FEATUREin PARIS
パリ6区の特徴とは? 治安や観光地、ホテル、カフェ、レストランなども紹介。
2025.10.19
セーヌ川左岸の中心に位置する6区は、落ち着いた環境と歴史的建造物に囲まれたエリア。パリジャンや観光客に人気のリュクサンブール公園やサンジェルマン・デ・プレ周辺の名所をはじめ、美術館やグルメスポットも充実しており、知的でゆったりとした滞在を求める旅行者に最適。そんな6区の魅力を紹介する。
パリ6区の特徴
セーヌ川左岸の中でも特に文学と芸術の薫りが濃く漂うエリア。老舗カフェや書店、ギャラリーが点在し、哲学者や作家、画家たちが愛した街として知られる。落ち着いた街並みと緑豊かな公園が共存し、知的で洗練された雰囲気が魅力。観光だけでなく、文化体験や散策を楽しみたい人にぴったりの地区である。
地理
6区はパリのほぼ中央に位置し、北はセーヌ川を挟んで1区に隣接する。南側は、芸術の街として知られるモンパルナス地区の14区・15区に接し、さらに5区とともに学生街・カルチエ・ラタンを形成する。学問と芸術が交錯する街並みは、パリならではの知的で洗練された雰囲気を色濃く伝えている。
歴史
6区は、中世から知と文化の中心地として発展してきた。特にパリ最古のサンジェルマン・デ・プレ教会周辺は、かつてベネディクト会修道院の一部として形成され、宗教と学問の拠点として栄えた。17世紀以降は上流市民や知識人が居を構え、18~19世紀には文学者や哲学者、画家など多くの芸術家が集う街として知られるようになる。20世紀には実存主義やシュールレアリスムの思想の発信地となり、左岸文化を象徴する地区として現在に至る。
区名と地区
6区の区名は「リュクサンブール(Arrondissement du Luxembourg)」。4つの地区に区分され、「モネ地区(Quartier de la Monnaie)」、「オデオン地区(Quartier de l'Odéon)」、「ノートル=ダム=デ=シャン地区(Quartier du Notre-Dame-des-Champs)」、「サン=ジェルマン=デ=プレ地区(Quartier de Saint-Germain-des-Prés)」からなる。
治安
サン・ジェルマン・デ・プレのカフェやリュクサンブール公園など、パリらしい風景が広がる6区。比較的治安の良いエリアだが、油断は禁物。カフェのテラス席でイスに荷物を掛けたり、テーブルにスマートフォンを置いたままにすると、狙われやすくなる。特に駅前や地下鉄4番線は混雑が絶えず、スリ被害が多いため注意が必要だ。
参照元:在フランス日本大使館国
イベント
「ジャズ・ア・サンジェルマン・デ・プレ」は、毎年5月に開催されるジャズ・フェスティバル。サンジェルマン・デ・プレエリアを中心に、国内外の一流ジャズアーティストや新進気鋭の若手が集い、街全体がジャズの音色に包まれる。コンサートだけでなく、ワークショップやトークイベント、野外ライブなど多彩なプログラムが組まれ、毎年多くの音楽ファンや観光客を魅了している。
パリ6区のおすすめ観光地
左岸の文化と芸術の薫り漂う6区は、サンジェルマン・デ・プレ教会やリュクサンブール公園を中心に、老舗カフェやギャラリー、書店など歴史と知性が息づく観光スポットが点在。落ち着いた街並みの中で、文学や芸術の香りに包まれながらパリらしい時間を楽しめる。
美術館・劇場
名称 | 住所 | 公式サイト | 営業時間 | アクセス情報 | 入場料 |
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ウジェーヌ・ドラクロワ美術館 Musée national Eugène-Delacroix | 6, rue du Furstemberg 75006 Paris | https://www.musee-delacroix.fr/ja/ | 12:00~17:30(土・日曜10:00~) 休:火 |
Saint-Germain-des-Prés駅から徒歩約4分 | 普通料金9ユーロ ※26歳未満の方と毎月第一日曜日および7月14日は無料 |
ザッキン美術館 Musée Zadkine | 100 bis, rue d'Assas 75006 Paris | https://www.zadkine.paris.fr/fr | 10:00~18:00 休:月 |
Notre-Dame-des-Champs駅から徒歩約8分 | 無料 |
ロジェ・ヴィオレ画廊 Galerie Roger-Viollet | 6, rue de Seine 75006 Paris | https://www.galerie-roger-viollet.fr/fr/accueil | 11:00~19:00 休:日・月 |
Saint-Germain-des-Prés駅から徒歩約8分 | 無料 |
