年代別ワンナイト白書〜case1:アラフィフ既婚者A子さんの場合。「刺激のために他の人と寝ることに罪悪感はない」
Lifestyle 2025.05.09
ワンナイトスタンド=一夜限りの関係って、したことがない者にとっては未知の世界。しかし周りを見渡しても、多くの人はその経験があるのではないだろうか。果たして、皆さんどんな気持ちで、どんな風に関係を持つに至るのか? そんな好奇心からスタートした、世代別のワンナイトラブ体験談シリーズ。第一回目は、アラフィフ女性のワンナイト。夫婦円満、夫のことは愛してるし、レスでもないけれど、婚外セックスをしているという49歳の女性が登場。恋愛コラムニスト・さかいもゆるが綴る、ひと夜限りの彼女の物語。
恋愛コラムニストを名乗る私だけれど、性に対しては保守的、セックスはコミットメントの証しであり、心を許せるパートナーとだけすると決めている。一方で、世の中には体だけの関係を割り切りれるタイプの女性も存在する。一夜限りのワンナイトスタンドを楽しめる人がそれ。そういう女性たちみんながセックスに溺れているか、というと取材の結果、必ずしもそうではないという事実が見えて来た。それぞれのセックスには、それぞれの事情がある。今回ご紹介する、結婚11年目のアラフィフ・A子さんも、聞けば、行為自体が特別に好きなわけではないという。更年期にも差し掛かって来るアラフィフ世代の女性は人によって性欲がある人とない人、二極化すると感じているけれど、彼女は一体、なぜにワンナイトを繰り返すのだろう。
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Case1. A子さん 49歳 結婚11年目
現在49歳のA子さんは、20代後半頃からワンナイトを重ねて来た。相手は飲み会にいた知り合いの知り合いだったり、ナンパだったり、その時々で違う。「したいから、と飲みに行って相手を探したことはないです。飲んでいるうちに楽しくなって、自然にその流れで......という感じ」。
若い頃は1ヶ月に一度程度はあったワンナイト。相手によっては一度だけでなく、何度か会う仲になった男性もいたけれど、学生時代から常にパートナーが途切れたことがないA子さんにとって、ワンナイトは単なる「日常生活のスパイス」なのだそう。
直近のワンナイトは、久々に集まった飲み会で再会した、同級生の男性と。お酒が入っていいムードになって、解散するときにどちらからともなくふたりになってホテルへ。飲み会のときから、「今日は楽しいな〜」、「もうどうなっちゃってもいいか!」と、"今夜は帰らなくてもOK"というサインは彼に対して出していたという。それが彼女の、ワンナイト・キラーテク。彼と関係を持ったのは、前からいいなと思っていたわけでもなく、本当にその瞬間が楽しくて帰りたくなくなったから。
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夫ともレスではないけれど、ワンナイトは別腹。
「夫のことは好きだけどワンナイトは別腹」と、夫に対しての罪悪感はゼロ。「この人、どういうエッチをするのだろう」という好奇心が原動力で、「へー、こんな感じなんだ」と終わる。旦那さんともレスではない。
ワンナイトには、パートナーとの行為とはまた違う気持ち良さがあると、A子さん。
「パートナーが"わかっていて気持ち良くしてくれる"としたら、ワンナイトは"わからないから気持ちいい"」。お酒が入っていることもあり、テンションが上がって快感も増す。責任感がない相手だから楽だという彼女にとって、愛情とセックスの快感は比例しない。「セックスする・しないに、愛があるかないかは関係ない。もし夫とレスになったとしても、特に気にならない」。そう語る彼女はワンナイトをしているからといって「セックスが好き」なわけではなく、話を聞いていると行為に重きを置いていないからこそ、奔放になれるのかなと思った。
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ワンナイトに対する、素朴な疑問
この取材を始める前、ワンナイト未経験の私にはふたつの疑問があった。何だかんだ、女性は身体の構造上、「受け入れる」性である。だから例えば風俗嬢のように"能動的に"多数の相手と身体を重ねたとしても、自分がすり減ったような感覚になるのではないか。
また、ワンナイトのあとにフェイドアウトされたら、「魅力がなかったのかも」と自尊心が傷ついたりしないのだろうか。何故なら私が身体だけの関係を持たない最大の理由はたぶん、このふたつに対する恐れだから。そんな私の問いに、彼女はこう答えてくれた。
「基本的にいつも恋人や夫が居るから、自尊心は傷つかないです。行為のあとも、飲み帰りだから『終わったから、か〜えろ、電車動いてそうだね』と軽快な感じ。相手に幻想を抱いてないし、好きな人というわけじゃないから、終わったあとくっついたりもしたくない。『はい、以上!』で解散。いわゆる"男性っぽい"のかもしれないですね(笑)」
したあとにキュンと、相手に惹かれる場合もあるけれど、そんな時は「いやいや、違う違う」と打ち消せばその気持ちはすぐになくなるのだそう。
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もし夫が同じことをしていたとしたら、どうする?
ところで、私には「最初の性体験がその後のセックス観を決める」という独自の仮説がある。なので取材の際には初体験について聞くことが多いのだが、A子さんの場合、初体験も高校時代に付き合っていた恋人で、当時は「好きな男性としかしない」という主義だったそう。それが今のようになったのは、「合コンで口説かれて試しに一回やってみたら大丈夫だった」から。というわけで、彼女にはこの仮説は成り立たなかった。
「もし仮に旦那さんが浮気していたとしたらどうする?」そんな意地悪な私の質問には、相手がしていても、気づかないようにしてくれるならOKとの答え。「身体の関係よりも、デートの方が嫌。心が入っていそうだから」。性交渉自体に重きを置いていない、彼女らしい考えは筋が通っている気がする。
年齢的に体型などが気になり出すアラフィフだけれど、関係を持つときに体型を気にしたり、勝負下着を身につけたりすることは特にない。それはもしかしたら、「好きではない相手」とだからゆえ、どう思われるかを気にすることなくある意味ありのままでできる、ということなのかも。
最近は性欲が衰えて来たという彼女がこの先、50代、60代になったとき、どんなセックスライフを送るのか興味があるけれど、きっと彼女は年齢に関係なく、いくつになってもセックスの機会があるのだろうなとも思う。なぜなら彼女の中で行為は特別なことではなく、日常の営みに自然にあるものだから。身構えたりしていないから、男性も誘いやすいし、自然とそういう流れになるのだろうな。
とりあえず、もしもワンナイトしてみたいという方が居たら、A子さんのように、一緒に飲んでいる(もしくは食事している)ときからわかりやすく「楽しい!」「帰りたくない!」というアピールをしてみると、いいかもしれない。
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恋愛コラムニスト さかいもゆる
出版社勤務からフリーランスのファッションエディターとして独立。その後、アラフォーでバツイチになった経験から、恋愛や結婚における本当の幸せとは何かを考えるインタビュー読み物やコラムを多数の女性誌で執筆している。
text: Moyuru Sakai