家で楽しむ世界のビール。 #02 造り手の個性が光る、上面発酵のビール16選。
Gourmet 2019.07.03
ビールの魅力はバラエティの豊富さ、と語るのは、ビールを含め、あらゆるお酒に精通する友田晶子さん。前回解説したビールの基本の分類から、今回は最も歴史が古く、銘柄ごとの味わいの違いが際立つ上面発酵のビールを紹介します。
文・選:友田晶子(ソムリエ/トータル飲料コンサルタント)
歴史が古く個性豊かな、
上面発酵のエール。
発酵の際に、酵母が麦汁の上に集まるので「上面発酵」と呼ばれる。比較的高温で発酵期間も短め。原料の風味が感じられ、いずれも香りと味が濃厚で、造り手や土地の個性をより強く感じられる味わいになる。
6世紀頃から普及し世界中に広まった伝統的なビールで、本来はビールではなく「エール」と呼ぶ。色の違いからペールエール、ブラウンエール、アンバーエールなどがあり、苦味の多いのはIPA(インディアンペールエール)と呼ばれる。これは、イギリスから東インド会社にビールが運ばれる際、多量のホップを使用し保存性を高めたため。とても強い苦味が特徴。
小麦を使ったエールはベルギーではベルジャンホワイト、ドイツではヴァイツェンと呼ばれ、いずれも色が白く澱が混じり濁っているのが特徴。またドイツの各都市でもその土地の個性を生かしたアルト、ケルシュなどのスタイルがあり、ベルギーでは修道院で造られるトラピストビールも人気。
黒ビールでスモーキーな風味が印象的なのは、アイルランドのギネスに代表されるスタウトやイギリスの濃厚なポーター。それぞれの個性を生かしたさまざまなグラスも存在するが、香りを楽しみたい時にはワイングラスもおすすめ。ラガーと違い、あまり冷やしすぎずに香りや味をゆっくり楽しみながら飲もう。
また、エールの場合は、のどごしのみならず深い味わいと長い余韻で料理とのペアリングを幅広く楽しめる。ヴァイツェンなど白ビールはクリーム系の料理や魚介のサラダと。コクのあるエールは煮込み料理に。スモーキーなエールは燻製した料理に合わせたい。
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淡色のエールは、華やかな風味と爽快感が魅力。
左から、ヤンドゥリヒトゥ、フランツィスカーナー ヘーフェヴァイスビア、ブリュードック デッドポニークラブ、ガッフェル ケルシュ、常陸野ネストビール ホワイトエール、フラーズ インディア ペールエール
イギリスで生まれたエールの代表的なスタイル、ペールエールや、強い苦味と香りが特徴のIPA、白く濁ったヴァイツェンなど、淡い色のエールは軽やかですっきりした味わい。
(写真左から)
ヤンドゥリヒトゥ(ベルジャンホワイト/ベルギー)
今回紹介するヴァイツェンの中で最も色が濃く、濁りがある。よく泡立ち、苦味は少なく、フルーティでフラワリー。シャンパングラスやワイングラスで。
750ml ¥1,590/ブラッセルズ
フランツィスカーナー ヘーフェヴァイスビア(ヴァイツェン/ドイツ)
やや琥珀色がかった色で、泡はキメ細やか。パンを思わせるイースト香があり、苦味は少なくフルーティ。洗練されすぎない素朴な味わいにファンが多い。
500ml ¥755(編集部調べ)/アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン
ブリュードック デッドポニークラブ(セッションペールエール/イギリス)
ホップとモルトの香りが強いが、アフター(後味)はすっきりしていてとてもフラワリー。苦味のバランスがよく、余韻が長くて、ゆっくり飲めるタイプ。
330ml ¥410/ウィスク・イー
ガッフェル ケルシュ(ケルシュ/ドイツ)
ドイツのケルン特産のケルシュというスタイル。ピルスナーやペールエールのような麦わら色。爽やかな酸味もあり、飲みやすく飽きのこない味。
330ml ¥475(編集部調べ)/大榮産業
常陸野ネストビール ホワイトエール(ベルジャンホワイト/日本)
濁りがあり、黄みがかった色みで、キメ細やかな泡。アフターはすっきりドライ。日本のベルジャン・ホワイトらしく、フルーティすぎない味わいが人気。
330ml ¥400/木内酒造
フラーズ インディア ペールエール(IPA/イギリス)
濃い琥珀色。ホップを大量に使用するIPAとしては苦味は強くなく、IPAが苦手な人でも飲みやすい。ラベルが華やかなので、パーティにもおすすめ。
330ml ¥482(編集部調べ)/アイコン・ユーロパブ
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赤や茶色、濃い色のエールは個性が際立つ。
左から、ジャンラン・アンバー、ローデンバッハ・クラシック、ロシュフォール8、アンカー・リバティエール、ライディーンビール アルト、野老ブラウニー
グラス〈ビールクラシックス〉ビール・チューリップ(2個入り)¥3,240/シュピゲラウ(リーデル青山本店内)
まるでワインのようだったり、和食の出汁など繊細な料理と相性がよかったり……濃い色のエールは味わいも、合わせたいシチュエーションも千差万別!
