広山詞葉が、映画を通して伝えたかったこと。
Culture 2025.04.10
堤幸彦と中村正人。映像と音楽、それぞれ最前線で長く活躍するふたりが初タッグ。渋谷に新たな劇場を立ち上げ、こけら落としとして映画『Page30』をリリースした。出演する4人のインタビューを通し見えてきた女優の本質、演じることとは。
広山詞葉
衣装協力:Kwotias
1985年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。女優業のほか『truth~姦しき弔いの果て~』(2022年)など映画のプロデュース活動も。出演作は映画『ヘルタースケルター』(12年)など多数。ドラマ「続・続・最後から二番目の恋」に出演中。
「堤監督の追加台詞に、してやられました」
堤幸彦作品のヒロインたちは、「ケイゾク」の中谷美紀も、「TRICK」の仲間由紀恵も、どんな恐ろしいことが起きようと無機質な佇まいで、闇を覗き込む冷ややかさが魅力だった。だが最近は、のん扮する若い小説家が文壇の権威に復讐をもくろむ『私にふさわしいホテル』(2024年)など熱いヒロインを描くことが多くなった。きっかけは、映画監督50作目として手がけた自主制作映画『truth〜姦しき弔いの果て〜』(22年)で、事故死したある男と深く関わった3人の女が、本音をむき出しにして、誰がどう愛されたのか確認しあうドラマだった。同作をプロデュースし、主演も務めたのが広山詞葉だ。映像と演劇の垣根を行き来し、プロデュースも手がけてきた彼女は『Page30』で舞台俳優、宮園咲良を演じた。知名度の高さにプライドを持つ唐田演じる琴李に何かとマウントをとられる役柄である。
© DCT entertainment
「琴李から咲良への捨て台詞に"下北沢かよ"と小劇場界隈を敵に回すようなものがあって。かつて『下北サンデーズ』という、頑張る演劇人のドラマを作った堤さんが言わせるか?という(笑)。堤さんの脚本でしてやられたと思ったのが、宇賀遥の台詞で『コロナ禍では舞台をやりたくてもできなかった』というもの。急遽加えられた台詞で、私自身コロナ禍で多くの仕事を失い、だからこそ捨て身で『truth』を自主制作したので、思い出して涙が止まらなくなった。あれは感情を引き出す仕込みだったと思います」
今作まで、6作の堤作品で共同作業を重ねてきた。「『truth』は監督が65歳の節目かつ初の自主映画で、エンターテインメントの中心で表現してきた人が違う領域にいくと意思表示したことに力をもらいました。本作では女優が切磋琢磨する感情を、上原ひろみさんがピアノで掬い取ってくださった。完成作を観て、映画で世界を救うことはできるかもと信じられました。だからこそ、多くの方に観てほしいです」
© DCT entertainment

『Page30』
とあるスタジオに集まった4人の女優。30ページの台本を配られ、わずか3日で自分のものにし、4日目には観客に披露するという。稽古が進むうち、演じることを通して4人が抱えるそれぞれの事情が浮き彫りになる。二流の役者、売れない役者、歌手から転身した役者未経験者。そして迎えた4日目の本番――。音楽を担当した上原ひろみのピアノが、時に不穏な空気を醸し出し、時に救いのよう。
●監督・原案・共同脚本/堤 幸彦
●出演/唐田えりか、林田麻里、広山詞葉、MAAKIIIほか
●音楽/上原ひろみ、中村正人
●2024年、日本映画 ●113分
●製作・配給/DCT entertainment
●渋谷 ドリカム シアターほか全国にて公開中

渋谷 ドリカム シアター
supported by Page30 期間限定オープン!
DREAMS COME TRUEにとって渋谷は特別な場所。ライブハウスから活動を開始し、渋谷公会堂、NHKホール、国立代々木競技場第一体育館と、渋谷を舞台に夢を叶えてきた。今年4月、ドリカムにとっての"聖地"に、音楽、文化、ダンス、食など多ジャンルで企画展開するテントシアターが登場。『Page30』の上映をはじめ、さまざまなイベントを予定。新たな夢が生まれる場所になりそう。
渋谷 ドリカム シアター supported by Page30
開催期間:4月11日~6月1日予定
開催場所:東京都渋谷区渋谷3-7-1 渋三広場 ※渋谷警察署裏 https://shibuyadcttheater.jp/
photography: Aya Kawachi styling: Kouichi Fujisaki hair & makeup: Rinne Uchida text: Yuka Kimbara