家族で楽しみながら取り組める、防災ビジネス。【BWAピッチコンテスト2025受賞者インタビュー】
Society & Business 2025.08.20
「思いを言葉に」をテーマにしたフィガロジャポンBWAピッチコンテスト。4回目の開催となる今年は、国内外から過去最多となる約160件の応募を数えた。
7月11日、ポットラック ヤエスで開かれた本選には6人のファイナリストが登壇。その中からプロフェッショナルアワード、ドリームアワード、オーディエンスアワード受賞者に選ばれた、3人の女性起業家の姿勢に触れる。
【BWAピッチコンテスト2025リポート】思いを言葉にして社会を変える、6人の女性起業家たち。
自分で働き方を決められる社会を目指して。【プロフェッショナルアワード:大桃綾子】
▶︎家族で楽しみながら取り組める、防災ビジネス。【ドリームアワード:水野裕子】
医療的ケア者も、エンタメを楽しめる世界を創る。【オーディエンスアワード:上仮屋遥】
Dream Award
自らの経験や感性を生かし、新たな社会課題を提起するビジネスアイデアに贈られる。
水野裕子 (Hiroko Mizuno)
災害から身を守る知識を楽しみながら親子で習得する、
新たな防災コンテンツ。
現役の消防官である水野は、子育てをしながら24時間出動要員として現場に赴いてきた。火災や救急の現場では子どもが亡くなる場面にも遭遇し、胸が潰れそうな経験もした。のちに防災業務に携わった経験から、その重要性を強く意識するようになる。
「事前に防衛しておけば、守れる命はあったのではないか。子育て世代の家族に防災をもっと広めたいと思ったのです」
そこで考案したのが防災キャンプ。停電を体験した我が子が「キャンプみたいで楽しかった」と言ったのをきっかけに、非日常の体験から備えの重要性を実感できるプログラムの開発を思いつく。グランピングから無人島ツアーまで、子どもの年齢や発達段階に応じたコンテンツを企画するほか、地域の農家と協働して保存食を作るピクニック防災も考案中だ。
「さらに全国の消防官のネットワークを作り、彼らと子どもたちとを繋ぎたい。消防官が子どもたちにとってのヒーローになると同時に、彼らにとってのサードプレイスになれば」
米国では、現役の消防官が子どもたちに直接、グレイトエスケープと称した防火・脱出訓練を行うという。水野のビジネスアイデアは、アメリカの消防官と交流したことで生まれた。
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Q1.事業を立ち上げたきっかけは?
消防官として防災教育に関わった経験から、災害大国日本に生きる子どもたちが10年後、20年後にどんな社会を創るのかという課題が浮かび上がってきました。災害はいつかやってくる。遊びの延長で、家族みんなが一緒に防災感覚を身につけられないか、との思いから、ビジネスの立ち上げを考えました。
Q2.賞を受けて今後の目標は?
2026年度に向けてクラウドファンディングを立ち上げる予定です。将来的には企業連携、キャンプメーカーとのコラボ、官公庁のネットワーク作りなど、官民学がともに手を取り合い、防災が日常に自然に備わる仕組みを作りたいと考えています。世界のファイヤーファイターが防災を発信する企画を日本でも実現したいです。
災害時は出動しなければならず、娘のそばにいられなかったという水野。自分で自分の身を守ってほしいと、ホイッスルや飴、テレフォンカードなど、災害時に役立つアイテムをまとめたポシェットを娘に託した。高校3年生になった現在もそのポシェットを携帯する長女は「防災感覚は、自然に身についていると思う」と話す。
Q3.働くうえで大切にしていることは?
自分に正直に生きること、どんな時でも感謝すること。自分の気持ちを正直に話した時に、賛同してもらえたらうれしいですが、違う意見も素直に受け入れたい。人の意見は色眼鏡をかけずに取り入れることで、自分が成長できる。これまでの経験を生かし「助けられる人から助ける人へ」をモットーに事業を形にしたいです。
BWAピッチコンテスト2025 アーカイブ動画 *水野さんのピッチは30:11〜。
*「フィガロジャポン」2025年10月号より抜粋
photography: Aya Kawachi styling support: SOÉJU makeup: Team Athlete Beauty text: Junko Kubodera