未来を変える女性起業家が団結! カルティエ ウーマンズ イニシアチブが中国・深圳で授賞式を開催。
Society & Business 2024.06.22
社会課題に取り組む女性インパクト起業家を支援するカルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)のアワードセレモニーが、さる5月22日、中国・深圳で開かれた。世界をより良い方向に導いていく女性たちが集った感動的なソワレの様子をリポート。
カルティエ ウーマンズ イニシアチブのアワードセレモニーには、世界から33人の女性インパクト起業家が集まった。©Mao Chung
700人以上の女性インパクト起業家が集うCWIとは?
持続可能なビジネスをとおし、社会や環境によい影響を与える女性インパクト起業家。彼女たちに光を当て、ビジネスの成長とリーダーシップ構築に必要な経済的、社会的、人的なサポートを提供しようと2006年に始まったのが「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)」だ。
CWIのアワードを受賞した起業家(フェロー)はこれまで700人以上。同じ年に受賞したフェロー同士はもちろん、先輩起業家である過去のフェローとの繋がりも生まれ、世界で活躍する女性社会起業家が集う国際的なコミュニティとして発展している。
本年のテーマは、「Forces for Good(世界をよくする力)」。世界各地域から選ばれる9つの「リージョナル・アワード」、テクノロジーや先端科学で課題を解決する女性起業家を対象にした「サイエンス & テクノロジー パイオニア アワード」、社会的に不利な立場にあり、十分な支援が受けられていないコミュニティに対して、アクセスや成果、機会の格差を埋めようと活動する起業家を選出する「ダイバーシティ エクイティ & インクルージョン アワード」の計11のカテゴリーで、33人のフェローが選出された。
フェローたちは5月20日から中国・深圳に集結。授賞式を前に、ビジネススクールのINSEADによる特別セミナーやワークショップを受けたり、各国メディアに対して自分の事業を発表するラウンドテーブルを実施したりして、ビジネススキルやリーダーシップを磨くとともに、仲間同士の交流を深めた。
ラウンドテーブルでは、各国のメディアに向けてフェローたちがそれぞれの取り組みを発表。写真中でマイクを持つエジプトのシャヒラ・ユセフは、エビやカニなど甲殻類の廃棄部分を使った有機肥料を製造する「Chitosan Egypt」を創業。農薬や化学肥料を代替する有機製品が不足するエジプトの小規模農家の課題解決に取り組んでいる。(c)Cartier
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心動かされる、授賞式でのフェローのスピーチ。
そして迎えた5月22日、関係者や地元の学生らが見守るなか、カルティエ プレジデント&CEOのシリル・ヴィニュロンの挨拶でアワードセレモニーがスタート。作家でジェンダー平等の推進に取り組むサンディ・トクスヴィグがホストを務め、2024年のフェローたちをステージに呼び込んだ。
思い思いの華やかな出で立ちでステージに登場したフェローは、サンディとの対談やスピーチをとおして、起業にかける熱い思い、ビジネスを通じて創造したい社会像を自らの言葉で発信した。
司会のサンディ・トクスヴィグ(右)と対談する(右から2番目から)インドで月経課題に取り組むASANのアイラ・グハ、中国で乳がん患者向けのブラジャーブランド「GINGER AH」を展開するエミリー・ユー、ベトナムで100%プラスチックフリーのストローや食器を製造販売するEQUOのマリナ・チャン・ヴー。© Floris Heuer
ルワンダの公立病院への入院食の提供などを通じて、栄養問題の改善と職業訓練・雇用促進を目指すSolid'Africaのイザベラ・カマリザは、自らの起業の物語が「ひとつのサンドウィッチから始まった」とスピーチ。
自らの起業の物語のはじまりについて、力強くスピーチするルワンダのイザベラ・カマリザ。©Mao Chung
「15年前、ベルギーに留学していた時、地下鉄の駅でよく、あるホームレスを見かけました。ある日、彼と会話してみたんです。次の日、彼にサンドイッチを作っていってみました。すると、いつのまにか、私と友人たちは、200人のホームレスの人たちに毎日サンドイッチを作るようになったのです」
