齊藤工が撮った、弱さや戸惑いを演じきれる人・松角洋平。

齊藤工監督作『スイート・マイホーム』の9月1日公開に向けて、キャストにコメント取材しながら作品の魅力とともに伝えていく活動寫眞館スペシャル。
今回は、主人公清沢賢二(窪田正孝)が家を購入する住宅会社の社員、甘利浩一を演じる松角洋平だ。完成した本作を観て「常にどこか一抹の不安やストレスを感じながら拝見しました」と言う松角。松角が、ふだんの生活の中で恐怖を感じる瞬間とはどんなことか。
「思ってもいないことや良かれと思って言った一言で他人を深く傷つけてしまう時、恐ろしいと感じます。酒を深く飲んだ時とかに、よくそういう失敗をしがちでしたね。酒が好きな方なら一度は経験あると思いますが、翌日午後くらいにふと記憶が繋がりだすあの瞬間は、恐怖以外の何物でもありませんよね。最近は少し酒とうまく付き合えるようになったので少なくなりましたが、そのことがキッカケで疎遠になってしまった人や謝りたい人はたくさんいます。けど、それは酒のせいではなく、自分自身の心の弱さかと、、、」(松角)
と、「家」とは関係のない回答だった。
というのも、松角本人にとって家や家族とは、本作で描かれるような「二面性」のあるものではなく、「いつも応援してくれる家族がいるから踏ん張れていると思います」(松角)とストレートに返答してくれるくらい、エネルギーの源でもある存在なのだそう。

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撮影現場では、齊藤監督の演出に関して、
「役を作る上で必要なスパイスを集めている時のヒントが端的で分かりやすかったです。おそらくそれは、監督が私と同じような作り方をされているからだと感じたし、俳優もやられているからこそ、余計な装飾をなくして伝えられるのではないか、と。そうすることでこちらも限定的にならず豊かな想像が膨らむのだと思います」(松角)と、齊藤の演出の余白について語ってくれた。

母性をどう思うかという問いかけに対し、
「恥ずかしい話ですが、この歳になってようやく愛というものが少し分かり始めた気がします。しかし、いまだに見返りを求めたりしてしまう自分がいたりして残念に思うこともありますが、それらを超越したものが母性愛なのでしょうね。父や母がこの世からいつか居なくなることを思うと喉の奥がキューッと閉まりますが、生きてくれている間に少しでもお返しできればいいなぁと思います。そんなの求めてないんでしょうけど、、、」(松角)
人間の弱い部分への寄り添いや、自身のありかたへの自省を感じられる松角の言葉。「ひと」を表現して見せる職業において、心の中に持っていてほしい熟慮、洞察のある俳優の演技は、観ている者にとって沁みる。

「『スイート・マイホーム』は人の心にあるやましさが巻き起こす物語。齊藤監督から、主人公の賢二からみた印象で甘利役として表現してほしいという演出を受け、迷いがなくなりました。自分に非のある人間は他人も疑い、妬み、恨む。人間って勝手に複雑にしてるのかもしれませんね。物事の本質が分かっている現代人ってどれくらいいるんですかね。そういう意味では、『スイート・マイホーム』は現代社会の利便性や人間関係に対する警鐘をテーマにした作品でもあると思います」(松角)
現代社会への警鐘を内蔵するサスペンスホーミーホラー、と本作を表現する松角に対し、齊藤はどう思うのか。
「海外での上映(特にニューヨーク)は、松角さん演じる甘利を、登場から観客が応援しているムードがありました。しかも"それ"は甘利だけでした。原作では甘利からの物語も描かれていて、個人的には最も愛おしいエピソードでした。兎にも角にも甘利のキャラクターが肝なので、松角さんの素晴らしいアプローチのおかげもあって『スイート・マイホーム』は成立したと思っています」(齊藤)

松角洋平/YOHEI MATSUKADO
1977年生まれ、長崎県出身。チャン・イーモウ監督『The Flowers of War』(2011年)で映画デビュー。その後も舞台・ドラマ・映画など幅広く活躍。主な近作に『無頼』(20年)、『すばらしき世界』(21年)、『燃えよ剣』(21年)、『ハケンアニメ!』(21年)、 『百花』(22年)など。
『スイート・マイホーム』
●監督/齊藤工
●出演/窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、窪塚洋介、根岸季衣、松角洋平ほか
●2023年、日本映画
●113分
●配給/日活、東京テアトル
●2023年9月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国にて公開 
©2023『スイート・マイホーム』製作委員会
©神津凛子/講談社

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齊藤工が映像化した『スイート・マイホーム』、原作者は美しき女性作家・神津凛子。
齊藤工、『スイート・マイホーム』の旅。

TAKUMI SAITOH

ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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