ウイルスと闘う世界のいま。#11 危機を乗り越えるための、ソウルのさまざまな取り組み。

Travel 2020.04.11

文・写真/鄭 慈卿(在ソウルコーディネーター)

平凡な日常が恋しくなる毎日です。新型コロナウイルスの拡散を防ぐため、2月中旬から実施中の「ソーシャルディスタンシング(社会的距離を取る)」戦略。ステイホームを心がける生活もそろそろ2カ月目になります。

私は仕事以外の外出を控えていて、プライベートのお出かけは散歩を兼ねたスーパーでの買い物くらい。幸い韓国ではパニック買いが起こっておらず、買い物に困ったことはありません。スーパーのレジで延々と並ぶこともなく、デリバリーサービスもありますので、帰りはつかの間の散歩を楽しむことも。スーパーへは週2回ほど行って、使う分だけの買い物をしています。ネットで注文すれば次の日に届けてくれるオンラインショップも発達していて、韓国の流通システムの優秀さにも助けられています。人々の間には、買い占めはよくないという意識が高まっています。

200409-03delivery02.jpg近所のスーパーで買い物をしてデリバリーサービスを頼みました。スーパーに行った後、ちょっとパン屋さんも寄って散歩して帰りったところ、私よりも先に荷物が到着。韓国ではお互いの安全のために、デリバリーや宅急便は非対面での受け渡しが多くなっています。

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ただ、3月初旬まで約3~4週間くらい「マスク大乱」を経験しました(品切れが続出し、不当な値上げも起こった)。政府が公表した「公的マスク5部制」で生産量を上げた結果、いまは混乱が収まっています。公的マスクは、どのブランドも同価格に設定し、全国民に週に1回2枚ずつ販売。生まれた年の4桁目が1と6は月曜、2と7は火曜、3と8は水曜、4と9は木曜、5と0は金曜に購入できます。土日は平日に購入できなかった人が生まれた年とは関係なく購入できます。現在は、販売量を3~4枚ずつに増やす話も出てくるほど供給は安定してきました。

マスク大乱が収まった裏には、人々の意識も一役買ったように思います。公的マスクの販売が開始された歳、「私はマスクを買いません!」というチャレンジがSNSで流行りました。本当に必要な人の手に渡るように譲ってあげようというチャレンジで、不急の人は事態が落ちついてから買えば大丈夫という考えが広まりました。ボランティアで布マスクを作って配るなど、自分ができることをやろうという人々が多くいます。

200409-mask.jpg薬局で販売している公的マスク。週に1回2枚、自分の生まれた年に当たる曜日に買えるシステムです。

200409-drugstore.jpg薬局の前では公的マスク5部制を分かりやすく丁寧に書いてあります。韓国に住むの外国人は健康保険証があれば購入できます。10歳以下の子ども、80歳以上の高齢者、妊婦、障碍者の分は家族が代理で買えます。

200409-maskapp.jpgマスクの在庫は携帯アプリやネットで調べられます。緑は100個以上、オレンジは30~99個、赤は30個以下、グレーは品切れ。入手可能ないちばん近い薬局がわかるので、私もマスクを買いに行く前に必ずチェックします。

200409-mask02.jpg手作りのマスクも人気で、キットが販売されています。中には使い捨てのフィルターを入れるため、通常の布マスクより安心して使用できます。公的マスクは週に2枚ですが、余分の布マスクがあれば十分という考えがあります。こちらは、姉がキットを買って作ってくれたものです。

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ほかにも少しだけ、独自の対策を紹介します。

ひとつが、中央災難案内対策本部から発送される安全案内メッセージというシステム。近所で感染者が発生したなど、新型コロナウイルスに関する新しい情報をスマホ(普通の携帯にも)に発信するものです。これは登録制ではなく、携帯を持っている全国民に自動的に発信されます。内容は、基本的な予防ルールに加えて、自分の住んでいる区と隣りの区の情報だけが送られます。区役所のホームページにアクセスすると、感染者のたどった経路――地下鉄の路線やバスの番号など――が時間を含めて記されています。そして感染者が寄った場所の防疫を済ませたのかの確認もできます。

また、病院や会社だけではなく、公園の中、スーパーのレジ、マンションのエレベーターにはアルコール消毒ジェルが設置されています。感染予防のためにとても助かるアイテムです。外ではすぐ手洗いができないこともありますが、買い物のカゴやエレベーターのボタンなどが気になる場合、すぐ使えるんです。

200409-alcohol.jpg散策路の入り口、スーパー、マンションのエレベーターなどさまざまなところにアルコール消毒ジェルが設置されています。

いつも混んでいる明洞は、買い物客も少なく、売り上げが激減している店舗が多いようです。観光客にとっての明洞名物、屋台も休業中です。まるで旧正月や旧盆のような雰囲気に変わりました。

200409-myongdong-01.jpg写真は、明洞の近所に住む友人が先週末に撮ってくれました

多くの人がコロナブルーに陥るなか、マスクに付かないメイクアイテムや、ジム代わりのホームトレーニング用品が売れています。ずっとマスクを着用したままだから、最近アイメイクしかしてないという声も聞こえます。自宅にいる時間が長くなって太った、という悩みを持つ女性が多いですが、「確診者(確実診断者=感染者)」と「急に太っちゃった人」の韓国語の発音(ファッチンジャ)が同じため、インスタのハッシュタグで「ファッチンジャ」が流行ったりも。こんなちょっとしたトレンドが、大変な日々を少しの間、忘れさせてくれます。

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texte et photos : JA-KYUNG JUNG, title photo : alamy/amanaimages

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