海が見える平屋をリノベーション。自然とともに生きる、外国人カップルのセカンドハウス。

Interiors 2025.08.13

日本に暮らすことを選んだ外国人カップル。彼らの選ぶ家具やインテリア、生活道具に垣間見えるのは、和へのリスペクトと愛情だ。こだわりの住まいから、美しい暮らし方を再発見したい。


フィリップ・テリアン & ジゼル・ゴー
TFC代表、DAMDAM共同創業者

自然に寄り添う無駄のない暮らしは、
心を整える特別な魔法。

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杉本博司の石の作品の端材を中庭の飛び石に。ふたりで植えた木々は驚くほどの成長を見せている。

トンビの高らかな声が響き渡る三浦半島。複雑に入り組んだ湾の絶景を見下ろす岬の先端にPR会社を営むフィリップ・テリアンとパートナーのジゼル・ゴーのセカンドハウスがある。戦後すぐ、アメリカ人ジャーナリストが日本の住宅を参考に設計をした邸宅は、25年以上も放置され朽ちかけていた。岬という立地と内装の可愛らしさに惚れ込んだふたりは、建築家にリノベーションを依頼。潮風から建物を守るため増築し、中庭を囲むL字型の平屋が完成した。

「日本の平屋は、カリフォルニアのミッドセンチュリー建築にも通じる雰囲気だと思います。海外のオブジェや立体作品と、とても相性がいいんです」

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木と白壁の組み合わせが美しいダイニング。ゲストを招き食事を振る舞うことも多いという。

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もともと屋外だった場所を潮風から躯体を守るため増築した部分。縁側のように大きなガラス戸を通して暖かい光が降り注ぐ。

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壁を取り払い、さらに欄間を抜いて広がりを持たせた住まいには、北欧のデザインチェア、インドのラグ、ベルギー製のソファなど、世界を巡る彼ららしい多国籍の品々が調和している。持っていた家具やリメイクしたものが中心だが、唯一この家のために購入したのが昭和初期の水屋箪笥だ。コーナーにぴったりと収まるふたつの箪笥には、日本各地で買い集めたうつわがいくつも収納されている。そんな食器のコレクションからもわかるように、フィリップは食の時間を何よりも大切にしている。

「この家は辺鄙な場所にあるから、庭で育てた野菜を使って手作りの食事をしたいんです」

日本の古道具や調理道具を活用しながら、朝はパンを焼き、スパイスや発酵調味料も手作りするフィリップ。ジゼルが摘んだハーブでお茶を淹れ、焼きたてのブラウニーをゲストに振る舞う姿は、東京で働く経営者の姿からは想像ができない。

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日本の古道具が並ぶキッチン。壺は高菜漬けや根菜の保管に使用。リサイクル瓶には手作りの調味料。

「こんな暮らしがしてみたかったんです。パリの郊外で暮らしていた幼少期、おばあちゃんがパンを焼いてくれ、従兄弟たちが食べられる雑草を教えてくれた。そんな思い出が蘇ります」

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庭仕事をする中で、レモングラスやシソなど、調理が追いつかないほど成長する香り高い植物に着目したふたり。それらを処分するのではなく、何か活用できないかと考えて研究した先に辿り着いたのが、2018年から手がけている自然派コスメDAMDAMだ。

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この家での暮らしが大きなヒントになって生まれた、自然派コスメDAMDAMも彼らの日常に。

「日本の住宅やデザインはコンパクトでシンプル。自然とともに生きる日本の暮らしや精神も、コスメに落とし込めたらと思いました。東京での忙しい心はいつも、この家の静けさに癒やされています」とジゼル。

テーブルやキッチン、洗面台などあちこちに置かれた野草を挿した小さな花瓶こそ、彼女の慈しみの心の表れだろう。

「コントロールできない自然の強さを感じられることも、この暮らしの醍醐味!」と、庭先で笑うフィリップ。質朴さを豊かさだと感じられるふたりとともに、岬の家は微笑んでいる。

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Philippe Terrien(左)
フランス生まれ。約30年前に来日し、東京でPR・コンサルティング会社を経営。2018年より、パートナーのジゼルとともにスキンケアブランドDAMDAMをスタートした。
https://damdamtokyo.com/

Giselle Go(右)
フィリピン出身。シンガポール版「ハーパーズ バザー」の編集長を経て、来日。フィリップとともに国産の植物を用いたコスメティック、DAMDAMを手がける。

日本らしさに魅せられた、外国人の住まい。

フレンチヴィンテージが溶け込む、
時を重ねた昭和初期の古民家。

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日本人の手仕事に魅了され、
感性を暮らしに取り込む。

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*「フィガロジャポン」2025年7月号より抜粋

photography: Akemi Kurosaka text: Miki Suka

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