【ニッポンの性】知っておきたい!大病を患ってからの性生活はどうなる? 脳出血に乳がん...実体験で語る、セックス・エデュケーションvol.4。
Lifestyle 2025.11.28
生きていれば、思わぬ病気をすることもある。そんなとき、パートナーとのセックスにどんな変化が起こり、どう乗り越えればいいのか。実際に脳出血や乳がん、ラムゼイ・ハント症候群などの大病からサバイブしたセックスカウンセラーが自身の体験をもとにアドバイスしてくれた。ラブライフアドバイザーのOliviAさんと房中術に詳しい鍼灸師・鰻澤智美さんに、自身も乳がんサバイバーである恋愛コラムニスト・さかいもゆるが訊いた、「病とセックス」の付き合い方とは。
![]()
(左から)インタビュアーのさかいもゆるさん、鰻沢智美さん、OliviAさん。
病のときもセックスも、基本となるのはコミュニケーション
今回の対談メンバーには、全員大病経験者だという共通点がある。OliviAさんは37歳のとき、結婚3ヶ月目にして脳出血に。鰻澤さんは39歳で現在の夫と結婚直前に乳がんと診断され、私自身も50歳で乳がんになった。アラフォー以降、女性が大病を患うリスクはグンと上がる。そして大病を患うと、気持ち的にセックスどころではなくなるし、治療の影響で性欲が減退することもある。手術で見た目が変わることもあるだろう。当然、性生活にも変化が出るはずだ。
さかい:皆さん、大病を経験されているということで、その病気がどんな風にセクシャルなことに影響を及ぼしたのか、その改善策はあるのかなど、悩んでいる方へのアドバイスを伺いたいです。鰻澤さんは私と同じ乳がんサバイバーですが、手術で大変な想いをされたそうですね。
鰻澤:私は腫瘍部分だけを取る部分摘出手術だったのですが、手術で想定よりも身体的な変化が大きく出てしまったんです。手術後に放射線治療に移る予定だったのが電気メスによる火傷のせいで手術痕からずっと滲出液が出て、ドレーンを入れて排出したりしていて。手術後3ヶ月以内に放射線治療をスタートするのが最も好成績というデータがあるのですが、傷が治るまで放射線はあてられないとなって。形成外科に診てもらうと1年はかかると。早く治したいのに、パニックになりましたね。そういうときに自分の感情や状況をパートナーにどう伝えるか。私は職業柄セックスについてパートナーと語る予備知識があったので、それをフル活用していました。
鰻澤さんは、その3年後に今度はラムゼイ・ハント症候群という難治性を患う。
鰻澤:帯状疱疹が顔面神経に出てしまって、左側の顔の筋肉が全く動かなくなったんです。今も実は顔の左半分は麻痺が残っています。自分の身体が動かないとセックスどころじゃないんですよね。だけど私は病気になる前にOliviAさんのもとでセックスを含めたコミュニケーションや「私」を主語にして自分の気持ちや考えを伝える方法を学んでいて、それが活きました。

OliviA:アサーティブなコミュニケーションがいちばん大事、ってやつですね。
鰻澤:はい。病気になってみて、やはりコミュニケーションはパートナーシップの基本だなと実感しました。私が病気になっていちばん辛かったのは、検査や治療法を自分で決めないとならないことだったんです。例えば、遺伝子検査をしたら抗がん剤が効く確率がわかりますよと言われても、じゃあ効く確率が50%だったら私はどうするんだろうと迷うわけです。医師が提示した治療方針をすべて自己責任で選択していかなければならない。そうして行くなかで、例えば再発した場合でもパートナーには「その判断は間違いじゃなかった」と言って欲しいなど、と説明して。
さかい:たしかにそこのコミュニケーション方法がずれていると共に病を乗り越えるのは難しいですよね。特に婦人科系の病気の場合、女性は以前のように性に積極的になれなくなることもありますよね。その辺はいかがでしたか?
