ月の間に、すでに10回も通った熱狂的なファンがいるという。まさか、と驚かされるけれど、ここで一度食事をすると納得できてしまう。ギィ・サヴォワのレストランのひとつであるル・シベルタでシェフを務めていたイルヴィン。このミシュラン1つ星の店で客たちを喜ばせていた彼が、新たな冒険へと乗り出したのだ。

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ブルーがかったグレーの外観を目印に。最寄り地下鉄駅はMiromesnilあるいはMadeleine。photography: Florian Domergue - Pausecom

ランチもディナーもコースメニューのみ。メニューは3種あり、彼の料理人としてのキャリアにおいて大きな意味を持つ場所が名前に付けられている。ランチタイムだけの3品コースメニューはMesnil(メニル/68ユーロ)。これは彼がギィ・サヴォワとともに開きシェフを務めていたビストロLe Petie Rétroがあった16区の通りの名前だ。5品コースのメニューRue du Bac(リュ・デュ・バック/115ユーロ)は、しっかりした環境で料理人として素晴らしく上達ができたジョエル・ロビュションの店の場所にちなむ命名。7品コースのメニューQuai de Conti(ケ・ドゥ・コンティ/160ユーロ)はセカンドを務めていたギィ・サヴォワによる貨幣美術館のレストランから。3コース、それぞれにワインのマリアージュが可能である。子供時代や旅の思い出にインスパイアされた彼のガストロノミー料理。テーブルに登場するのは季節やローカルの素材をベースにしたシェフのセンス、意気込み、クリエイティビティが込められたおいしく、そして食感の楽しみに溢れる料理ばかり。季節の素材を尊重し、オープンしてから2ヶ月の間にすでにメニュー内容を三度変更したそうだが、それを可能にしてくれるフランスの食材の豊かさにシェフは感謝している。

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昔、シェフがバカンスを祖父母と過ごしたコルシカの思い出の味は栗粉のタルトのミリアチュウ。コルシカの名物チーズのブロッチュの味と最後にかける野生タイムのオイルが味のアクセントだ。これは手でいただく。同時にサービスされるマージョラムで煎じた野菜のブイヨン(左)は自然な甘みが優しい。photography: Mariko Omura

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焼いたアスパラガスの香ばしさを柑橘類のマヨネーズが包み込む。添えられるサバイヨン・ソースはジン・トニックがインスピレーション源。ジンでおなじみのジュニエーヴルの香り、レモンやグレープフルーツの酸味がもたらされている。photography: Florian Domergue - Pausecom

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下準備に手間をかけ、モーのマスタードの酸味でリ・ド・ヴォーが苦手の人もうならせる味にシェフは仕上げている。photography: Mariko Omura

シェフ・パティシエはテッサ・ポンゾ。メゾン・ピック、エレーヌ・ダローズといった地方のレストランを経由し、パリのラセールへ。そしていま、彼女はイルヴィンで様々な実験を重ねた結果のユニークなデザートを提案している。

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セージ風味の真っ白のデザート。アーモンドミルクのジュレの下に、柔らかなアーモンドのビスキュイ、ヨーグルト・アイスクリーム、発酵ミルクのシャンティイ......と白のシンフォニー。上にミルクの膜をのせて。photography: Florian Domergue - Pausecom

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左:タンザニアとマダガスカルのバニラ、それに沖縄の白味噌というユニークな組み合わせの''バニラ・ミソ''。 右:オリーブで有名なニョンス出身のテッサが地元の黒オリーブとローズマリーを使った、シェアして食べるイチゴのタルトには、ローズマリーで煎じたオリーブオイルをかけて。これも手でいただく。photography: Mariko Omura

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「レストランの客室は劇場だ。そのキッチンが舞台裏なら、テーブルは舞台」と語るイルヴィン。かつて100席以上ものビストロだったという場所を、32席の洗練の空間に変貌させた。インテリアも、彼の明快なビジョンをもとに建築事務所JODと二人三脚で作り上げたのだ。焼き杉の黒壁、スタッフの上着の色に似たくすんだグリーンの椅子......ディナータイムは通りに面した一面のガラス窓から光が入るランチタイムとは異なる表情を見せ、彼が理想とする劇場空間となる。全体を暗くしたレストラン内、照明がテーブルの真上から落ち、そこに白い器に盛られた料理が登場するのだ。まるでスターがステージ上で照明の中に浮かび上がるように。時間が合うなら、是非ともディナータイムを体験してみるのがいいだろう。

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通りに面したスペース。右の壁にはシェフが一目で気に入ったという焼き杉が用いられている。photography: Florian Domergue - Pausecom

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左:テーブルの真上のライトが作り出す光の遊び。 右:カトラリーレストはクリストフル、グラスはZalto, Riedel & Zafferanoというように、メニューにはコース名だけではなく、スタッフや関わった職人たちの名前やブランド名なども記されている。photography Florian Domergue - Pausecom

広々としたオープンキッチン。働くスタッフはイルヴィンが以前働いていたレストランで育てた料理人も含まれているそうで、連帯意識で全員が結びついている。この結果が良い仕事へと結びつき、さらに客席にも良い雰囲気がもたらされているのだ。レストラン奥のキッチンに向かい合うスペースには、8~10名用のテーブルが置かれている。この席での食事はまさにガストロノミーのイマーシブな体験となる。パリにはレストランが無数あるけれど、オープン間もないにも関わらず早くも話題のイルヴィンを一度は試してみよう。

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オープンキッチンとシェフズテーブル。photography: Florian Domergue - Pausecom

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イルヴィン(中央)、テッサ(その左)を囲むスタッフ。photography: Florian Domergue - Pausecom

Irwin
22, rue Cambacères
75008 Paris
営)ランチ12:00~16:00(13:30 L.O.)、ディナー19:00~24:00(21:30 L.O.)
休)土、日
https://www.irwin.paris/
@restaurant.irwin

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editing: Mariko Omura

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