ウイルスと闘う世界のいま。#10 「大家族の日曜飲茶」はしばらくお預け。

Travel 2020.04.09

文・写真/甲斐美也子(在香港ジャーナリスト)

香港で新型コロナウイルスの感染者が出たのは、本来ならおめでたい旧正月直前の1月後半でした。昨年から政情不安で観光客が激減し、経済がすでに打撃を受けていたところだったので、香港にとっては大変な追い打ちになってしまいました。

いっぽうで「さすがSARS(重症急性呼吸器症候群)経験者」といえる、香港の人たちの自衛意識の高さには感心させられています。感染発覚ごく初期からマスク着用率はほぼ100%。実はコロナとは関係なく、SARS以降、商業ビルやマンションのエレベーターのボタンに透明なカバーが付けられ、2時間ごとに殺菌されているのが当たり前でした。

学校も1月末の旧正月休暇からずっと閉鎖。ほぼ同時にテーマパーク、公園の遊具などの施設もクローズに。在宅勤務の導入は各企業が即決するなど、感染を食い止めようという努力が実って、一時は新規感染者がほぼいなくなっていたのですが。

3月に入り欧米での感染拡大により、多数の帰国者が戻り始めると同時に再び感染者が急増。特にお酒の席での感染が多かったことが問題になり、現在すべてのバーが2週間の強制休業に。レストランには「5人以上のグループ不可」「各テーブルの間隔は1.5m以上」「定員の半数までのみ入店可」などの規制がかけられました。

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普段の日曜日なら3倍以上のお客がいる近所の飲茶店。入り口には、今回発令された規制の内容が掲示されている。入店時には検温もあり。

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海老蒸し餃子、叉焼包、腸粉など、こんな時でも出来たての点心が食べられる幸せを噛みしめる。

実はロンドンに留学していた長男も先日帰国。2週間の自宅隔離を終えました。帰国者は全員検査対象となり、陰性とわかりひと安心。いまもイギリスに残っている長女を除く家族全員で自主隔離をしていましたから、隔離開けの日曜日、2週間ぶりに外に出て、家族4人で飲茶に行ってみることにしました。

以前なら日曜日は30分待ちだった近所の大きな飲茶店。がらんとしていてすぐに入れました。やはりテーブルは少なくなっているし、各テーブルは4席ずつ。メニューを見ると、料理の種類が普段の半分かそれ以下に。

「毎週日曜日のランチは三世代が円卓を囲んでわいわい飲茶」という、香港の人たちにとって大切な食習慣は、残念ながら一時中断です。周囲を見ると祖父母と家族の誰かふたりが一緒というテーブルが多かったようです。

皆さんが安心して香港に飲茶を食べに来られる日が戻って来るのを願いながら、香港でも日本でも日々気をつけて、難局を乗り切りましょう。

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texte et photos : MIYAKO KAI, title photo : alamy/amanaimages

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