先日、国内旅行のパッキング中にふと迷った。シャンプーとリンスを持って行くべきか? 宿泊先のホテルが洗練されたところだったので、「きっといいアメニティがあるはず」と信じて、結局持参しなかった。すると予想どおり、用意されていたのは「Malin & Goetz」社の製品。普段自分が使っているヘアケアよりも高品質で、何も持ってこなかったことで、得した気分すら覚えた。そんなホテル滞在の気分を盛り上げる、アメニティに変化が訪れている。
ニューヨーク州では、2025年1月1日から新たな条例が施行された。現在、50室以上のホテルでは、12オンス(約355ml)未満の使い捨てプラスチック容器入りアメニティの提供が禁止されている。対象となるのは、シャンプーやコンディショナー、ボディソープ、ボディローションなど。違反した施設は警告を受け、30日以内に改善がなければ罰金が科される仕組みだ。なお、50室未満のホテルにも2026年からこの規制が適用される。アメリカ国内では、カリフォルニア州が同様の法律をすでに導入しており、ワシントン州でも2027年から段階的に実施される予定だ。
この法案は2019年に提出され、2021年にホークル州知事が署名。当初は2023年の施行予定だったが、ホテル業界団体が「既存のミニボトル在庫が使い切れない」と訴えたことで、一時延期されていた経緯がある。しかし、現在では、ニューヨークの多くのホテルがすでに大容量ディスペンサー型ボトルに移行済みだ。たとえば、マリオット・インターナショナルでは、2023年末までに約95%の施設でミニサイズのアメニティをポンプ式の大容量ボトルに切り替え、ヒルトンも同年から全施設でフルサイズのアメニティへの移行を完了した。
また、「MiN New York」のようなサステイナブルなアメニティブランドも注目を集めている。香りや処方にこだわりながら、シリコンやパラベンを使わず、動物実験も行わない。環境配慮として採用されているリフィル式ディスペンサーは、100室規模のホテルで年間22,250本のミニボトル、約145kgのプラスチックを削減できるという。同ブランドの製品は、「Pendry Manhattan West」などの高級ホテルで導入されている。
環境への意識が高まるなかで、「どのブランドのアメニティか」だけでなく、「どのように提供されているか」に注目して宿を選ぶことが、新たな基準になりつつある。観光シーズンを迎えた夏のニューヨーク。各ホテルがどんな取り組みをしているのか、確かめてみると、旅の印象も少し変わってくるかもしれない。
What's Up in New York Now?
photography: Shutterstock

長谷川安曇
東京出身、2004年からニューヨーク在住。フリーのライターとして活動しながら、映像制作にも携わり、キャンペーンやミュージックビデオのプロデュースとフィルムメーカーとしても活動する。www.azumihasegawa.com