ウジェーヌ・ドラクロワ美術館は、19世紀フランスのロマン主義を代表する画家ドラクロワが1857年から亡くなる1863年までアトリエ兼自宅として使用していた邸宅を1971年に国立美術館として開館。館内には代表作『民衆を導く自由の女神』の習作やパレット、直筆の手紙など1000点以上のコレクションを所蔵する。居室は当時のまま保存され、彼がいまもそこにいるかのような空気を感じることができる。
藤田嗣治とも親交があったベラルーシ出身の彫刻家、オシップ・ザッキンの美術館は、彼が画家である妻と暮らした終の棲家を、亡き後パリ市に寄贈されたことで1982年に開館した。2012年にリニューアルされ、6つの展示室のほか、緑豊かな庭とアトリエも公開されている。エコール・ド・パリの中心人物でもあったザッキンは、アフリカのプリミティブアートやキュビズムの影響を受けた作風で知られ、シンプルながら力強さを感じさせる彫刻作品を生み出した。中庭はランドスケープデザイナー、ジル・クレマンによって設計され、静かで美しい空間となっている。
ロジェ=ヴィオレ画廊は、1938年にエレーヌ・ロジェ=ヴィオレによって設立されたフォトエージェンシーに端を発する。夫のジャン・フィシェとともにローラン・オリヴィエ写真店をストックごと買い取り、写真の著作権を管理・販売を始めた。夫妻の死後、パリ市が管理を引き継ぎ、現在は600万点もの膨大なストックの中からテーマごとに厳選された作品がギャラリースペースに展示され、無料で定期的に企画展も開催されている。
広場・公園・商店街
名称 | 住所 | 公式サイト | 営業時間 | アクセス情報 | 入場料 |
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リュクサンブール公園 Jardin du Luxembourg | Jardin du Luxembourg 75006 Paris | https://jardin.senat.fr/ | 7:30~21:30(2週間ごとに異なるのでHPをチェック) 無休 |
Odéon駅から徒歩約6分 | 無料 |
大探検家マルコ・ポーロとカヴェリエ・ド・ラ・サール庭園 Jardin des Grands-Explorateurs Marco-Polo et Cavelier-de-la-Salle | Avenue de l'Observatoire 75006 Paris | https://www.paris.fr/lieux/jardin-des-grands-explorateurs-marco-polo-et-cavelier-de-la-salle-2834 | 8:00~20:30(土・日曜9:00~) | Vavin駅から徒歩約11分 | 無料 |
ボザール通り Rue des Beaux Arts | Rue des Beaux Arts, 75006 Paris | ― | ― | Saint-Germain-des-Prés駅から徒歩約6分 | ― |
リュクサンブール公園は、総面積22ヘクタールを誇るパリ市内で4番目に大きな公園。「リュコ」の愛称で親しまれ、パリジャンの憩いの場としてだけでなく、アンドレ・ブルトンやアーネスト・ヘミングウェイなど多くの芸術家たちをも魅了してきた。17世紀にリュクサンブール宮殿の庭園として造られた園内には、ドラクロワやショパンらの彫像をはじめ100体以上の像が点在し、バルトルディによる「自由の女神像」の最初の作品も見ることができる。子ども向けエリアも充実しており、パリ最古とされる木製のメリーゴーランドも残されている。
2人の冒険家の名を冠した「大探検家マルコ・ポーロとカヴェリエ・ド・ラ・サール庭園」は、1867年に造園されたリュクサンブール公園のすぐ隣に広がる庭園。園内でひときわ目を引くのが「天文台の噴水」。地球儀を支える4人の女性像が印象的で、このブロンズの噴水はナポレオン3世に仕えた彫刻家ジャン・バティスト・カルポーの手によるもので、それぞれが大陸を象徴していると言われている。なぜ5人ではなく4人なのか......答えは、訪れた時に自身で確かめるのも一興である。
1825年に開通したボザール通りは、パリ6区を東西に結び、国立美術学校(École nationale supérieure des beaux-arts)へと至る小径として知られる。通り沿いにはギャラリーや古書店が並び、芸術の気配が漂う。オスカー・ワイルドが晩年を過ごしたホテルも残り、文化の記憶を刻む趣ある通りである。
教会
名称 | 住所 | 公式サイト | 営業時間 | アクセス情報 | 入場料 |
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サン・シュルピス教会 Église Saint-Sulpice | 2, rue Palatine 75006 Paris | https://www.paroissesaintsulpice.paris/ | 8:00~19:45 | Saint-Sulpice駅から徒歩約3分 | 無料 |
