アール・ドゥ・ヴィーヴルを探して。#4 心と身体が教えてくれる、あなただけの「美学」。そこから始まる新たな旅。

Culture 2024.06.27

フィガロジャポンは、フランスの「アール・ドゥ・ヴィーヴル(Art de Vivre)」という考え方を大切にしています。自分の感性をもとに知恵と工夫を凝らして何気ない日常を楽しくするーー「暮らしの美学」とも訳されるこの考え方は、国を超えて、すべての人の中にあり、その人の生き方を豊かにするものです。

そんなアール・ドゥ・ヴィーヴルについて、プロフェッショナルコーチの畑中景子さんと一緒に考え、4回にわたって連載してきた「アール・ドゥ・ヴィーヴルを探す旅。」人生を豊かにしてくれる、あなただけのアール・ドゥ・ヴィーヴルを見つけるヒントとは?

▶︎#1. あなただけのアール・ドゥ・ヴィーヴルの見つけ方。
▶︎#2. 眠っている「自分の本心」を目覚めさせる方法は?
▶︎#3. 美学のある人になるために、必要な「勇気」とは?


新しいことを試している自分を祝福する。

文/畑中景子

前回までに、アール・ドゥ・ヴィーヴルは人それぞれのものであること、それを見つけるために自分が喜ぶ感覚に素直になって選択し行動することを伝えてきました。実際にやってみて、何を感じ、何を発見していらっしゃるでしょうか。

最終回は、まず「祝福」から始めたいと思います。

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ここまでの3回の記事を読んで、もしお誘いしたことに取り組んでくださっていたなら、何かしら新しいことを試されたと思います。自分の声を聴くこと、自分の感性で選択すること、踏み出して行動すること、どれひとつをとっても、決して簡単なことではありません。

自分の響きを大切にして生きていくことは実は楽なことばかりでもありません。誰かが決めてくれたものに従うほうがよっぽど楽です。自分のアール・ドゥ・ヴィーヴルに出会うべく、自分の道を歩き始めたことを大いに讃えて、労ってあげてください。

私たちは、自分自身にいちばん厳しかったりします。何かをすれば、できたことよりもできなかったところにまず目が行き、人から褒められたことはすぐに忘れてしまうのに厳しいフィードバックはずっと忘れず持ち続けたりします。どこまで頑張っても、自分に「まだまだ」と鞭を打ちます。

それは成長への原動力であり、自分はもっとできるはずだという自分への期待の表れでもあります。一方で、それが過ぎると、いつまでも幸せを感じられず、自信も持てないといったことも起こります。

この連載中のことだけではありません。日ごろ頑張っている自分を自分でしっかり認めてあげましょう。仮に思ったような成果が出ていない時も、不器用に試行錯誤をしている自分を許して、挑戦していること自体を祝福してあげてください。

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アール・ドゥ・ヴィーヴルは心と身体が知っている。

短い連載の中ではお誘いできることも限られていましたが、これを機にみなさんのアール・ドゥ・ヴィーヴルを探す旅が始まったり、前に進んでいたりすればうれしいです。

「私のアール・ドゥ・ヴィーヴルはこれ!」なんてまだ言えない? それはそうかもしれません。焦らなくて大丈夫です。言葉になってないからといって、あなたの中にアール・ドゥ・ヴィーヴルがないわけではありません。今回開き始めたあなたの感性が、ここからあなたをガイドしてくれます。それに身を委ねてみてください。

アール・ドゥ・ヴィーヴルは、どう生きるかということそのもの。
いちばん大切にしてほしいのは、自分に素直になって、人生を心から楽しむことです。

あなたが、愛したいものを愛し、自分を満たし、自分を喜ばせている時、言葉にはならなくても、心と身体は感じるはずです。「ああ、私はこういうことを大切にしたい人間なんだ」と。

その感覚を頼りに、暮らしの方向を選んでいってください。日々、その経験を積み重ねていく中で、次第にあなたのアール・ドゥ・ヴィーヴルが、自分にも周りにも見える形で現れてきます。あなたが歩いたところに道ができていくように。

あなたが惹かれるものは、実はあなたがもともと持っているものでもあります。踊るのが好きならば情熱が、森を流れる川が好きならばその清らかさが、あなた自身の中にあります。あなたが惹かれるものは、あなた自身の中にあるそのエッセンスを開花させてくれるものでもあるのです。

自分の感覚を信じてあげましょう。歩いた道を振り返ってみて、これが私のアール・ドゥ・ヴィーヴルだ、と言葉になる日も来るかもしれません。

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「美学」を見つけるための、3つのヒント。

この先も、みなさんのアール・ドゥ・ヴィーヴルを探す旅は続きます。その時のためのヒントをいくつか紹介して、この連載を閉じていきたいと思います。

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1. 自分を開く。

まずひとつは、自分を開く、ということ。

人は多くの場合、いつもと同じ範囲の中で、癖になった思考に基づいて、同じような行動を繰り返しています。それを続けていると、似たようなものにしか出合いません。少しはみ出てみることで、新しいものに遭遇します。

