ドイツに、長い伝統で知られる花火大会があるのをご存じだろうか? ヨーロッパで花火といえば、通常は冬の伝統行事。新年をロケット花火で祝うことは多いが、日が長い夏場に花火を楽しめるところはあまりない。しかしドイツでは、5月から9月にかけて花火大会「ラインの火祭り」が、世界遺産を舞台に開催される。
(c)DZT, Felix Meyer
「ラインの火祭り」の起源は、1756年にまで遡る。この辺りを治めていた選帝侯の就任の際に、大きな花火で祝ったのがラインの火祭りの始まり。その後、ライン川では夏に何度も花火が開催されている。1845年の8月には、イギリス女王ヴィクトリアがハネムーンでライン渓谷を蒸気船で旅した際に、大きな花火で歓迎した。女王は、ライン川の景色に魅了され、船の甲板の上で一日中過ごしたそうだ。それから断続的に開催されていた川沿いの花火大会は、20世紀初頭に船のパレードを組み合わせた一大イベントとなった。
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世界遺産のなかから花火を見上げる、優雅なクルーズを堪能。
ラインの火祭りを楽しむなら、おすすめはなんと言ってもクルーズ船での旅だ。ヨーロッパのリバークルーズで知られる「クロワジーヨーロッパ」は、ストラスブール発着、世界遺産のライン渓谷を中心に花火大会をハイライトにすえた4泊の旅を提案している。クロワジーヨーロッパでの船旅のコンセプトは『旅するホテル』。予約や移動に苦労することもなく、乗船してしまえば全てをゆだねてののんびり旅。おいしい料理とワインを楽しみながら、各地の見どころを回ることができるのだ。





ライン川クルーズでは、中世の趣ある木組みの街並みや40近い古城など、見どころも全て川沿いにあるので、朝目を覚ませば大きな窓の外に絶景が広がる。寝ながらにしての世界遺産巡りとは、なんとも贅沢だ。
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ブドウ畑が一面に広がるリューデスハイムの街。
世界的に有名なワイン産地でもあるライン渓谷。特に途中で停泊するリューデスハイムは、可愛らしい街並みはもちろんドイツを代表するワイン用ブドウ品種、リースリングの産地としても知られている。
なかでもリューデスハイムのものは、スレート(粘板岩)の土壌とライン川の反射光で育まれ、繊細な酸味やミネラル感がある。街に出て、小さなワイナリーを訪ねたり、夏から秋にかけて街のあちらこちらで開催されているワイン祭りに足を伸ばしてみるのも楽しいだろう。
ライン川沿いのワインスタンドで、地元のワインも満喫。いい夜だ。
3日目の夜はいよいよ、ラインの火祭りだ。日が落ちて空が濃い青色になってくると、次々と周囲にクルーズ船が集まってくる。40台近くの船が集まって船団を組み、雄大な流れの中を走っていくのだ。
シャンパンのグラスを傾けながら待っていると、ライトアップされた古城の向こうから、大きな花火があがる。右岸、左岸とかわるがわる花火が上がる中、色鮮やかな光を映す水面を揺らしながら船が次々と走っていく様子に心が躍る。ラストを飾る連発の大花火は、火花が煌めく水滴のように頭上に降り注ぎ、その美しさに息を呑んだ。
船のデッキから間近に見上げる花火は迫力満点。水面に映る様子も美しい。
花火の余韻に包まれた闇の中に、船団の汽笛が鳴って、火祭りの終焉が告げられる。ラインの火祭りは、今年は8月9日にはライン川とモーゼル川が交わる水の街コブレンツを中心に、9月13日には塔と古城が美しいオーバーヴェーゼルで開催される。
昨年は400台のドローンのショーもサプライズで行われ、花火と組み合わさって盛り上がった。今年もサプライズを準備しているというが、その詳細は秘められている。世界遺産の絶景を舞台とした壮麗な打ち上げ花火を、まさにど真ん中から見るクルーズの旅、唯一無二の忘れえぬ体験となること、間違いなしだ。
ロマンチック・ラインで楽しむ花火大会
クロワジーヨーロッパ クルーズ
https://www.croisieurope-japan.com/rhine/rfl/
ラインの火祭り
開催日時:8/9(土)、9/3(水)
詳細はこちら:https://www.rhein-in-flammen.com/
photography & video : Hideko Kawachi

河内秀子
ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau