映画監督・中田秀夫が語る、相葉雅紀の魅力とは?
Culture 2022.09.27
自然体で演じてくれる予感が100%ありました
ホラー映画において、この世ならざるものと対峙する時、相手のあの世に引きずり込もうとする力は強大です。たとえば、私の過去作品『リング』(1998年)では、小さい子どもを持つ母親が主人公で、女性が子どもを必死に守る姿から恐怖が増したと思います。今回の映画は、さらに強大なこの世ならざるものが相手ですが、主人公の淳一を演じる相葉さんに、弱弱しい男性を演じてほしいとは伝えてない。父親像については、相葉さんが「息子と離れて暮らしていた父親という設定なので、最初は父親としての責任が甘くて無自覚。でも、森で“それ”と遭遇した息子がパニック状態になったことから、父親としての自覚が強くなった。その落差をしっかりと表現したい」と提案してくれて、僕が賛同する形で決定しました。
淳一は、生まれ故郷に戻って農業をやっていますが、そのイメージはテレビ番組「相葉マナブ」の相葉さんに近い感じがします。以前から、器用に料理をしている姿も見ていたので、自然体で演じてくれる予感が100%ありました。だから、「こうしてください」と、お願いはしませんでした。息子役の上原くんと相葉さんとの長いシーンで、上原くんの活舌の甘いところがあって。私はOKを出したんですが、録音部がNGを出して議論が起きました。上原くんがそれを聞いて涙目になり、相葉さんが「大丈夫だから」と、事務所の大先輩として父親のようにフォローしてくれていたそうです。この話がいちばん印象的ですね。
演技をする相葉さんは、いわばゾーンに入ったアスリートのように肩の力が抜けた状態で集中していました。余談ですが、息子の名前を叫びながら相葉さんが200mほど駆け抜ける場面があるのですが、一瞬で姿が見えなくなったんです。「実は相葉さんは400mの日本記録くらい出せる人なのではないか」と、本当にびっくりしましたね!
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Hideo Nakata / 東京大学在学中に蓮實重彦の映画ゼミに参加し、1985年ににっかつ撮影所に入社。92年「本当にあった怖い話」で監督デビューし、96年『女優霊』で映画監督デビュー。『リング』(98年)が大ヒットし、ジャパニーズホラーの第一人者として知られる。
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『“それ”がいる森』
田舎町でひとり、農業に励む淳一。ある日、元妻と東京で暮らしているはずの息子がひとりで訪ねてくる。しばらく一緒に暮らすことになるが、その頃、近くの森では不可解な怪奇現象が立て続けに発生。住民の不審死や失踪事件も相次いでいた。“それ”と呼ばれる得体の知れない何かがもたらす恐怖を描いたホラーエンターテインメント。
●監督/中田秀夫
●出演/相葉雅紀、松本穂香、上原剣心、江口のりこほか
● 2022年、日本映画
● 107分
●配給/松竹
●9月30日より、全国にて公開
https://movies.shochiku.co.jp/soregairumori/
©2022「“それ”がいる森」製作委員会
9月20日発売のフィガロジャポン11月号では、相葉雅紀のファッションレポート6ページとともに、本インタビューを掲載しています。
*「フィガロジャポン」2022年11月号より抜粋
text: Yuka Kimbara