(写真左から)
ジャンラン・アンバー(ビエール・ド・ギャルド/フランス)
フランス伝統製法による、香り穏やかな琥珀色の熟成ビール。柔らかい口当たりと甘味のある味わいが特徴。肉料理に合わせてひと口ずつ楽しみたい。
750ml ¥1,058(編集部調べ/330ml ¥486もあり)/エフ・ビー・ジャポン
ローデンバッハ・クラシック(レッドエール/ベルギー)
赤みがかった琥珀色で、酸っぱい香り。味も酸味があり苦味は少なく、ブルゴーニュワインのように飲むほどにおいしくなる。魚介料理など、和食によく合う。
250ml ¥478/小西酒造
ロシュフォール8(トラピストビール/ベルギー)
モルトの香ばしさがありクリーミー。アルコール度数が高く、余韻が長くてワイン的。あまり冷やさずに、チョコレートや生ハム、重めの肉料理に合わせたい。
330ml ¥707/小西酒造
アンカー・リバティエール(アンバーエール/アメリカ)
なめらかでクリーミー、苦味もエレガント。アフターに少しフラワリー感がある。アメリカのエールの基本ともいえる味。ずっと飲み続けられる飽きない味。
355ml ¥486/三井食品
ライディーンビール アルト(アルト/日本)
モルトの風味が強いドイツ発祥のアルトというスタイルにしてはすっきり爽快。日本のビールらしく軽やかで飲みやすいので、最初の一杯に飲むのもおすすめ。
330ml ¥496/八海醸造 猿倉山ビール醸造所
野老ブラウニー(ブラウンエール/日本)
香ばしく、苦味は少なくなめらか。所沢の雑木林の間伐材をチップにして所沢の麦芽を燻製、土地の風味を存分に感じられる。タレの焼き鳥など料理と好相性。
330ml ¥580/野老社中
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色が濃くても実は軽やかな、黒いエール。
左から、ギネス エクストラスタウト、ノース アイランド ビール スタウト、バーボンエイジ ミルクスタウト、サミエルスミス タディポーター
グラス〈クラフトビールグラス〉スタウト(2個入り)¥3,780/シュピゲラウ(リーデル青山本店内)
ギネスをはじめとするスタウトやポーターは、色が黒いので重そうなイメージだが、実は軽やかで、何杯でも飲めるスタイル。食前酒や食後酒として、軽食に合わせて気軽に飲んでみたい。
(写真左から)
ギネス エクストラスタウト(スタウト/アイルランド)
黒みの強いブラウン。クリーミーでキメ細かい泡。あっさりしていて、アフターは納豆を思わせる香ばしさ。ハードタイプのチーズ、特にチェダーとよく合う。
330ml ¥314(参考小売価格)/キリンビール
ノース アイランド ビール スタウト(スタウト/日本)
美しいブラウンの泡。温度が上がると香ばしさ、スモーキーさが立ってくるので、あまり冷やしすぎずに飲みたい。ビターチョコレートのような苦味も。
330ml ¥605/SOCブルーイング
バーボンエイジ ミルクスタウト(スタウト/ドイツ)
黒色で泡は立たず、バーボン樽で寝かせた味は樽香が利いてかなり個性的。ウイスキーやポートワインのように、デザートやナッツ、軽いおつまみに合わせて。
250ml オープン価格/廣島
サミエルスミス タディポーター(ポーター/イギリス)
ポーターはイギリス・ロンドンで生まれたスタイル。クリーミーで軽快な泡。スタウトに比べて味は濃いめだが、基本的にはアルコール度数も高くなく軽やか。
355ml ¥464(編集部調べ)/日本ビール
アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン www.ab-inbev.com
ウィスク・イー https://whisk-e.co.jp
大榮産業 http://daieisangyokaisha.com
木内酒造 www.kodawari.cc
アイコン・ユーロパブ www.ikon-europubs.com
エフ・ビー・ジャポン http://fbjapon.jp
小西酒造 www.konishi.be
三井食品 https://mitsuifoods.co.jp/mfp/import/anchor/
八海醸造 猿倉山ビール醸造所 www.rydeenbeer.jp
野老社中 www.yaro.co.jp
キリンビールお客様相談室 0120-111-560(フリーダイヤル)
SOCブルーイング https://northislandbeer.jp
廣島 www.worldbeer.co.jp
日本ビール www.nipponbeer.jp
シュピゲラウ(リーデル青山本店内) Tel. 03-3404-4456
*ビールの購入については上記を参照の上、お近くの酒販店やデパート、オンラインショップなどをご利用ください。
友田晶子 Akiko Tomoda
ワインや日本酒、焼酎、ビール、ウイスキー、カクテルなど、あらゆるお酒に精通するトータル飲料コンサルタントとして、セミナーやイベント、また飲食業界のプロ向けにコンサルティングなどを行う。世界初のバイリンガル日本酒本『世界に誇るー品格の名酒』(ギャップ・ジャパン刊)など著書も多数。2016年より、一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会(通称:SAKE女の会)を主宰。17年、フランスのワインコンクール「フェミナリーズ世界ワインコンクール」名誉会長に就任。
http://www.akikotomoda.com
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