フランスの暦とともに食を楽しむ、おいしいレシピカレンダー。

Gourmet 2025.04.15

SACHIYO HARADA

ガレット・デ・ロワから復活祭、ヴァカンス中の定番レシピまで。フランスに古くから伝わる行事ごとの家庭の味をフランス在住の料理クリエイターSachiyo Haradaさんが再現。1〜12月に開催されるイベントごとのレシピをご紹介。


フランスのほとんどのイベントや祝日は、聖書にまつわるもの。それは、古くから続くヨーロッパの文化や歴史、風習の基になっているものです。キリスト教の行事に食べるお菓子が多いのは、そもそも民衆にキリスト教を普及させるために、教会がお菓子を配って人を集めたという説が。その習慣が今日まで残っているのは、おいしいものを味わう事が大好きなフランス人ならではという気がします。

《1月》1月6日 Épiphanie(エピファニー=公現祭) 
   【ガレット・デ・ロワ】
《2月》2月2日 Chandeleur(シャンドルー[キャンドル]=聖燭祭) 
   【クレープ】

《3月》2025年は3月4日 Mardi gras(マルディ グラ) 
   【揚げ菓子】

《4月》2025年は4月20日(祝日) Pâques(パック 復活祭)
   【チョコレート・卵・子羊肉料理】

《5月》2025年は5月29日(祝日)Ascension アサンシオン (キリストの昇天祭)
   【子羊料理】

《6月》2025年は6月8日(祝日) Pentecôte ポントゥコット(聖霊降臨祭)
   【コロンビエ】

《7月》7月14日(祝日)Fête Nationale フェット・ナショナル=革命記念日
   【ヴァカンスの食事】

《8月》8月15日(祝日) Assomption アソンプシオン (聖母マリアの被昇天祭)
   【ヴァカンスの食事】

《9月》実りの秋、りんご狩りに農園へ 
   【アップルパイ】

《10月》10月31日 Halloween(ハロウイン) 
   【カボチャのお菓子】

《11月》11月1日(祝日) Toussaint(トゥーサン) 万聖節・諸聖人の日 
   【ニフレット】

《12月》12月6日 Saint Nicolas サン・二コラ(聖人二コラの日) 
   【マナラ】

2025年の暦に合わせてイベントとレシピをピックアップ!

フランスといえば、やっぱりガレット・デ・ロワ!
《1月》1月6日 Épiphanie(エピファニー=公現祭) 
【ガレット・デ・ロワ】

東方三博士がベツレヘムを訪れて「神の子」として降誕したキリストを祝福した日で、フランスでは14世紀から「ガレット・デ・ロワ」(パイ生地の中にアーモンドのクリームを入れて焼いた丸型のお菓子) を食べる習慣があり、ノエルの後から1月下旬までパティスリーやブーランジェリーのウインドーに華やかに並びます。フランス南部では、ブリオッシュ生地にフルーツのコンフィをのせたガトー・デ・ロワが 主流です。

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2月2日はクレープの日!
《2月》2月2日 Chandeleur(シャンドルー[キャンドル]=聖燭祭) 【クレープ】

「ノエルのキリストの誕生から40日後、聖母マリアが身体をお清めするために幼子イエスを抱いて聖殿を訪れ、神に捧げた日」とされています。それから人々がキャンドルを持ち、豊作をお祈りして行進する習わしが始まりました。後に「2月2日は、クレープを食べながら幸せと繁栄をお祈りする日」となりましたが、 なぜクレープを食べるのかというと、黄金色の丸いクレープは太陽をあらわすもの。昔の農民たちが寒くて長く辛い冬を乗り越え春の太陽を待ちわびる気持ちから、春の到来を祝うお祭りだったようです。

"リンゴと塩バターのクレープ"のレシピをチェック!