鰻澤:人は欠損を愛する部分があると思うんです。だから自分が大切に思っている相手ならば欠損すらも可愛く思えたり愛せるものであるという前提で行動していると、相手もそこまでネガティブに思わなかったりするんです。こういったこともOliviAさんの講座で学びました。
OliviA:「病気と性」というカテゴリーでやりましたね。
鰻澤:もともと性や病気は自分が学んで来たジャンルでもあるけれど、加えてパートナーとのセクシャルな事柄に関するコミュニケーションの取り方をインストールできていたのは大きいですね。結局セックスの問題解決は人と人との問題解決であり、同じ構造なんだなと。
OliviA:ありがとうございます。自分が病気をしたときにも感じましたが、パートナーや看護師さんやお見舞いに来た友人が黙ってひたすら傾聴してくれることの癒し力って偉大なんですよね。人の話をじっくり聞くというのはパートナーとの性的な場でも役立ちますし、弱っている人の話を聞く技術にも通ずる。だから退院したら傾聴を重視した講座を続けようと考えていました。
......ところで私、脳出血で緊急搬送されてその後脳梗塞になり手術して退院したんですけど、入院中に性欲が高まったんですよ。

さかい:そんなこともあるのですね!
OliviA:はい、何かもう、「誰かiroha(女性用のセックストイの名称)持ってきて〜!」って思うくらい(笑)。
鰻澤:まさか入院患者がそれを欲しているとは誰も思わない(笑)。
OliviA:だけど身体中に心電図や点滴の管だらけだったから、気分が高揚するようなことをしたら、異変を察してすぐ看護師さんが来ちゃう。だから、こそこそ性的空想を膨らませていました。
さかい:面白い! 人間って生命の危機を感じると性欲が強まるって言いますもんね。
OliviA:男性はよく聞くけど、女性の場合もあるのかな? でも脳出血したあとはあまり興奮してはならない。退院してセックスを再開したのは、少し経ってからでしたね。
---fadeinpager---
回復後のセックスの再開と変化

さかい:どうやって再開したんですか?
OliviA:回復してきて、夫とそろそろセックスを再開しましょうかという話し合いは、自然にできました。出血してから3年間経過観察して安定してきたときに、最後のチャンスだと思って妊活を始めたんです。41歳のときでした。
OliviAさんはその後、不妊治療を経て自然妊娠。2022年に第一子を出産している。
さかい:鰻澤さんは、手術のほかに放射線治療もされていますよね。見た目の変化が性生活に影響を及ぼすようなことはありましたか?
鰻澤:放射線治療で照射した場所の皮膚が色素沈着で真っ黒になったんです。人によって、その治り方は違うと思うのですが......。
Olivia:黒くなるというのは火傷? 痛いんですか?
さかい:日焼けっぽく沈着するのですが、熱さや痛みはなかったですね。私は「言われてみれば少し色が違うかな?」程度でした。
鰻澤:私は結構黒くなってしまったのですが、一定期間過ぎてから再発の確認作業で触るのも大事だったりして。顔用のオイルをたっぷり刷り込んでマッサージしてたら、かなり時間が経っていたにも関わらず色素沈着が消えて、いまでは左右差はないです。
さかい:セックスのときに気になってしまうようなことはない?
鰻澤:手術をして胸は一部抉れています。でも、それは触られる際に違う方のバストに誘導するなどの工夫をしてますね。相手が触れることを躊躇することもありますし、そういった場合も自分から誘導したりも。
---fadeinpager---
病気と向き合い、戦うために

さかい:私はいまホルモン治療でエストロゲンを抑制するタモキシフェンという薬を飲んでいて性欲がだいぶ消えたのですが、そういった感覚はありますか?
