歌手から女優、新たな挑戦をするMAAKIIが受けた衝撃。
Culture 2025.04.10
堤幸彦と中村正人。映像と音楽、それぞれ最前線で長く活躍するふたりが初タッグ。渋谷に新たな劇場を立ち上げ、こけら落としとして映画『Page30』をリリースした。出演する4人のインタビューを通し見えてきた女優の本質、演じることとは。
MAAKIII
1987年生まれ、沖縄県出身。ロックバンド、HIGH and MIGHTY COLORでボーカルを担当。脱退後、2013年からソロとして活動。バンド、DracoVirgoのボーカルも務める。06年、映画『あなたを忘れない』で女優デビューを果たす。
「全部吐き出した後の快感と、その先に見つけた芸術」
女優としての経験値はゼロに近い状態ながら、シンガーから転じたポテンシャルと爆発力はすさまじいものを持っている。堤監督から振り当てられた樹利亜役は、MAAKIIIと共通点の多い人物像だった。
「樹利亜は音楽からキャリアを始め、表現を諦められず、初の舞台に挑戦するという大事件に巻き込まれていく。私自身、堤さんからやるしかないじゃないかと誘われた気がして、逃げられないと思った瞬間からワクワクしちゃいました。私と同じ沖縄出身の設定だったので、とことん自分に寄せようとリハーサル前に堤さんに電話し、なまりを強調したいと提案したら『おもしろい、そういうの大好き』って。沖縄でのびのび育って東京に来たら、外の世界の広さに委縮するところがあって、それは樹利亜も抱えているものだと軸にしました」
© DCT entertainment
樹利亜の魂の解放が、ほかの女優達との戯曲作りの大きなフックとなっていく。実際、唐田、林田、広山との関係性は深まっていき、自主的な練習時間が積み上げられていったという。
劇中劇『under skin』はイプセンのヒロイン劇を思わせる内容だ。支配力の強い母から美しい姉と比較される、顔にあざを持つ女性の回想録で、抑圧からの脱却がテーマ。
「台詞で印象的だったのは『息というのは、白くて柔らかいものね。この救いのない物語の主人公である私が知った、たったひとつの美しいものだわ』。自分の人生を呪い、姉の死を背負い抱える妹の物語で、死の香りが漂い、肌の下を蝕むインナーチャイルドの話だと思うんです。私は演じる中でインドのカーリーという破壊と再生の女神をガイドにしました。恥も外聞もなく自分の汚物を吐き出すような快感の先に、芸術という光が広がっていた。新しい劇場が衝撃と出合う場になることを願っています」
© DCT entertainment

『Page30』
とあるスタジオに集まった4人の女優。30ページの台本を配られ、わずか3日で自分のものにし、4日目には観客に披露するという。稽古が進むうち、演じることを通して4人が抱えるそれぞれの事情が浮き彫りになる。二流の役者、売れない役者、歌手から転身した役者未経験者。そして迎えた4日目の本番――。音楽を担当した上原ひろみのピアノが、時に不穏な空気を醸し出し、時に救いのよう。
●監督・原案・共同脚本/堤 幸彦
●出演/唐田えりか、林田麻里、広山詞葉、MAAKIIIほか
●音楽/上原ひろみ、中村正人
●2024年、日本映画 ●113分
●製作・配給/DCT entertainment
●渋谷 ドリカム シアターほか全国にて公開中

渋谷 ドリカム シアター
supported by Page30 期間限定オープン!
DREAMS COME TRUEにとって渋谷は特別な場所。ライブハウスから活動を開始し、渋谷公会堂、NHKホール、国立代々木競技場第一体育館と、渋谷を舞台に夢を叶えてきた。今年4月、ドリカムにとっての"聖地"に、音楽、文化、ダンス、食など多ジャンルで企画展開するテントシアターが登場。『Page30』の上映をはじめ、さまざまなイベントを予定。新たな夢が生まれる場所になりそう。
渋谷 ドリカム シアター supported by Page30
開催期間:4月11日~6月1日予定
開催場所:東京都渋谷区渋谷3-7-1 渋三広場 ※渋谷警察署裏 https://shibuyadcttheater.jp/
photography: Aya Kawachi styling: Evi Fujii hair & makeup: Yu Yamai (Bellezza Studio) text: Yuka Kimbara