サンジェルマン・デ・プレ教会 Église Saint Germain des Prés | 3, Pl. Saint Germain des Prés 75006 Paris | https://eglise-saintgermaindespres.fr/ | 9:30~20:00(火・金曜7:30~、土曜8:30~) | Saint Germain des Prés駅から徒歩すぐ | 無料 |
ノートルダム大聖堂に次いで、パリで2番目に大きいサン・シュルピス教会。ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿を設計したルイ・ル・ヴォーによって17世紀半ばに建設が始まり、その後増改築が繰り返され、18世紀に完成した。映画化された小説『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台としても知られる。教会に入って右手前にあるドラクロワが描いた3作品『天使とヤコブの闘い』『神殿を追われるヘリオドロス』『悪魔を撃つ大天使ミカエル』は必見。世界最大級のパイプオルガンは、毎週日曜のミサで演奏される。
サンジェルマン・デ・プレ教会は、パリに現存する教会の中で最も古く、創建は543年とされる。9世紀頃に一度破壊され、10~12世紀に再建された。現在見られる建物には、当時のロマネスク様式の面影が色濃く残る。その後も修復や増改築が繰り返され、ゴシック様式などさまざまな建築様式が混在しているのも特徴だ。教会周辺には、「レ・ドゥ・マゴ」や「カフェ・ド・フロール」といった有名な老舗カフェもあるので、観光の間に立ち寄るのもおすすめ。
川・橋
名称 | 住所 | 公式サイト | 営業時間 | アクセス情報 | 入場料 |
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サン・ミシェル橋 Pont Saint-Michel |
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セーヌ川にかかるシテ島と左岸を結ぶサン・ミシェル橋は、1378年の木造橋以来、何度も架け替えと修復を経て、1857年に現在の姿となった。橋の側面に刻まれた大きな「N」はナポレオン3世の頭文字で、かつての皇帝の威光を物語る。
歴史的建造物
名称 | 住所 | 公式サイト | 営業時間 | アクセス情報 | 入場料 |
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モネ・ドゥ・パリ Monnaie de Paris | 11, quai de Conti 75006 Paris | https://www.monnaiedeparis.fr/ | 11:00~18:00(水曜~21:00) 休:月 |
Pont Neuf駅から徒歩約6分 | 一般12ユーロ、26歳未満の方と毎月第一日曜日は無料 |
マイン・パリ図書館 Bibliothèque Mines Paris - PSL | 60, Boulevard Saint-Michel 75006 Paris | https://www.minesparis.psl.eu/recherche/partage-des-savoirs/bibliotheque/ | 9:00~18:30 休:土・日 |
Luxembourg駅から徒歩約2分 | 無料 |
マザリーヌ図書館 Bibliothèque Mazarine | 23, quai de Conti 75006 Paris | https://www.bibliotheque-mazarine.fr/fr/ | 10:00~18:00 休:日(夏は土・日)、8月1日~15日は休館 |
Pont Neuf駅から徒歩約8分 | 無料 |
モネ・ドゥ・パリには、864年にシャルル2世によって創立された現在も運営されているフランス最古の造幣局がある。ネオクラシック様式を代表する荘厳な建物は、1775年にジャック=ドニ・アントワーヌが設計したもので、シテ島から望む長いファサードは圧巻。2017年に美術館としてリニューアルされ、特別展示室を備えた美術館と常設博物館「11 Conti」、レストランやブティックも併設する複合施設となっている。
1794年に設立されたマイン・パリ図書館は、1816年にリュクサンブール公園にある旧ヴァンドーム・オテルの一部に移転。かつてヴァンドーム侯爵夫人をはじめとする多くの貴族が暮らした建物で、18世紀当時の煌びやかな建築様式と後年現代的に改築された様子が間近に見られる貴重な存在である。
フランス最古の公共図書館であるマザリーヌ図書館は、ルイ13世およびルイ14世の重臣であったマザラン枢機卿によって設立された。彼の膨大な個人コレクションは、学ぶ意志のある者であれば誰もが無料で閲覧できるよう公開され、1643年にフランス初の公共図書館となった。当時としては画期的な施設であり、知識の共有を象徴する存在である。枢機卿の死後、蔵書はフランス学士院に寄贈され、現在も壮麗な読書室などが残る歴史的な建造物として訪問者を出迎えてくれる。
パリ6区のおすすめホテル