鰻澤:私の場合はそれは感じないですね。私の患者さんでは更年期障害のようなうつ症状の副作用が出ている方がいらして、メンタルに影響が出る方は結構しんどそうでした。
さかい:そうなんですね、私はメンタルには一切影響は出ていないんです。こうして伺ってみると、薬の副作用は本当に個人差がありますよね。
鰻澤:あとね、私は自分で乳がんに気がついたのだけど、最初のクリニックでは検査で問題ないと見落とされ、1年後に行ったクリニックで陽性がわかったときも細胞診を2度失敗されたり、入院した病院でも手術の日に主治医が急に辞めてこなかったり。失敗が多いかったんですよね、クリニック選びを含めて。
さかい:!!
鰻澤:幸いなことに周囲に医学知識のある方が多いので何とかフォローアップできたけれど。病院自体の評判ではなく、誰にみてもらうか、誰に手術してもらうかがすごく大事だと思いました。
OliviA:本当にそう。安心して治療できるかどうかは、ドクター選びが大きいと思いました。私は自力で勉強会に行ってみつけました。他の病院も回ってサードオピニオンまで求めましたし。最終的に、勉強会で小児の執刀医もしていて親子からとても慕われているドクターを選びました。子どもの命を託されるのは本物だな、この先生にお願いしようと。
鰻澤:あとは紹介や、身内がいるならひと言口添えしてもらうとかも、全然違いますよね。
---fadeinpager---
パートナーとの性生活を維持するために意識していること

さかい:私の場合は50代になってから乳がんになったけど、これが20代、30代だと恋愛や結婚、出産もまだまだこれから。だから病気になってもこうやって回復して、パートナーと乗り越えられるんだと知ったら、すごく励みになると思うんです。
OliviA:私なんて、緊急搬送だったから、オムツ姿を結婚3ヶ月の夫に見られているんですよ。尿道カテーテルを入れるしもう全部見られている(笑)。そこで、生理的な排泄に対して恥じらいはなくなったなという感じですね。私は普段から性のことや生理のことも話せていて、入院中に夫にナプキンを買いに行ってもらったこともあるんですけど、パートナーに生理を隠しているような女性だったらそこで葛藤があったり大変なんじゃないかなと思います。だから日頃から何でも話せる関係にしておくのは大事。
さかい:私は前の結婚の反省から、見せ過ぎてしまうと男女として見られなくなるのが怖くて......。だからOliviAさんがオムツ姿を見られても夫婦生活が継続しているのはうらやましいです。
OliviA:いまもインパクトとしては残ってるみたいですけどね。夫婦としてひと山超えた感じなんじゃないですか。ただ、相手の性的に幻滅するポイントと興奮するポイントは押さえておいた方がいいと思うんです。お風呂上がりに裸でウロウロして欲しくないのかとか、彼の好みの下着とか。そういうのを把握して使い分けていますね。相手のために、自分が好みでない下着を着けたりもしますし。
さかい:なるほど、そういう努力もされているんですね。
OliviA:努力というほどでもないですよ、パンツを買っているだけだから(笑)。でも相手が嬉しそうだから穿く。自分の経験の中で、こうすると相手も喜ぶ、性生活も維持できる、という成功体験があるならそれは取り入れて行った方がいいですよね。
鰻澤:さっきの欠損の話じゃないけれど、見せる側も「これをやったら嫌われちゃうかな」ではなくて、「オムツプレイもいいもんでしょ」と言えちゃうくらい、強気に思っておくと良い気がします。それで女性としての魅力が落ちるわけではないのだから。やはり、OliviAさんのセクシャルカウンセリングで身につけたコミュニケーション法や心理学がここでも活きていますね。あれは人生の様々な場面で応用が効く、本当に役立つ知識。パートナーとともに病を受け入れ前向きに進んで行くために、とっても有益なコミュニケーションの基礎となるものだと思います。
OliviA:そんな風に生かしてくださっていて嬉しいですね。私も病気になったことでタッグを組んで、人生の荒波を越えている感。ライフパートナーとしての絆の太さが強化された気がします。
---fadeinpager---
寄り添い、ともに戦うパートナー選びとは

編集部:おふたりの話を伺っていると、パートナー選びに成功されていると感じました。一緒に戦ってくれるパートナーというのは、コミュニケーションのなかで培って行ったのか、それとも元々できた人間性の人を選んだのか、どちらですか?