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謝肉祭の最終日は揚げ菓子で!
《3月》2025年は3月4日Mardi gras(マルディ グラ) 【揚げ菓子】

カトリックの行事で、パックPâques(復活祭 :イースター)までの節食が始まる前に催される盛大なカーニバル(謝肉祭)の間に大いに食べて飲んで過ごすお祭りから始まりました。3月4日は、その最終日で、Mardi (マルディ=火曜日) Gras(グラ=肥えた)というだけあって、"揚げ菓子"ドーナツやワッフルなど、こってりとした甘いものを食べる習慣があり、フランスの地方ごとに様々なレシピや名前がたくさんあります。Merveillesメルヴェイユは、ボルドーから南西部辺りのスペシャリテで、フランス人なら誰もが知っていて、子供から大人まで皆が大好きなお菓子。マルディグラの時期、パティスリーや一般の家庭でも作り続けられているトラディショナルなものです。

揚げ菓子"メルヴェイユ"のレシピをチェック!

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フランスのイースター、パックには何を食べる?
《4月》2025年は4月20日祝日 Pâques(パック 復活祭)【チョコレート・卵・子羊肉料理】

十字架に架けられたキリストが死から復活した奇跡をお祝いする行事Pâquesパックを迎えると、長い冬を耐えてきたパリにもやっと春が来た! と嬉しくなります。 この時期、パティスリーやショコラティエのウインドーには、鶏や卵のチョコが盛大に並ぶのですが、なぜパックに卵かというと、ヒナが卵の殻を破って誕生するように、キリストも殻を破って死から復活したという"生命の始まりや復活の象徴"の意味が。この日の朝は大人たちが庭に小さな卵型のチョコレートを隠し、子供たちが大騒ぎしながらそれを探して見つけたチョコレートの数を競い合って遊びます。その後は、卵料理や子羊肉料理を作って家族でのんびりとブランチ。

卵料理として、ミモザと春野菜のサラダのレシピはいかが?

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フランスの春のお祝いは、子羊料理が定番。
《5月》2025年は5月29日祝日Ascension アサンシオン (キリストの昇天祭)【子羊料理】

キリストが復活したPâquesパック復活祭から40日後に天に登っていかれたとされる日が昇天祭。この日は教会で荘厳なミサが執り行われます。そして家族で子羊の料理を囲むというのが伝統です。いつも木曜日なので、金曜日を休みにして4連休にする事が多く、フランス人にとっては、のんびりできるプチ・ヴァカンスで、春の旅行シーズンでもあります。

子羊のナヴァランのレシピをチェック!

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南フランス発祥のお菓子、コロンビエ。
《6月》2025年は6月8日祝日 Pentecôte ポントゥコット(聖霊降臨祭)【コロンビエ】

復活祭から数えて50日目にキリストの弟子たちの上に天から聖霊が降りてきて、教会が誕生した日。クリスチャンにとっては希望の日といわれています。この日に食べる伝統的なお菓子に、Colombierコロンビエというアーモンドやリキュールを入れたケーキがあるのですが、愛、希望、平和の象徴として使われる鳩のモチーフをあしらったものもあります。

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フランス人のヴァカンスレシピといえば?
《7月》7月14日祝日Fête Nationale フェット・ナショナル=革命記念日【ヴァカンスの食事】

この日から本格的なヴァカンスシーズンが始まります。 ヴァカンスの料理といえば、BBQ、ピザ、サラダやパスタなど簡単なものが中心。滞在先のマルシェでは、地元農家の新鮮野菜、漁師が釣ってきた魚、農場の牛乳、チーズ、肉や自家製パテ、ソーセージなど、その土地のものを味わうのが楽しみの一つです。

サーディングリルと完熟トマトのサルサのレシピはこちら。

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完熟トマトで作るサルサは夏の万能ソース。焼いてニンニクを擦りつけたパンにのせると、スペイン風のタパスに。焼いた肉、パスタにも合うので、美味しい時期に是非お試しください!

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《8月》8月15日祝日 Assomption アソンプシオン (聖母マリアの被昇天祭)【ヴァカンスの食事】

聖母マリアが天に召された出来事を記念する日。8月の中旬、この日の前後を合わせて連休とし、村祭りが開かれる地方が多いのですが、ヴァカンス先でそこに遭遇できたら運がいい!伝統的なコスチュームを身に着けたダンスを見たり、ブロカントや屋台を廻るのも楽しい。

さて、ヴァカンス真っ最中のレシピのオススメは、夏の定番料理、野菜のファルシ。

クルジェットのファルシのレシピはこちら。

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フランスでもリンゴ狩りは大人気。
《9月》実りの秋、りんご狩りに農園へ 【アップルパイ】