歴史ある老舗ホテルからデザインホテルまで個性豊かな宿が点在。落ち着いた雰囲気の街並みに溶け込み、文化と洗練を感じながら快適に滞在できるエリアだ。
Mandarin Oriental Lutetia, Paris(マンダリン オリエンタル ルテシア パリ)
名称 | マンダリン オリエンタル ルテシア パリ |
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住所 | 45, Boulevard Raspail 75006 Paris |
公式サイト | https://www.mandarinoriental.com/en/paris/lutetia |
営業時間 | - |
アクセス情報 | Sevres - Babylone駅から徒歩すぐ |
宿泊料金 | 1泊2050ユーロ~ |
1910年、高級百貨店「ボン・マルシェ」のオーナーであったアリスティッド・ブシコーが顧客をもてなすために店の向かいに開業した歴史あるホテル。世界各地からボン・マルシェに訪れる目の肥えたお客さまを満足させるために、最高級のものを厳選。アール・ヌーヴォーが主流だった時代にいち早くアール・デコ様式を取り入れセーヌ左岸の象徴的存在となり、ピカソやジャン=ポール・サルトルらさまざまな芸術家たちにも愛された。
時を経て、4年の大規模改装後2018年にリニューアルオープン。建築家ジャン=ミッシェル・ヴィルモットの監修により、歴史を感じさせつつ機能的で現代的な空間に生まれ変わった。全184室、うち47室はスイートで、コッポラやイザベル・ユペール、ジョゼフィン・ベーカーの名を冠したシグネチャースイートも備える。最上階のペントハウススイートからは、パリの街並みを360度一望できるプライベートテラスがある。
ロビーラウンジ「ル・サンジェルマン」でのアフタヌーンティーや10mの大理石カウンターが見事な「バー ジョセフィーヌ」、3ツ星シェフのジェラール・パセダが手掛けるモダンフレンチ「ルテシア・ブラッセリー」など、館内で多彩な体験ができる。左岸で唯一のパラスホテル(5ツ星ホテルの中でも特に優れたフランス最高級ホテル)として、歴史と現代が交差する隠れ家のような滞在を提供する。
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Hotel des Académies et des Arts(オテル・デザカデミー・エ・デザール)
名称 | オテル・デザカデミー・エ・デザール |
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住所 | 15, rue de la Grande Chaumière 75006 Paris |
公式サイト | www.hoteldesacademies.fr |
営業時間 | - |
アクセス情報 | Vavin駅から徒歩約2分 |
宿泊料金 | 1泊302ユーロ~ |
「オテル・デザカデミー・エ・デザール」は、かつて藤田嗣治が滞在し、モディリアーニが最上階にアトリエを構えたことでも知られる、芸術の記憶が息づくホテル。1920〜30年代に世界中の芸術家が集い、エコール・ド・パリを生んだこの地、リュクサンブール公園からもほど近いモンパルナス地区でピカソやマン・レイらと同じ空気を吸い込むことができる。
20室だけの4ツ星ブティックホテルは2021年に改装され、若き建築家デュオ、ステファニー・リゼとラファエル・ユーゴによって、アトリエの温もりを宿す空間に生まれ変わった。客室の天井や扉、レセプションにまで描かれたフランク・ルブラリのデッサンが、ゲストを創造の世界へと誘う。サロンにはアートブックが並び、朝食の皿にも遊び心あるイラストが。芸術家たちの足跡と現代的な感性が響き合う、左岸らしい親密で洗練された一軒である。
Hôtel Dame des Arts(ダム・デザール)
名称 | ダム・デザール |
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住所 | 4, rue Danton 75006 Paris |
公式サイト | www.damedesarts.com |
営業時間 | - |
アクセス情報 | Odéon駅から徒歩約2分 |
宿泊料金 | 260ユーロ~ |
4ツ星ブティックホテルとして、左岸にホテル建つ瀟洒なホテル。1950年代に演劇学校として建てられた歴史的建造物に、ロロ・ピアーナのファニチャーなどを手掛けるインテリア・デザイナー、ラファエル・ナヴォが2023年に大胆なリノベーションを施し、コンテンポラリーシックな空間へと再生。木材を彫刻のように扱い、壁面や床、家具のディテールに至るまでこだわりが宿る内装が印象的である。
