北陸の工芸とアートに染まる温泉宿。【石川県・加賀市|花紫】
Travel 2025.04.30
予定を詰め込む旅ではなく、籠って楽しめる場所でゆっくりと過ごす。そんな贅沢な旅のスタイルにいま私たちは心惹かれる。土地が紡いできた文化や伝統に、モダンな美意識を反映したデザイン宿で、豊かな時の流れを堪能するステイを。
花紫
[ 石川県 ]加賀市
2024年10月に完成したアートスイートは140㎡の広々とした空間。窓から見える鶴仙渓を借景に。
工芸とアートに囲まれて、ギャラリー感覚で滞在。
約1300年前に高僧・行基が発見したと伝わる加賀の山中温泉は、この地を訪れた松尾芭蕉も称賛した、日本三大名湯のひとつ。花紫はこの由緒ある場所で、前身の屋号から数えて120年以上続く歴史ある温泉旅館だ。
のれんがかかった風格ある玄関を入ると、静かなギャラリー空間が広がり、加賀市で漆芸作家として活躍する田中瑛子の作品が迎えてくれる。さらに進むと、毎回異なるアーティストにフォーカスしたギャラリーコーナーと茶房。ゲストは最初に、ここでお茶をいただく。SABOEが監修した花紫オリジナルのブレンドティーは、煎茶にレモンバーベナやミントが香り、旅の疲れを癒やしてくれる。
宿ののれんをくぐった先に見える田中瑛子の作品。木目を生かしながら、いくつかの漆芸技法を組み合わせている。
加賀棒茶や茶のカクテルが楽しめる茶房。珠洲焼の湯冷しなど茶器も厳選。
ライブラリーには、デザイン&アートブックが並ぶ。
こちらの茶房やロビーを含め、デザインを担当したのは、食、茶、菓子、工芸、デザインの事業を展開するシンプリシティ。花紫はリノベーションを重ね、2023年にはモダンスイートが、24年にはアートスイートが誕生した。部屋をさりげなく彩るのが、工芸やアート。ガラス作家・佐々木類による、壁に埋め込まれたインスタレーションや、漆造形作家・鵜飼康平による漆のオブジェ......いずれも石川県を拠点に活動する作家だ。
蓄光物質をガラスに混ぜることで暗闇で青く光る佐々木類の照明。壁には鵜飼康平の作品が飾られるアートスイート。
植物をガラスに挟んで焼き上げた佐々木のガラス作品。
アートスイートには半露天の温泉が付く。同室含むスイートはすべて温泉、サウナを完備。
宿の最上階には露天風呂が。別のフロアに大浴場もある。
北陸食材をふんだんに盛り込んだ夜の食事でも、地域の工芸が楽しめる。漆工作家・杉田明彦による漆のテーブルを、九谷焼や山中漆器が彩り、知らず知らずのうちにこの土地に魅了されていく。生まれ変わった花紫は、地域のものづくりのショールームのよう。寝ても覚めても、北陸の美に触れられる上質な空間がここにはある。
夕食は、到着後に料理を選べるアラカルト懐石が好評。この日のお造りはクエ。地酒を含む日本酒ペアリングも用意。
ズワイガニのすり身とカニの身が贅沢に入ったお椀。

Hanamurasaki
花紫
石川県加賀市山中温泉東町1丁目ホ17-1
0761-78-0077
全25室 温泉付き7室、バスタブ付き18室 モダンスイート1室¥91,000~、アートスイート1室¥106,000~(ともに1室2名、2食付き)
https://www.hana-mura.com/
北陸新幹線の加賀温泉駅から車で約15分。駅からの送迎もある。
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋
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立ち寄りスポット
ステイの翌日はココへ!
GATOMIKIO/1 我戸幹男商店直営店
黒をベースにしたシックな空間に、木のニュアンスが映える。我戸幹男商店で販売される山中漆器は、花紫でも愛用されている。
加賀市の山中温泉にはさまざまな工芸品があるが、最も有名なのが山中漆器だろう。町にはたくさんの木工所があり、職人・木地師も多く活躍する。山桜や欅といった木材を使い、ろくろで挽いて作られた漆器は、木目が美しく、しっとり手に馴染む。
明治41年から続く我戸幹男商店では、お盆や食器、繊細なステムが凛とした印象のワイン用漆器までラインナップが充実。日本はもちろん、北欧など海外のデザイナーとタッグを組んだアイテムも並び、山中漆器の可能性を広げている。
GATOMIKIO/1 我戸幹男商店直営店
石川県加賀市山中温泉こおろぎ町二3-7
0761-75-7244
営)9:00〜17:00
休)木
https://www.gatomikio-1.com/
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photography: Tomoko Arai