齊藤工の目に映る里々佳、愛らしいネイバーフッドガールの先にある虚無感。

齊藤工が2018年の『blank13』の公開以来、久しぶりに単独監督を務める長編劇映画『スイート・マイホーム』。公開を前にして、本作の関係者の方々のモノクロポートレートを紹介するとともに、映画について、齊藤工について、話を聞いた。第1回目は里々佳。

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2022年2月、映画の撮影現場にて。

誰もが好印象を抱くような、爽やかさ、あたたかさがある。里々佳を見た第一印象は多くの人にとってそう感じるはずだ。主人公の清沢賢二(窪田正孝)の不倫相手・原友梨恵を演じる姿も映画の最初のほうにおいては、その好印象は崩れない。

「里々佳さんは兼ねてから"深みのある明るさ"を持っている印象でした。『スイート・マイホーム』ではその魅力を大いに発揮して、物語の鍵となる特別な役柄を見事に演じてくださいました」(齊藤)

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本作に参加できて「とてもうれしい」とコメントしている里々佳。齊藤組の撮影現場の雰囲気や演出を、「現場は、どっしりと、懐深く受け入れてくださっている印象でした。大事な場面においては、監督が強くこだわった演出をしていて、それが独特の世界感を作っているのだと思いました」
齊藤は俳優に対してのリスペクトが高い演出をすると評判だが、里々佳とはどんな対話をしたのだろう? 
「齊藤監督とは、友梨恵という役柄の”雰囲気“の話をしました。それ以外は、私から出る感情をそのまま優しく受け止めてくださいました。人って、自分自身の欲望を見て見ぬフリをして格好つけたり、ごまかしたりしてしまうものだと思います。監督が静かにあたたかく見守ってくれたので、 “自分自身の幸せを手に入れたい”という、友梨恵という役が持つ欲望に、素直に向き合えました」
『スイート・マイホーム』は、タイトルのとおり「家」が舞台である。そして「スイート」という形容詞は、本作において裏腹な意味合いを持っている。
里々佳自身にとって、家とはどんな意義があるのだろうか?
「存在を認めてくれる場所です。不安な時は、いつも家族からの言葉で自信を取り戻して、また前へ進めます。本当に大切に出来るものってたくさんはなくて、自分の手の届く狭い範囲だと思っています。私にとって家族や家はその中のひとつ」
家や家族とは、この里々佳の言葉どおり、とてもポジティブであるべきもの。だが、『スイート・マイホーム』は見事に逆走していく物語だ(ネタばれになるのでここでは詳細は書かないが)。そして健康的な美しさを宿した友梨恵も、恐怖からその外見が変化していく。里々佳にとっての“こわいこと”とは……?
「昔からホラーやおばけが苦手です。いまもひとりだと明かりを消して寝ることができません(笑)。シャンプーしている時も、後ろに何かいる気がして目を瞑れません」

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シャンプーが目に入ったら痛い思いをしてしまいそう。怖がることへの理解や共感が役に厚みを与えているのかもしれない。前半から見事に変化する友梨恵は、恐怖に疲弊する人のリアリティがある。

「撮影が進むにつれ、里々佳さんの表現に現場がのまれ、アパートのシーンにて、撮影監督の芦澤明子さんが予定にない里々佳さんの寄りのカットを撮りたいと提案され、その結果、素晴らしいカットが誕生しました。ほかでもない芦澤さんにそう思わせたのは、紛れもなく里々佳さんの表現者としてのチカラです」(齊藤)

里々佳/RIRIKA
1995年生まれ、鹿児島県出身。モデルとして活動しながら、2020年に配信ドラマ「呪怨 : 呪いの家」(2020年)オーディションでキーパーソンとなる役を獲得し、存在感を発揮。主な出演作に、「理想の オトコ」(21年)、「青野くんに触りたいから死にたい」(22年)、「今夜すきやきだよ」(23年)、「around1/4」(23年)など。9月1日公開の映画『スイート・マイホーム』で主人公の不倫相手・友梨恵を演じる。
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齊藤工/TAKUMI SAITOH
2023年は出演作が続いたが、2018年の初長編監督作『blank13』以来、『COMPLY+-ANCE』、『ゾッキ』に続き、単独で監督した長編作『スイート・マイ ホーム』が9月1日より公開。TBSラジオにて朗読「深夜特急 オン・ザ・ロード」が毎週月~金曜23:30~23:55まで放送中。

『スイート・マイホーム』
●監督/齊藤工
●出演/窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳ほか
●2023年、日本映画
●113分
●配給/日活、東京テアトル
●2023年9月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国にて公開 
©2023『スイート・マイホーム』製作委員会
©神津凛子/講談社

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齊藤工、『スイート・マイホーム』の旅。

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