全109室を擁し、その3分の1はテラス付きで、ほとんどの部屋からエッフェル塔を望むことができる。ルーフトップバーからはパリの街を360度一望でき、夜景とともに特別なひとときを演出する。地下にはジムやシネマルームが併設され、滞在中の快適性も確保。館内には700点を超えるアート作品が点在し、ホテル全体がまるで小さな美術館のような趣きだ。レストラン「ピンパン」では、ビブグルマン認定を受けた若手シェフ、クレマン・クルトマンシュによるコンテンポラリーなフレンチを提供。木・金・土曜の夜にはライブ・コンサートも開催されている。
パリ6区のおすすめカフェ・レストラン
Les Deux Magots(レ・ドゥ・マゴ)
名称 | レ・ドゥ・マゴ |
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住所 | 6, place Saint-Germain Des Prés 75006 Paris |
公式サイト | https://lesdeuxmagots.fr |
営業時間 | 7:30~翌1:00 無休 |
アクセス情報 | Saint-Germain-des-Prés駅から徒歩すぐ |
1884年創業の老舗カフェ。サン・ジェルマン・デ・プレ教会の向かいに位置し、店名はかつての絹織物店に残る2体の中国人形(マゴット)に由来し、その人形は現在も店内に残されている。20世紀初頭にはピカソやヘミングウェイ、サルトルやボーヴォワールらが足繁く通い、シュールレアリスムや実存主義といった文学・芸術運動の拠点となった。いまも当時の椅子やテーブルがそのまま残り、芸術家たちが議論を交わした空気を感じられるのが魅力だ。1933年には常連客によって「ドゥ・マゴ文学賞」が創設され、新人作家の登竜門として現在も続いている。
朝7時30分から営業し、正午までの朝食ではクロワッサンやオムレツなど伝統的なフレンチブレックファストが楽しめる。ランチメニューは、11時30分から17時30分まで提供され、定番のビストロ料理が並ぶ。パリ文化の象徴ともいえるこのカフェでは、一杯のコーヒーを手に、時代を超えて息づく知と芸術の香りを味わうことができる。
Le Procope(ル・プロコープ)
名称 | ル・プロコープ |
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住所 | 13, rue de l'Ancienne Comédie 75006 Paris |
公式サイト | https://www.procope.com/ |
営業時間 | 12:00~0:00 無休 |
アクセス情報 | Odéon駅から徒歩約1分 |
1686年創業の「ル・プロコープ」は、パリ最古のカフェ。シチリア出身のフランチェスコ・プロコピオ・ディ・コレッティが創業、当時ヨーロッパで広まりつつあったコーヒーやジェラートを提供し人気を博した。
創業から間もなくコメディ・フランセーズが近隣に移転すると、批評家や哲学者、文学者たちが集うサロンとなった。ヴォルテールやルソーらがここで議論を交わし、やがて革命期にはロベスピエールやマラーが足繁く通う。19世紀にはヴィクトル・ユーゴーやオスカー・ワイルドといった文豪までもが集った。
現在はレストランとして営業し、コック・オ・ヴァンや牛ほほ肉の煮込みなど、伝統的なフランス料理を味わえる。数世紀にわたり思想と芸術を育んできた空気が、いまもなお店内に息づいている。
Brasserie des Arts(ブラッスリー・デザール)
名称 | ブラッスリー・デザール |
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住所 | 28, rue Saint-André des Arts 75006 Paris |
公式サイト | https://www.brasserie-des-arts.com/ |
営業時間 | 10:00~翌2:00 無休 |
アクセス情報 | Saint-Michel - Notre-Dame駅から徒歩約1分 |
サンタンドレ・デザール通りとジ・ル・クール通りが交差する角に誕生した「ブラッスリー・デザール」。2023年のオープン以来、業界人や美食家が訪れる注目のスポットだ。腕をふるうのは、オテル・リッツの星付きレストラン「レスパドン」で腕を磨いた若きシェフ、ヴァランティーヌ・タヴァセ。フランスの伝統料理にひとひねり加えたモダンな味わい。
店内は、アール・ヌーヴォーの装飾を現代的にアレンジした空間で、歴史と現代の空気を巧みに織り交ぜた設計は、建築家ジェシカ・ミルによるもの。パリの文化と芸術の香りをまとったこのブラッスリーは、味覚だけでなく、五感全体で街の洗練を感じられる新しい社交の場として訪れる者を迎えてくれる。
知と芸術が息づく左岸の魅力が凝縮
セーヌ川左岸に広がる6区は、サンジェルマン・デ・プレを中心に文学と芸術の香りが漂う街。ル・ドゥ・マゴやカフェ・ド・フロールなどの老舗カフェには、かつてサルトルやボーヴォワールら知識人やピカソなどの芸術家が集った。リュクサンブール公園や周辺のギャラリーを散策すれば、四季折々の景観と落ち着いた左岸らしい空気を肌で感じられる。石畳の通りに並ぶギャラリーや書店には、歴史と現代の感性が交錯し、知的で洗練されたパリの横顔が広がる。