いま泊まりたい、日本の最新ホテル＆宿ガイド。#05 斬新な発想で、ホテルから独自のカルチャーを発信。

時代の移り変わりとともに、新たな価値観が生まれるのはホテル業界も同じこと。ユニークな視点で社会貢献を目指すブティックホテルや、上質なシンプルステイを追求するカプセルホテルなど、いまという時代を敏感に察知し、独自のカルチャーを発信するホテルが、日本のホテルの常識を変える。

選：せきねきょうこ

TRUNK(HOTEL)（渋谷）

“ソーシャライジング”の発信拠点となるブティックホテル。

ソーシャライジング――つまり「自分らしく無理せず等身大で社会的な目的を持って生活すること」をコンセプトとするホテルが、2017年5月に渋谷に誕生。「“誰かのために”“何かのために”なりたい」という想いを抱いて生きる人にとって居心地よく過ごせる空間が、ホテルという形で構成された。「“ソーシャライジング”という言葉を打ち出したのは日本初。無理なく取り組める新しい社会貢献のスタイルを示しています。内装デザイン、インテリアともに廃材や再利用したアイテムが多く、館内全体にメッセージ性があります」（せきね）

部屋ごとに異なるコンセプトのアートワークやインテリアを配置。間伐材など環境に配慮したアイテムでソーシャライジングを体現する。上は140㎡の広さを誇る「テラス スイート」。広いテラスにもキッチンやダイニングテーブルを用意し、屋外イベントにも対応。最大8名まで宿泊可。1室￥570,000～（税サ別）

シングルルームからスイートまで、多様なニーズにこたえる客室は全15室。キッチンとロフトを備える「ダイニング スイート」は、料理の腕を振るうパーティにぴったり。82㎡の広さで6名まで宿泊可。1室￥150,000～（税サ別）

ロビーラウンジは、日中はノマドワーカーが利用し、夜はパーティやイベントに参加するクリエイティブな人が集う場に。

ショップでは、人と環境にやさしいオーガニックのお弁当やリサイクル陶器のマグカップなど、日常に溶け込む魅力的なアイテムの購入を通じて、ソーシャライジングを気軽に体験できる。

「環境」「ローカル優先主義」「多様性」「健康」「文化」を基軸に新たな価値観を提案するTRUNK(HOTEL)。地上4階、地下１階で構成される館内には、あらゆる人を受け入れるオープンな空間が広がる。神楽坂にある元料亭をリノベーションして今年8月に開業したTRUNK(HOUSE)も、さまざまな滞在が楽しめる一棟貸しホテルとして注目を集めている。

photos: KOZO TAKAYAMA Courtesy of TRUNK (HOTEL)

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hotel koé tokyo（渋谷）

ファッションと食、音楽が融合する近未来型ホテル。

「new basic for new culture」をコンセプトに掲げるライフスタイルブランドのkoé が、渋谷にホテル併設型の旗艦店を18年2月にオープン。国内外で活躍するクリエイターとタッグを組み、空間からプロダクト、グラフィックにいたるまでグローバルな世界観を持つホテルが実現した。ステイ／ファッション／ミュージック＆フードの3本柱を軸に、日常と非日常が融合する新しい文化を発信。「ゲストルームは茶室の要素を現代的な視点で取り入れており、客室内に離れがある部屋も。シンプルかつ上質な空間で日本のよさを味わえます」（せきね）

茶室をアレンジした客室は、部屋名に洋服のサイズを取り入れている。しっとりとした茶室の風情を醸し出す「Ｌルーム」では、長い小上がりを配置。段差に腰かけると、縁側に座っているかのような感覚に。1室￥110,000～（税サ別）

部屋の中に離れを有する「XLルーム」は、日本家屋との融合がユニーク。眺めのいい大きな窓から、公園通りのスクランブル交差点を一望できる。1室￥250,000～（1室2名、税サ別）

“いま”と“未来”、“日本”と“世界”を見据えてデザインされた館内は、どこを切り取ってもフューチャリスティック。3階ホテルフロアでは、廊下に設置された客室表示のデジタルアートが暗闇に浮かぶ。

宿泊客が利用できるプライベートラウンジも併設。ミニマルな空間で、「The Tea Company」とコラボした日本茶・抹茶、そして日本茶をベースにしたカクテルなど、特別メニューを堪能したい。

1階の「koé lobby」は、代官山のフレンチレストラン「アタ（Äta）」の掛川哲司シェフがプロデュースするベーカリーレストラン。「いまの東京のリアル（＝ニューベーシック）な食」を上質に編集した、さまざまなカルチャーが混ざり合う料理を朝から夜まで楽しめる。

2階にはショップ「koé渋谷店」がイン。ウエア、雑貨などライフスタイルグッズに加え、アーティストとの限定コラボアイテムや、hotel koéグッズも扱う。

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ナインアワーズ赤坂（赤坂）

快適なスリーピングポッドで過ごす、ミニマルな宿泊。

都心における新たな宿泊スタイルの提案を目指して、2009年に京都に1号店をオープンさせたナインアワーズは、全国12店舗を広げるまでに成長。従来のカプセルホテルの概念を覆すグッドデザインのもと、機能的なスリーピングポッドとシャワーのみという、身軽でシンプルな滞在を提案する。なかでもナインアワーズ赤坂では、世界中から訪れるゲストに世界レベルのコーヒーを提供したいという想いから、神保町のスペシャルティコーヒーの店「GLITCH COFFEE ROASTERS」とコラボレーションを組む試みも。「スリーピングポッドに合わせて開発された、マット、枕、シーツ、羽毛布団はどれも良質。ポッド内は狭くても不自由なく快適に過ごせます。まさに宿泊業界の革命的ホテル」（せきね）

部屋という空間概念を捨てて、睡眠とシャワーのみというシンプルステイが現代のニーズにマッチ。滞在は宿泊に限らず、仮眠をとるだけ、シャワーだけという利用も可。

荷物をロッカーに預けたら、館内着に着替えて過ごす仕組み。男女別エリアで清潔感も保たれているので、女性も気兼ねなく宿泊できる。

スリーピングポッド内は、寝返りがうちやすい枕、体圧を分散させるマットレス、軽くて暖かい羽毛布団が、良質な睡眠をサポート。

清潔な共用のシャワーブースは身支度を整えるのに十分な広さ。常備するボディソープ、シャンプー、コンディショナーは、東京の老舗ブランド「TAMANOHADA」を採用。天然素材で作られたシリコンフリーというのもうれしい心配り。

ハンドドリップでブラックコーヒーのみを提供する「グリッチコーヒー ブリュード（GLITCH COFFEE BREWD @ 9ｈ）」のスペシャルティコーヒーを目覚めの一杯に。ここだけでしか味わえない果実感に満ちた繊細なコーヒーを飲めば、幸福感で満たされる。

ナインアワーズ赤坂は18年5月に開業。神田に出店した女性限定のナインアワーズ ウーマン神田も好評だ。

photos: Nacasa & Partners（9h nine hours）

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