たとえば、いつもと違う道を通ってみる。行ったことのないお店に行ってみる。あまり話したことのない人と話してみる。など。すると、新たなアール・ドゥ・ヴィーヴィルの種を発見するかもしれません。

慣れないことなので、ちょっと居心地が悪かったり、ぎこちなくなったりもしますが、その感覚も含めて楽しんでみてください。ドキドキするならむしろ良い調子。慣れ親しんだ領域を出ている証拠です。

自分への思い込みにも気をつけたいところです。

過去一度の体験だけで、「好きなのはこれだけ」など、決めつけてしまうことはよくあります。状況が違えば感じることは違うかもしれません。その時から自分もまた変わっているかもしれません。わずか数十年生きてきただけで、自分の何がわかるでしょうか。可能性にフタをせず、自分を開いて、何が自分を呼んでくれているか、耳を澄ましてみましょう。

「好きなもの」とは少し違う観点になりますが、どうしても気になってしまうもの、どうしても目に入ってしまうものも、出合うべき何かがそこにある場合もあります

2. "自分は"を主語にしてみる。

次は、"自分は"を主語にしてみることです。

私たちの周りには情報があふれ、それに対する論評もたくさんあります。職場でも、指示をしてくれる人たちがいます。

では、見たもの、聞いたこと、起きることに対して、"あなた自身"は、どう思うのか。どう感じるのか。人が素晴らしいというものにあなたが美を感じないこともあれば、誰も見向きもしないものにあなただけが煌めきを見つけるかもしれません。

アール・ドゥ・ヴィーヴルは人それぞれ。ですから、あなたがどう感じるかが大事です。「あの人がこう言っていた」だけではなく、そこに、自分はどう思うのか、を足すことを練習してみてください。続けていくうちに、自分の感覚を頼りに、自分の意見を持つことができるようになっていきます。

3. 自分を応援する。

最後は、自分を応援することです。

今回見つけたアール・ドゥ・ヴィーヴルの種は、とても繊細です。大切に育てましょう。
他人は、なんの気なしに、人の行動やあり方についていろいろ言います。良かれと思ってしてくれる助言ですら、人の気持ちをしぼませてしまうことがあります。

そんな時に、自分もその他人と一緒になって自分自身を攻撃したり、正したりしてしまっては、膨らみかけたアール・ドゥ・ヴィーヴルの種もまた小さくなってしまいます。あなた自らが、自分自身のいちばんの応援者になってあげてください。ひとりでも味方(つまり、あなた)がいれば、自分自身の支えになります。

ちなみに、私たちも無自覚に人のやる気を削ぐような発言をしているかもしれません。反応的に出てくる「無理じゃない?」など。使う言葉にも気をつけて、人の応援もしてあげられると良いですよね。そうすると、夢を語り合える交友関係が広がっていくと思います。

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いつまでも、旅の途中。

この連載は毎回、「いまはアール・ドゥ・ヴィーヴルを見つける旅の途中だから」というフレーズで閉じてきました。余計な言葉に邪魔されず、宿題を試してみていただきたくて使った言葉ですが、実はこれは、この連載の間に限らないのではないかと思っています。

私たちは、いつだって人生の旅の途中。だから、寄り道も回り道も楽しんでほしいと思います。経験したことは何ひとつ無駄にはなりません。この4回の中で何かが見つかっていればそれは大切にしてほしいですし、そうでなくても、経験しなければ気付かなかったことがきっとあります。それは将来何か形を変えて現れてくるかもしれません。

せっかくの人生、自分としっかり繋がって、存分に生きていかれることを願っています。

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なお、今回は記事という構造上、私から語りかける形になりましたが、もし自分を再発見し、可能性を開いていきたいと思った時には、コーチングという選択肢があることも、この機会に知っていただけたらうれしいです。自分の感性を信じて自分で歩いていけるようになっていくことをコーチングではお手伝いしています。ふたりの対話の中でこそ生まれるものがたくさんあります。自分のほかに自分を応援してくれる存在がいることは、とても心強いものです。あなたがありたいように生きることを応援したいと思っているコーチたちがいることを、ぜひ知っていてください。

またどこかでお会いできることを楽しみにしています。

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畑中景子/ Keiko Hatanaka
プロフェッショナルコーチ、CTIジャパン ファカルティ。プロフェッショナルコーチとして、経営者や起業家を中心にリーダーシップの意識の目覚めと可能性の開花を支援しているほか、世界最大の体験型コーチトレーニング及びリーダーシップ開発機関CTI(The Co-Active Training Institute)にて、ファカルティとしてトレーナーを務める。CTI認定CPCC。国際コーチング連盟認定PCC。INSEAD MBA。ポッドキャスト「独立後のリアル」パーソナリティ。神保町PASSAGE「ここみち書店」店主。
@keikotrottolina

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text: Keiko Hatanaka portrait: Maki Matsuda photography: shutterstock

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