自らの芝居人生と役を重ねた、林田麻里の新境地。

Culture 2025.04.10

堤幸彦と中村正人。映像と音楽、それぞれ最前線で長く活躍するふたりが初タッグ。渋谷に新たな劇場を立ち上げ、こけら落としとして映画『Page30』をリリースした。出演する4人のインタビューを通し見えてきた女優の本質、演じることとは。

林田麻里

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Mari Hayashida
福岡県出身。舞台演劇での活躍が評価され、第48回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。2000年、活動拠点を東京に移し、08年に北野武監督の『アキレスと亀』、18年には『人魚の眠る家』『ガチ星』など幅広く活躍。秋には故郷・大牟田を舞台にした映画『オオムタアツシの青春』が公開予定。

「芝居をすることで、本当の自分や感情を出せる」

映画『Page30』は4人の女優が戯曲『under skin』を完成させるまでの人間ドラマ。脚本は堤監督と劇団マカリスター主宰、井上テテが担当。女優が挑む劇中劇の戯曲そのものは劇団□字ックを主宰する山田佳奈が脚本を書いた。舞台の世界を最もよく知る女優・宇賀遥役を、過去に紀伊國屋演劇賞個人賞の受賞者である林田麻里が演じているのは何よりの説得力がある。遥はほかの出演者よりもこの案件の内実に詳しい風情を漂わせ、誰よりもミステリアスな存在でもある。

「堤監督はテテさんにも、山田さんにもあえて難解な言い回しを台詞に求めたと聞いています。だから演じた4人が全員、仮面を取り、剝き身にならないと乗り越えられなかった。私が演じた遥は芝居の中でしか生きられない人。表現の欲が埋まらない。確かに私もずっと芝居をやってきて、自分の人生から芝居をとったら何が残るんだろうって思うので、そこは似ているかも。芝居を作る行為は楽しいだけじゃ済まない。けれど、自分の実感としては素でいる時よりも役柄の設定を借りることで、むしろ本当の自分や言いたいこと、感情を出せるとも言えます」

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© DCT entertainment

4人の女優は戯曲を完成させるまで、芝居稽古場と宿泊所以外への移動は制限をかけられる。配役も出来次第で主役と脇役が入れ替わる過酷なもの。堤監督の「ケイゾク」「TRICK」のように、デスゲームでも起きるのではないかと楽しく惑わされる。

「堤監督による、世間の人々が抱く女優へのイメージの反転の意図もあるかと思います。表に出てくる感情や言葉が全部本当でもないし、嘘でもない。絶妙に入り混じり、真意を探るのがおもしろい。でも駆け引きを超え、最終的には背中合わせの芝居で、みんなの顔が見えなくても3人の状態がわかった。ある種のシスターフッドの話だと思っています」

渋谷の新劇場にはこう期待する。

「エンターテインメントってもっと融合していい。ジャンルの壁をぶち壊す空間になればと思います」

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© DCT entertainment

250408-page30-01.jpg© DCT entertainment

『Page30』
とあるスタジオに集まった4人の女優。30ページの台本を配られ、わずか3日で自分のものにし、4日目には観客に披露するという。稽古が進むうち、演じることを通して4人が抱えるそれぞれの事情が浮き彫りになる。二流の役者、売れない役者、歌手から転身した役者未経験者。そして迎えた4日目の本番――。音楽を担当した上原ひろみのピアノが、時に不穏な空気を醸し出し、時に救いのよう。
●監督・原案・共同脚本/堤 幸彦
●出演/唐田えりか、林田麻里、広山詞葉、MAAKIIIほか
●音楽/上原ひろみ、中村正人
●2024年、日本映画 ●113分
●製作・配給/DCT entertainment
●渋谷 ドリカム シアターほか全国にて公開中

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渋谷 ドリカム シアター
supported by Page30 期間限定オープン!

DREAMS COME TRUEにとって渋谷は特別な場所。ライブハウスから活動を開始し、渋谷公会堂、NHKホール、国立代々木競技場第一体育館と、渋谷を舞台に夢を叶えてきた。今年4月、ドリカムにとっての"聖地"に、音楽、文化、ダンス、食など多ジャンルで企画展開するテントシアターが登場。『Page30』の上映をはじめ、さまざまなイベントを予定。新たな夢が生まれる場所になりそう。

渋谷 ドリカム シアター supported by Page30
開催期間:4月11日~6月1日予定
開催場所:東京都渋谷区渋谷3-7-1 渋三広場 ※渋谷警察署裏 https://shibuyadcttheater.jp/

photography: Aya Kawachi hair & makeup: Nobuko Okuno text: Yuka Kimbara

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