外国人フォトグラファーが魅せられた日本の手仕事と、暮らしの感性。
Interiors 2025.08.14
日本に暮らすことを選んだ外国人カップル。彼らの選ぶ家具やインテリア、生活道具に垣間見えるのは、和へのリスペクトと愛情だ。こだわりの住まいから、美しい暮らし方を再発見したい。
ノーム・レヴィンガー
フォトグラファー
日本人の手仕事に魅了され、感性を暮らしに取り込む。
和箪笥の中に日本各地で集めた豆皿を収納。
東京・代々木の閑静な住宅街。イスラエル人のノーム・レヴィンガーの住まいは、香り高い花々が咲き誇るガーデン付きのマンションだ。現在、フォトグラファーとして活動する彼は、アート関連の仕事に就くパートナーと8年前、スーツケースだけを携えて来日したという。
「日本全国を旅しながら、ふたりが好きなものを少しずつ集めていきました」
「鬼は外、福は内」を陶器のぐい呑みで表現。テキスタイルのオブジェはタマー・モーゲンドルフ作。
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優しい光が届く室内には、ツツジの花が飾られた一輪挿しや骨董のうつわが並べられた和箪笥がある。大切なものだけを収めたというガラスのキャビネットには、若手からベテランまで日本の作家が手がけた食器や茶器など、玄人受けするような珍しいものばかりが並ぶ。イスラエルの大学で美術史を研究したノームにとって、日本の手仕事に触れることは、"日本とは何か"を追求し理解する行為だ。
お風呂場には木桶と木の椅子。ふたりは日本の生活道具を使うことに喜びを感じている。
骨董市で見つけた戸棚は引き違いの扉部分に細かな刺繍が施されている。窓を飾る大分の美術家・宮崎勇次郎の作品や、戸棚に置かれたニューヨークのテキスタイルアーティスト、タマー・モーゲンドルフのモダンな作品が空間にマッチ。
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「来日したばかりの時に好きだった"日本らしさ"は、いま思えばとてもポップなものでした。それが次第に、深い日本の精神に興味が湧いてきました。より渋いもの、歴史を感じる骨董品や民芸品など、異邦人の僕らでさえ守っていきたい尊いものだと感じるようになりました」
ノームは、4人の友人たちとともに日本の手仕事との出合いをまとめた「職人クロニクル」という動画番組を制作している。ふたりの暮らしを彩る日本の道具の数々は、週末この家に集まるクリエイティブな友人たちと同様、居心地の良さと知の刺激をくれる存在なのだ。
ともに暮らしているパートナーは、日本の手仕事やうつわを愛するあまり金継ぎを習得。
イスラエル生まれ。テルアビブ大学美術史科卒業後、ラジオの構成作家に。2017年よりパートナーと東京に移住。現在写真家として2度の個展を開催、メディアや広告の分野でも活動する。お気に入りを収めたガラス棚の前で。
https://www.noamlevinger.com/
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*「フィガロジャポン」2025年7月号より抜粋
photography: Noam Levinger text: Miki Suka