フランスの学校では、9月の頭から一斉に新学期がスタート。毎年この時期の定番のニュースは、子供達が新しい文房具や通学カバンを揃えたり、久々の学校で『朝起きるのが辛~い!』というもの。大人たちもヴァカンスから戻ってきて、新たな気分で仕事始めです。ヴァカンスが終わり秋に入ると、楽しみなのは親子で週末に出掛ける農園でのりんご狩り。

秋の実りを愉しむ丸ごとアップルパイのレシピはこちら。

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ハロウィンには、かぼちゃのタルトタタンはいかが?
《10月》10月31日Halloween(ハロウイン) 【カボチャのお菓子】

古代アイルランドのケルト人が起源とされるハロウィンは、フランスではあまり定着していませんでしたが、次第に若い世代にはポピュラーなイベントになってきました。元々、秋の収穫を祝い、精霊を慰める行事だったようですが、フランスの各地方にある収穫農園では、採れたカボチャでジャックオーランタンを作るアトリエが開かれたり、カボチャの料理やお菓子を作るなど、美味しい行事を楽しんでいます。

かぼちゃのタルトタタン風のレシピをチェック!

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11月はカスタードクリームのタルトかサブレが並びます!
《11月》11月1日祝日 Toussaint(トゥーサン) 万聖節・諸聖人の日 【ニフレット】

フランスではハロウィンよりも一般的で、全ての聖人をお祝いする日、また"死者の日"として、亡くなった人を想う日でもあります。通常、この祝日の前後の2週間くらいがヴァカンスとなりますが、遠く離れた家族も里帰りして日本のお盆のように菊の花を持ってお墓参りに行く風習があります。トゥ-サンのお菓子として有名なのは、ユネスコ世界遺産にも登録されていて、バラの街として人気のあるパリ近郊のProvinsプロヴァンにNifletteニフレットというカスタードクリームのタルトがあります。 

☆11月20日はボジョレーヌーボー解禁の日。フランス中の酒屋の店先には、試飲のスタンドが登場して、その年のワインの出来具合を吟味します。

《11月》2025年は11月30日から12月24日 Aventアヴァン(降臨祭) 【サブレや焼き菓子】

アヴァンとはキリストの誕生を心待ちにする、ノエル前の4週間の期間です。アヴァンが始まるとウインドウのディスプレイや街頭のイルミネーションが始まり一層華やな雰囲気にワクワク。この時期に家庭で作ったりお店に並ぶアルザス地方発祥のお菓子が沢山あるのですが、有名なのはクグロフ、スパイス入りのパウンドケーキ・パンデピス、ガナッシュ入りのトリュフチョコレート、シュトーレンなど。

ナッツとドライフルーツのノエルのサブレのレシピをチェック!

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12月はやっぱりノエル!
《12月》12月6日 Saint Nicolas サン・二コラ(聖人二コラの日) 【マナラ】

子供の守り神として信奉されている聖人二コラのお祭りで、アルザス地方発祥のマナラという人形の形をしたブリオッシュが有名。 

《12月》12月25日 Noëlノエル 【ノエルのご馳走】

この日は家族が集まって、シャンパーニュを飲みながら豪華な食事をします。用意するのは牡蛎、フォアグラ、キャビア、スモークサーモン、カナぺ、魚介、肉料理や煮込み、グラタンなどのオーブン料理。デザートには、 Bûche de Noël ビユッシュ・ド・ノエルやアイスクリーム、エキゾチックなフルーツを。

ホタテのソテー、レモンバターソースのレシピをチェック!

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白身魚もこのソースに合います。これからのおもてなしに是非!

そして、12月31日 Reveillon レヴェイヨン(大晦日) この日は、友人同士が集まってアペリティフ、ノエルと同じように豪華な食事を楽しみます。賑やかに飲んで食べて踊って騒いだりおしゃべりしながら、0時の年越しを待ちます。 カウントダウンして、新しい年を迎えた瞬間にBonne Année!(良い年を!)と叫んで、Bises ビズ両頬にチュっとする習慣があります。誰もが笑顔、愉快な新年の始まりです!

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo

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