OliviA:私は完全に、素養のある人を自分で選びましたね。29歳のときに脳血管障害の難治性の病だと判断されたので、病気で倒れたとしてもサポートしてくれる人。さらに性の話もできて仕事も応援してくれる人を条件に探しました。
さかい:セックスカウンセラーというお仕事の話は、最初からされていた?
OliviA:私の職業を知っている友人の紹介だったので最初から知っていましたが、性の話に引いたり、逆に前のめりになる男性ではなかったので、職業のことよりは、田舎から出てきて人脈もないなかで本を出版して活動していることがすごいねと、いち発信者としてがんばっていると捉えていてくれたみたい。
さかい:素敵な人! 鰻澤さんはいかがですか?
鰻澤:私は男性選びがあまり得意ではない自覚があって、周りの人たちに「私に合いそうな人はいませんか」と頼って、紹介してもらいました。そうしたら、すごく合理的な男性だったんです。それまではエキセントリックでダメな人ばかり好きになっていたのですけど。一緒に住む話をした時に、もし一緒に住んでみて上手く行かなかったらどうしようと言ったら、そのときは同じマンションの隣の部屋に住めばいいじゃないですかと返ってきた。問題が起きたら別れるじゃなくて、少し距離を持って問題解決すればいいという考え方に、「いいじゃない」となった。それが決め手だった気がします。ずっとそのまま、そういう感じのコミュニケーションが続いています。
さかい:鰻澤さんは39歳、OliviAさんは37歳で結婚。おふたりとも世間的にはいわゆる晩婚なんですね。
OliviA:36歳で婚活を始めて、出会って1年以内の37歳で結婚しました。結婚と妊娠出産をスピーディにできる人を探していて12月に出会って、翌年11月には結婚式あげていましたね。それで42歳で出産。
さかい:私の周りでも30代後半で結婚して40歳くらいで出産という女性が多いです。ところでOliviAさんにとって、セックスはどういうものですか。
OliviA:セックスは、肉体の接触の喜びを享受する行為だと思っているんですよ。だから痛いとか辛いと感じるセックスは好ましくない。生きててよかったという体験ができるのがセックス。そういう経験が、人生に一度でも二度でもありますようにと願いながら、情報発信しています。
ラブライフアドバイザー/日本性科学会会員
2001年よりセクシュアリティやジェンダーの調査研究を始め、2007年から性に関する総合アドバイザーとして活動。メディア出演、執筆、講演、カウンセリング、商品開発など幅広い分野で、「女性のセクシュアルウェルネス」や「コミュニケーションを重視した性生活のあり方」を提案している。オンラインで好きなときに受講できる講座もオープン。著書は日本・台湾で出版。近著「セックスが本当に気持ち良くなるLOVEもみ」(日本文芸社)
公式サイト:https://olivia-catmint.com/
インスタグラム:@oliviacatmint
鰻沢智美
鍼灸師。古代中国で皇帝が世継ぎを作るために実践していた「房中術」に精通、GINZA Webで東洋医学と性についての房中術コラムを連載。太極拳やヨガなどの身体機能を高める指導と、漢方や鍼灸などの東洋医学を融合させた施術が評判。
さかいもゆる
恋愛コラムニスト。アラフォーでバツイチになり、以降、自身や取材の経験を活かした恋愛&セクシュアル・エンパワーメントコラムを執筆。多数の女性誌&モード誌で連載を手がける。Xアカウント:@batsui1teacher
【ニッポンの性シリーズをもっと読む】
photography: shutterstock text: Moyuru Sakai











