王族にとって因縁の深い邸宅、ハリー王子がリース契約を更新。

Culture 2022.02.25

サセックス公爵ハリー王子が最近、この邸宅のリース契約を更新したことが、2022年2月19日付のテレグラフ紙で報じられた。この機会に、このクラウン・エステートの歴史を振り返ってみよう。

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フロッグモア・コテージは、ハリー王子夫妻のイギリスの住居となっている。 (ウィンザー、2020年9月7日) photo: Abaca

1875年6月のある朝、ヴィクトリア女王は静かに朝食を楽しみたいと思っていた。残念ながら「無数の小さなカエル」が庭で飛び跳ねていたため、女王は食欲を失った。女王がこの時滞在していた「ダブル・ガーデン・コテージ」はテムズ川沿いの湿地帯に建てられており、活発な両生類の繁殖にはもってこいの場所だった。その後、ここはフロッグモア・コテージと改名された。名前の由来はもちろん「フロッグ」、すなわちヴィクトリア女王をゲンナリさせたカエルたちである。

ヴィクトリア女王の滞在から約150年後、ハリー王子とメーガン夫人は2019年から2020年1月までこの邸宅に住み、その後は夫妻の英国滞在時の住居となった。現在カリフォルニアに住むハリー王子がこの邸宅のリース契約を更新したことを2022年2月19日付のテレグラフ紙が報じた。契約は2022年3月31日に終了する予定だったが、契約更新によってイギリス国内の住所を維持した結果、チャールズ皇太子の息子はエリザベス女王の不在時などに公務を代行する「カウンセラー・オブ・ステート」の権利を保持しつづけることとなった。

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450ポンドのガーデン

現在、フロッグモア・コテージはごく稀にしか使用されていないが、かつては多くの王族を含む多くの人々がここに住んだ。もともとはチャールズ2世の治世の1680年、王の甥のために建てられた住居だった。1801年、ジョージ3世の妻シャーロット王妃が造園家に依頼して周囲の庭園を再整備させた。整備費用は450ポンドというささやかな金額だった。庭園が完成するとシャーロット王妃は未婚の娘たちを連れてここに滞在した。ウィンザー城の目と鼻の先という立地は理想的だった。1818年に王妃が亡くなってからはしばらく、空き家のまま放置されていたが1840年になり、ヘンリー・ジェームズ・シニアという神学者が一家で移り住んだ。

 

 

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アブドゥル・カリムの数奇な運命

ヴィクトリア女王の母親であるケント公爵夫人もここに一時期住んでいたことがある。その57年後の1897年、ヴィクトリア女王の個人秘書兼教師のアブドゥル・カリムが妻や父親を伴い、引っ越してきた。アブドゥル・カリムは数奇な運命を辿ったインド人だ。ヴィクトリア女王晩年の15年間、女王の使用人兼親友となる。しかし、このことは宮廷の不興を買い、女王の息子、エドワード7世は1901年に女王が亡くなるとアブドゥル・カリムをイギリスから追放した。アブドゥルはインドのアグラ付近で生涯を閉じた。

 

 

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国を追われた大公妃

その後しばらく空き家だったが1920年代になり、高貴な亡命者がやってくる。時のイギリス国王ジョージ5世の従姉妹、ロシアのクセニア・アレクサンドロヴナ大公妃だ。ロシア革命後に祖国を追われ、ジョージ5世の元に身を寄せ、この家に移り住んだ。しかしながら大公妃一家にはこの家を維持する余裕がなく、フロッグモア・コテージは段々みすぼらしくなっていった。

やがて大公妃は、イギリス国王からウィルダネス・ハウスを提供され、引っ越していく。

なお、1923年にはジョージ6世が王妃とここでハネムーンの一部を過ごしている。王妃はのちにクイーン・マザーとして知られることになる。数十年後には二人の娘のエリザベス、すなわち現在のエリザベス女王がコーギーの散歩を楽しむ姿がよく見られるようになった。

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改装費用は240万ポンド

21世紀初頭には内部を5つに分割し、ウィンザー城の従業員の住居に使われていた。従業員たちは噂など気にしなかったからだ。ウィンザー城には幽霊が出るという噂があり、一方、フロッグモア・コテージには亡霊が来ると言われていた。確かにフロッグモア・コテージの向かいには王家の霊廟があり、ヴィクトリア女王とアルバート公、ヴィクトリア女王の母、エドワード8世、ウォリス・シンプソンらが眠っている。また、地元の礼拝堂には、国王10人とマーガレット王女の遺骨が納められている。

この礼拝堂は晴れの舞台にも使われた。2008年、アン王女の息子のピーター・フィリップスとオータム・ケリーの結婚式が行われ、その10年後にはハリー王子とメーガン夫人の結婚式があった。そして2019年、フロッグモア・コテージは良くも悪くも、ハリー王子夫妻の住居となった。夫妻が王室助成金(ソブリン・グラント)を受けて行った改修費用は240万ポンドに達した。

 

 

ただ、問題は数ヵ月後、二人が王室から離れたい......イギリスを離脱したいと言い出したことだ。巨額の改装費用に税金を使われたイギリス国民は怒った。経済的に自立しなくてはならない二人がどうやってこの金額を返済していくのか、メディアも興味津々だった。二人が出した答えは、Netflixと交わした好条件の契約だった

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ハリー王子の帰還

専門家の試算によると、二人はこの契約で1億5000万ドルを手にした。『自由を求めて ハリーとメーガン 新しいロイヤルファミリーを作る』の著者、オミッド・スコビーは2020年9月にこんなツイッターを流した。「確認済み:ハリー王子がフロッグモア・コテージに自分の家族と住むために費やした改修費240万ポンドを正式に返済した。公爵に近い筋によると、最近(自発的に)王室助成金に全額返済したそうだ」。この情報はバッキンガム宮殿及びサセックス公爵の広報担当者によって確認された。

 

 

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「デイリーメール」紙を訴える

それ以来、フロッグモア・コテージ周辺は静かだ。2020年11月から12月にかけてユージェニー王女とジャック・ブルックスバンクが6週間滞在した時を除いては。ハリー王子は、2021年4月にフィリップ王配の葬儀に出席するために、そして2021年7月にダイアナ妃の銅像除幕式のために戻ってきたのみ。今後も積極的に戻ってくることはないだろう。

「デイリーメール」紙は身の危険を案じたハリー王子が英国滞在中に警察の保護を要請したことを報じ、ハリー王子は、この記事が名誉毀損にあたると同紙を訴えた。こうしたことから考えても、ハリー王子夫妻がすぐにフロッグモアコテージに戻ることはなく、この住まいは過去の思い出や、もしかしたら本物の亡霊で満たされたままなのかもしれない。

text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)

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