その1年後、ルワンダに帰国したイザベラ。ルワンダは国民皆保険をほぼ達成している国だが、公立病院では食事は入院費に含まれていないという。入院患者のために毎日食事を届けるひとりの女性の姿にインスパイアされた彼女は、「すべての人が、毎日、新鮮で健康的な食事にアクセスできるべきだ」と、友人とともにSolid'Africaを起業した。
「小さな行動が、私の人生に大きなインパクトを与えました。小さな行動には、計り知れないパワーがある。私たちはそのことを過小評価しがちです」と話すイザベラは、スピーチを両親のことばで締めくくった。「楽園は住むものでなく、みんなで築いていくもの。楽園は、小さな行動から生まれていくのです」
フランスで食糧廃棄問題に取り組むGREEN SPOT TECHNOLOGYのニーナ・グラヌッチ(左)にエスコートされてステージに登場したアメリカのサンドリエ・ギョレジェ。©Mao Chung
2023年に新設された「ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン アワード」に選ばれたアメリカのサドリエ・ギョレジェは、目の不自由な人にむけたAI搭載の音声ベースのプラットフォーム「BLINDLOOK」を開発。16業界50以上のブランドと提携し、視覚障がいがある消費者がスマートフォンを使って製品やサービスを理解できるようサポートし、外出や買い物を自由に楽しめる環境を生み出している。
「このBLINDLOOKは、私自身だけではなく、世の中の"当たり前"の設計から見落とされた何万人もの視覚障がい者が面している現実を変えるためのもの。(中略)アクセシビリティは、私たちがみなさんに"お願い"して得るものではない。基本的な権利なのです」と語るサドリエ。
「障がいがあることを理由に、誰ひとりとして社会から排除されることのない世界を一緒に創っていきましょう。次世代に『チャンスがあったのに、なぜもっと早く行動しなかったの?』と問いかけられるのを待つのは、もうやめにしましょう」とオーディエンスに向け、力強く語りかけた。
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締めくくりは円陣で。"コミュニティ"を築く意味。
それぞれのパフォーマンスの後、各カテゴリーの1位から3位が発表された。トロフィーの授与には、スーパーモデルとして活躍しつつ、女性たちがコーディングを学べる無償プログラムなどを提供し、ITのジェンダー不平等の解消に努めているカーリー・クロスも立ち会った。
カーリー・クロスはフェローたちが参加するワークショップにも登場。自身と同じく社会をよりよい方向に変えようと活動する33人のフェローたちと親睦を深めた。© Floris Heuer
クロージングでは、ステージ上に33人のフェローが勢ぞろい! 深圳で数日間をともに過ごし、絆を深めた女性たちは互いにハグをして健闘を讃えあった。そして最後には円陣を組み、「We're Incredible!(私たちはすばらしい!)」と声を合わせ、明日からまた別々のフィールドに散らばって社会を変えていく活動を続ける仲間たちに、互いにエールを送り合った。
堅いハグを交わすフェローたち。©Mao Chung
2025年のCWIのアワードセレモニーは、大阪・関西万博でカルティエの「ウーマンズ パビリオン」出展に合わせ、5月22日に大阪で開催予定。従来の授賞式とは異なり、これまでのCWIフェローたちのなかから、事業が大きく成長し、世界に大きなインパクトを与えている起業家を選出するという。
セレモニーのクロージングスピーチで、カルティエのウィンジー・シンは、CWIをとおして「素晴らしい起業家たちが団結することで、よりよい世界が創造されていくだけでなく、ステレオタイプに挑戦し、ナラティブを変化させ、次の世代の新しいロールモデルが生まれていく、そんな大切な瞬間に立ち会うことができるのです」と、そのコミュニティの意義と魅力を語っている。
"当たり前"に挑戦し続け、未来をより良い方向へと導いていくーー。来年は日本で、刺激的な女性起業家たちが集う感動的な瞬間に立ち会えそうだ。
https://www.cartierwomensinitiative.com
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text: Toshiko Fujimoto (madameFIGARO.jp)