シャネルのファッションは、現代の映画にも美しき彩りを添える。
Culture 2025.01.01
メゾンのアンバサダーの枠内に留まらず、作品のクオリティアップのために衣装を提供するシャネルの精神は、2000年代以降も継続。ペネロペ・クルスやクリステン・スチュワート、ティルダ・スウィントン、マーゴット・ロビーなど、彼女たちがスクリーンで実力を発揮するためのとびきりおしゃれな衣装たち。
『A New Life』(原題)
東欧の荒れ果てた町に流れ着いたアメリカ人青年シーモアはひとりの娼婦に出会う。アナ・ムグラリスが謎の娼婦役に体当たり。人間の 闇に迫る残虐で不穏なアート系ホラー。
●監督/フィリップ・グランドリュー ●出演/ザカリー・ナイトン、アナ・ムグラリス、マルク・バルベ、ソルト・ナジほか ●2001年、フランス映画 ●102分
『永遠のマリア・カラス』
世紀のオペラ歌手の晩年を、事実と監督の構想を交えて描く。マリア・カラスを演じるファニー・アルダンの衣装はカール・ラガーフェルドによるシャネル。
●監督・共同脚本/フランコ・ゼフィレッリ ●出演/ファニー・アルダン、ジェレミー・アイアンズほか ●2002年、イタリア・フランス・イギリス・ルーマニア・スペイン映画 ●108分
『抱擁のかけら』
ペドロ・アルモドバル監督による喪失と再生の物語。視力も人生も失った元映画監督が封印していた記憶のかけらを繋ぎ合わせ、再び生きる道を見いだしていく。アルモドバル作品の主演は4回目となるペネロペ・クルスが愛に生きる新人女優役を熱演。シャネルの衣装がその美しさを輝かせる。
Los Abrazos Rotos/Broken Embraces
●監督・脚本/ペドロ・アルモドバル ●出演/ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョほか ●2009年、スペイン映画 ●128分 ●Blu-ray 発売・販売:松竹 ¥2,200
©2009Emilio Pereda&Paola Ardizzoni El Deseo
『ココ・アヴァン・シャネル』
孤児院育ちの少女、ココが世界のガブリエル・シャネルになるまでの半生を辿る。彼女の生き方は時代を超えた自由とスタイルの象徴。
●監督・共同脚本/アンヌ・フォンテーヌ ●出演/オドレイ・トトゥ、ブノワ・ポールヴールドほか ●2009年、フランス映画 ●110分 ●prime video、U-NEXT、Netflixにて配信中
『シャネル&ストラヴィンスキー』
クチュリエとして成功を収めたシャネルとロシアからの亡命作曲家ストラヴィンスキーの秘められた恋が蘇る。アーカイブからカール・ラガーフェルドの特別デザインまで衣装もため息もの。
●監督・共同脚本/ヤン・クーネン ●出演/アナ・ムグラリス、マッツ・ミケルセン、アナトール・トーブマンほか ●2009年、フランス映画 ●119分
『アンナ・カレーニナ』
ロシアの文豪トルストイの名作をキーラ・ナイトレイを主演に映画化。真実の愛に生きるヒロインをシャネルのハイジュエリーが美しく輝やかせる。
●監督/ジョー・ライト ●出演/キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー=ジョンソンほか ●2012年、イギリス映画 ●130分 ●Rakuten TVにて配信中
『ブルージャスミン』
シャネルのジャケットを羽織り、ファーストクラスでロサンゼルスに到着したジャスミン。結婚は破綻、借金だらけになってもニューヨークでのセレブ生活が忘れられない。虚栄心とプライドは人一倍、現実逃避を繰り返すジャスミンの転落人生をウディ・アレンが軽妙かつ辛辣に描く。慣れない生活に精神のバランスを失っていく彼女を演じ切ったケイト・ブランシェットが圧巻。
●監督・脚本/ウディ・アレン ●出演/ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、ルイス・C・Kほか ●2013年、アメリカ映画 ●98分
『アクトレス~女たちの舞台~』
過ぎゆく時間のなか、キャリアの岐路に立たされた大女優の心の葛藤をジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツの競演で綴る。シャネルの支援によりオリヴィエ・アサイヤス監督は35ミリフィルムでの撮影を実現。スイスの大自然をとらえた美しい映像に女たちのドラマが重なる。
●監督・脚本/オリヴィエ・アサイヤス ●出演/ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツ、ブラディ・コーベットほか ●2014年、フランス・ドイツ・スイス映画 ●124分
『パーソナル・ショッパー』
双子の兄を失ったモウリーンの心の変容を描くミステリー。忙しいセレブに代わって服を買い付けるパーソナル・ショッパーが彼女の職業。シャネルのプレスルームが登場する場面も。
●監督・脚本/オリヴィエ・アサイヤス ●出演/クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガーほか ●2016年、フランス映画 ●105分 ●Rakuten TV、Leminoにて配信中
『カフェ・ソサエティ』
30年代のハリウッドとNYが舞台。シャネルのアンバサダーであるクリステン・スチュワートのゴージャスな美貌が際立つ。
●監督・脚本/ウディ・アレン ●出演/ジーニー・バーリン、スティーヴ・カレル、ブレイク・ライヴリー、クリステン・スチュワートほか ●2016年、アメリカ映画 ●96分 ●prime video、U-NEXTほかにて配信中
『オクジャ』
自己顕示欲の強いCEOとその姉の二役をシャネルを纏ったティルダ・スウィントンが怪演。食肉革命の名のもとに巨大化されたスーパーピッグ、オクジャと韓国の山奥に暮らす少女ミジャの友情に、倫理なき畜産企業の裏側や動物保護団体の過激な活動が絡み合う社会派ファンタジー。『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノのブラックユーモアが光る。
