色彩を失う冬のパリで、踊るように咲くマグノリア。

写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はフランス・パリの旅。

250324-paris-01.jpg
雨に濡れたマグノリアもまた麗しい。春を待つ季節を彩る花は健気、白い炎のようだ。この時期のパリではあちこちで満開のマグノリアに出合った。宿泊したホテルのテラスにて。

パリ、マグノリアの花が踊る街。

vol.27 @ フランス・パリ

パリは、文字どおりグラマラスな都だ。度々訪れているが、毎回刺激的で印象深い。

当誌でおなじみのエッセイスト、村上香住子さんの著書『パリ・スタイル大人のパリガイド』の写真を撮影させていただいた(なんとも光栄!)時は、村上さんとパリの街角のその向こうやドーヴィルを歩き、パリっ子の目線でこの街を感じるという、なんとも贅沢な経験を得た。絵画も文学も哲学も音楽もモードも、世界平和もあるこの街を、古から人々は目指し集まってきた、欧州のみならず大陸も海も越えてはるか遠くからも。その人々がこの街で学び、感じ、世界のなんたるかを想い、それらがあらゆる形で表現されてきた、いまもそれが続いている。だからパリは当たり前にユニバーサルで文化的なわけだ。

コロナ禍を経た冬の終わり、久しぶりのパリを寒さも気にせず歩きまわった。ケ・ブランリー美術館を目指してセーヌ川とエッフェル塔を横目に見ながら進んでいると気持ちが華やぐ。重たい空、眼にはいるものの彩度が尽く低い中、ミルク色のマグノリアがこれ以上ないほど自由にその花びらを踊らせていた。これぞ冬のパリのエレガンス! パリはいつだって粋なのだ。

美術館ではアフリカやアジアの国々から集められた土着の芸術に触れ、あまりにおもしろく時間を忘れて鑑賞した。珍しい造形の数々のエネルギーの高さはもとより、生きた展示とでも言おうか、それらをより見ごたえあるものにする展示の作り方に圧倒された。

250324-paris-02.jpg
映画の中で観たパリに随分感化されてきた。特にレオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』のパリは記憶に刷り込まれている。さまざまな顔を持つパリだが、たまには王道のパリの光景も華やかで素敵。
250324-paris-03.jpg
ケ・ブランリー美術館で見る諸国の工芸はいずれも楽しく、世界の広さや豊かさを感じる。日本のアイヌ民族の古い写真の展示もよかった。
『パリ・スタイル 大人のパリガイド』
村上香住子著 リトルモア刊 ¥2,200

『ポンヌフの恋人』
監督/レオス・カラックス 1991年、フランス映画 125 分 DVD絶版

*「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
秋メイク
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.