●監督・共同脚本/ポン・ジュノ ●出演/ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、アン・ソヒョンほか ●2017年、アメリカ・韓国映画 ●121分 ●Netflix
『スペンサー ダイアナの決意』
未来の王妃の座を捨て、ひとりの人間として生きる道を選んだダイアナ。彼女がその決意をしたといわれる1991年の英国王室のクリスマス休暇を描く。主演のクリステン・スチュワートの完璧な演技と美しすぎるシャネルの衣装が、ダイアナの孤独を浮き彫りにする。
●監督/パブロ・ラライン ●出演/クリステン・スチュワート、ジャック・ファーシング、ティモシー・スポールほか ●2021年、イギリス・ドイツ・チリ・アメリカ映画 ●117分 ●Blu-ray 発売・販売:TCエンタテインメント ¥5,280
『アネット』
兄弟バンド、スパークスの原案を、鬼才レオス・カラックスが歌で語る台詞と幻想的な映像で完成させたダークファンタジー・ロックオペラ。情熱的な愛で結ばれたスタンダップコメディアンと世界的なオペラ歌手、ふたりの間に生まれた不思議な娘アネットの数奇な運命に引き込まれる。製作とマリオンの衣装をシャネルが支援。
●監督/レオス・カラックス ●出演/マリオン・コティヤール、アダム・ドライバーほか ●2021年、フランス・ドイツ・ベルギー・日本映画 ●140分 ●U-NEXT、Rakuten TV、huluほかにて配信中
『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』
ホロコースト生存者のトラウマを抱えながら弱者の人権のために闘い続けた政治家、シモーヌ・ヴェイユの不屈の生涯を辿る。シャネルを愛用していた彼女のスーツ姿にも注目。
●監督・脚本/オリヴィエ・ダアン ●出演/オリヴィエ・グルメ、レベッカ・マルデール、エルザ・ジルベルスタインほか ●2022年、フランス映画 ●140分 ●prime video、U-NEXTほかにて配信中
『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』
フランス国王15世の最期の公妾、デュ・バリー夫人の波乱の生涯を綴る歴史絵巻。監督・脚本・主演のマイウェンはジャンヌを貴族社会に屈しない愛と信念の女性として表現した。彼女のジュエリーはシャネル、ドレス6着もシャネルが製作。
Jeanne du Barry
●監督・脚本・出演/マイウェン ●出演/ジョニー・デップ、バンジャマン・ラヴェルネほか ●2023年、フランス・ベルギー・ロシア・サウジアラビア映画 ●116分 ●Blu-ray 発売・販売:アメイジングD.C. ¥5,170
©Laurent Dailland ©Stéphanie Branchu - Why Not Productions
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『バービー』
グレタ・ガーウィグ監督がフェミニストの視点で実写化した21世紀のバービー物語。シャネルのツイードのスーツにビーチドレス、主演のマーゴット・ロビーが着こなすピンクルックが一大ブームに。
Barbie
●監督・共同脚本/グレタ・ガーウィグ ●出演/マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラほか ●2023年、アメリカ映画 ●114分 ●Blu-ray 発売:ワーナー ブラザース ジャパン 販売:NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパン ¥2,619
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『プリシラ』
稀代のスーパースター、エルヴィス・プレスリーに14歳で出会ったプリシラが、自分の人生を求めて彼のもとを去るまでの10年間の心の軌跡。ソフィア・コッポラ監督はひとりの少女が孤独や葛藤を抱えながら大人になっていく姿を優しく見つめている。彼女の幸せを象徴するようなウェディングドレスはシャネルによる特別な一着。
●監督・脚本/ソフィア・コッポラ ●出演/ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ、ダグマーラ・ドミンスクほか ●2023年、アメリカ・イタリア映画 ●113分 ●U-NEXT、Rakuten TV、Leminoにて配信中
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『The End』(原題)
衝撃的ドキュメンタリー『アクト・オブ・キリング』で知られるオッペンハイマー監督によるミュージカル形式のディストピア物語。環境破壊により終末を迎えた地球に残された3人家族。彼らが20年間暮らすシェルターにひとりの少女がやってきて彼らは目を背けてきた現実と向き合うことになる。シャネルが製作と衣装をサポート。
●監督/ジョシュア・オッペンハイマー ●出演/ティルダ・スウィントン、マイケル・シャノンほか ●2024年、デンマーク・ドイツ・アイルランド・イタリア・イギリス・アメリカ・スウェーデン映画 ●148分
『Marcello, Mio』(原題)
今年生誕100年を迎えたマルチェロ・マストロヤンニへのオマージュ。主演は娘のキアラ・マストロヤンニ。ある日鏡のなかに父の顔を見た彼女は父の人生を生きようと決め、服も歩き方・話し方も父を真似ていく。やがて周囲も彼女を「マルチェロ」と呼ぶように。母のカトリーヌ・ドヌーヴほか、ファブリス・ルキーニ、メルヴィル・プポーなど多くの俳優が実名で出演。
●監督・脚本/クリストフ・オノレ ●出演/キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ファブリス・ルキーニほか ●2024年、フランス・イタリア映画 ●121分
*「フィガロジャポン」2025年1月号より抜粋
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text: Kaori Tsukamoto